消費者の行動と心理を理解する マーケティングリサーチの基本用語と手法
マーケティングを成功させるための手段として用いられる「マーケティングリサーチ」。この資料では、消費者ニーズや自社に求められていることを把握するために大切な調査の基本とポイントをわかりやすく解説します。
マーケティングリサーチとは、一般消費者や顧客などを対象に行う科学的な調査・分析のことです。この記事では、マーケティングの中での位置付け、市場調査との違い、リサーチを行うメリット、リサーチ手法の種類とリサーチの方法・流れを解説します。
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マーケティングリサーチとは、マーケティングを行う上での課題を解消するためのデータを収集・分析することです。例えば新商品を開発するにあたり「消費者ニーズの高い商品」と「自社のブランドイメージ」のデータがあれば、自社の顧客層にあった新商品の開発が可能となるでしょう。
マーケティングリサーチは、リサーチを通じて消費者の声を企業に届けられるため、企業側だけでなく「ニーズを満たす商品を待っている」消費者にもメリットがあります。
日本マーケティング・リサーチ協会の調査によると、2021年の市場調査業界の市場規模は2,357億円でした。コロナ禍により2020年は減少したものの、2021年は一転して回復、安定した成長を見せています。多くの企業が、マーケティングを成功させる手段としてマーケティングリサーチを活用していることがわかります。
マーケティングリサーチはマーケティングの準備段階に当たります。マーケティングとは「商品やサービスが売れる仕組みを作ること」であると言え、具体的には消費者のニーズ調査やWeb広告など宣伝活動、プロモーションなど販売促進活動、営業、販売など、商品が売れるまでのすべての部分を包括して指します。
マーケティングリサーチとはマーケティング全般の情報収集のことです。単に消費者のニーズ調査にとどまらず「自社商品に合った広告方式は何か」「どのようなプロモーションが効率的か」「販売価格はいくらが妥当か」といった、自社製品を売るために必要な調査・情報収集全般を表します。マーケティングリサーチを行うことにより、正確なマーケティング活動を行えるようになるでしょう。
マーケティングリサーチに似た言葉に市場調査(マーケットリサーチ)があります。この2つの言葉は使い分けられていないこともありますが、市場調査は「市場の現状を理解すること」が目的、マーケティングリサーチでは「これからのニーズ把握」まで目的に含まれている点が異なります。
市場調査は、例えば「現在の自動車市場ではどのような車が売れているか」といった現在の顧客やユーザー、競合他社や業界全体を把握するための調査です。対してマーケティングリサーチは「これから消費者にどのような車が望まれるか」という将来のトレンドやニーズ変化の分析が調査のメインとなります。
「なぜ今あの商品が売れているのか」を分析したい場合は市場調査、「これからどんな商品が求められるか」という潜在ニーズを分析したい場合はマーケティングリサーチと使い分けるようにしましょう。
マーケティングリサーチを行うことで、どのような情報が手に入り、どんな分析ができるのでしょうか。メリットを知り、明確な目的を持ってリサーチをしましょう。
マーケティングリサーチによって、想定していたユーザー層と実際のユーザー層が乖離しているか、あるいは合致しているかがわかります。実は、自社商品・サービスを利用しているユーザー層のセグメントが、企業が想定していた顧客層と必ずしも一致しているとは限りません。
例えば企業側が「20代女性向けに開発・販売している」つもりの商品が、実は30代男性にヒットしていた、ということもあるでしょう。実際のユーザー層を知ることで、よりユーザーに訴求しやすい広告や販促キャンペーンを打てるため、施策の費用対効果も高くなります。
マーケティングリサーチで顧客ニーズを把握すれば、自社の商品やサービスの何が売り上げにつながっているのか、あるいはなぜ思うように売れていないのかもわかります。
例えば、ある印刷会社が「安さ」を売りに名刺印刷の広告展開をしていたところ、マーケティングリサーチで顧客が自社を選んだ決め手を調べると「短納期」だったということもあるのです。
この場合、広告では「安さ」より「短納期」をアピールしたほうが売上や顧客満足度が高まるでしょう。割高であっても納期に力を入れたプランを用意するなどの戦略も考えられます。マーケティングリサーチにより、希望的観測や思い込みではなく「正確なデータ」として顧客ニーズを把握できるので、より自社商品に合ったプロモーションや販売戦略を取れるでしょう。
マーケティングリサーチによって「大金を投じて開発・PRしたけれども、売れ行きは芳しくなかった」という失敗リスクを減らせます。
いくら企業側が「素晴らしい、画期的な商品だ」と思って開発していても、ユーザーのニーズを満たしていない商品は売れません。開発費やプロモーション費などが無駄になってしまいます。
マーケティングリサーチによって「どのような商品が求められているか」が明確になり、ニーズを満たす商品を開発しやすくなります。企業側の「この商品が売れるはずだ」という思い込みを脱し、実際のユーザーニーズに沿った商品・サービスの開発ができるでしょう。
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マーケティングリサーチには様々な種類があります。目的やコスト、調査期間などにより使い分けられますが、大きく「パネル調査」と「アドホック調査」の2種類に分けられます。
パネル調査とは調査対象者を固定して継続的に行う調査、アドホック調査は単発で完結する調査です。
また、アドホック調査には、調査結果をデータ化・数値化できる定量調査と数値化できない定性調査があります。
パネル調査とは調査対象者を固定(パネル化)し、同じ質問を期間内に繰り返し行う調査方法です。時系列で同一の対象の変化を把握でき「売れ筋の調査」「買い替え時期の把握」などに適しています。
調査対象者を毎回選定する必要がなく、1回の調査にかかる手間は少なくなりますが、調査終了までに必要とする時間やコストは、アドホック調査に比べ多くなります。
中でも代表的なパネル調査に「消費者パネル調査」と「小売店パネル調査」があります。
消費者を対象として「どの商品を」「どこで」「いつ」「いくらで」購入したかなどについてを問う調査です。商品の購入頻度やリピート率、商品が購入されやすい店などがわかります。
登録されている消費者の年齢や性別、情報感度などのデータと合わせて分析することで、より深い情報が得られるでしょう。例えば「当社の商品を購入するのは、30代女性のうち環境問題に意識が高い層である」という傾向は、消費者パネル調査によって把握できます。
小売店を対象に「どの商品を」「どの店で」「いつ」「いくらで」販売したかなどについてを問う調査です。店舗における商品の品揃えや全体の市場規模、店頭の品揃えの変化などがわかります。
こちらも店舗属性データと組み合わせて分析することにより、どのような商圏で自社商品や競合他社が売れているのかを把握できます。例えば「山間部のドラッグストアでこの商品の売れ行きが良い」などがわかるでしょう。
アドホック調査とは、調査の設計や実施、報告が1回きりで終わる単発のマーケティングリサーチのことです。1回で調査が終了するため時間やコストはパネル調査に比べて少なく、顧客やユーザーの「意識」が調査できます。
毎回オーダーメイドで質問事項を作成するため融通を利かせやすいのが特徴で、新商品開発時のニーズ調査などに向いているでしょう。
大きく分けて、調査結果を数値化できる「定量調査」と、数値化できない「定性調査」の2つがあり、目的に応じて使い分けられています。
定量調査とは、結果を「数値・数量化できる調査」のことです。例えば、回答者が「1〜5の中から当てはまるもの」や「はい/いいえ」など、決まった選択肢から答えを選ぶアンケートが定量調査に当てはまります。
多くのサンプルを、より広い地域から素早く集められる手法です。また結果が数値で集計できるため、客観的な評価・分析もしやすくなります。市場把握やすでにある仮説の検証などに向いています。
定量調査の具体的な手法を見ていきましょう。
インターネット調査とは、調査対象にWebフォームから回答をしてもらう形式の調査です。商品のパッケージやCMの好感度調査などが挙げられます。
コストが比較的低く短期間で調査ができる点・動画を利用できる点が特徴ですが、回答の信頼性が低い場合がある・インターネットをあまり利用しない層に回答してもらうことが難しいなどの問題もあります。一般的によく使われる形式の調査です。
郵送調査とは、調査票を調査対象の自宅や企業などに郵送し、回答後に返送してもらう形式の調査です。自治体の住民調査や通販会員限定のアンケートなどが挙げられます。
インターネットをあまり利用しない層にも回答してもらいやすいのがメリットです。しかし郵送費や紙の調査結果をデータ化するためのコスト、回収まで時間がかかる割に調査票の回収率が低下傾向にあるなどのデメリットがあります。高齢者を調査対象にしたい、あるいはインターネットをあまり利用しない層も対象に含めたい場合に向いています。
ホームユーステスト(Home Use Test)とは、調査対象者に自社製品や試供品を自宅で使ってもらい、その使い心地や感想を回答してもらう形式の調査です。実生活内での使用感や、しばらく使い続けたときの様子を知ることができるでしょう。日用雑貨やコスメ、ペット用品など日常生活で使う商品に適しています。
訪問調査とは、調査票を持った調査員が調査対象の自宅に赴く形式の調査です。訪問調査にはその場で話を聞いて面接官が回答を持ち帰る面接法と、調査票を後日回収する留置法があります。
調査員が必要になるため比較的コストは掛かりますが、回答のミスチェックがその場で可能であり、回収率も高いというメリットがあります。
また、対象者の行動や実際の使用シーンなどを直接観察して分析することもできます。家事の動線や日常の行動など、調査対象者の自主的な回答からでは得られない多くの気づきを得られる手法です。
会場調査とは、企業の会議室などに調査対象に集まってもらい、そこで試食や試供品の利用を行ってもらう形式の調査です。料理の調理方法や商品の使用量など、条件をリサーチャー側で正確に管理できるため、全員に厳密に同じ条件下での調査を行いたい際に適しています。
情報の秘匿性も高く、発売前の新商品や試作品など外部への情報漏洩を防止したい場合にも向いているでしょう。
定性調査とは、結果を「数値・数量化できない調査」のことです。具体的には「なぜその商品を購入したか」「その商品の使い心地についてどう感じるか」などを深掘りする個別ヒアリングやグループ討論などが定性調査に当てはまります。
定量調査に比べて1人あたりのサンプルを集めるのにコストと時間がかかるため、多くのサンプルを集めることは難しくなります。その反面、定量調査では捉えきれない消費者心理や消費者行動の理由を詳しく知ることができるでしょう。「なぜ自社商品が売れていないのか」など仮説の抽出に向いています。
定性調査の具体的な手法を見ていきましょう。
グループインタビューとは、座談会形式で行われる複数人でのインタビューのことです。決められたテーマや質問に沿って各人が自由に発言するため、消費者自身も気がついていなかった意識や意見が飛び出すこともあります。
より深く消費者心理を分析したい際に有効です。司会者(モデレーター)によって得られる情報量に差が出る可能性がある点、調査数が限られ、必ずしもグループインタビューで得られた顧客・ユーザー像が実際のものと一致するとは限らない点に注意が必要です。
デプスインタビューとは、調査対象者と調査員が1対1で会話をする形式の調査です。他の人がいると話しにくいことや、個人の考えを詳細に聞き取れるため、体の悩みや家計状況などセンシティブなテーマに向いているでしょう。
1人の調査に時間とコストがかかる点、少ない人数の意見を参考にするため結果が偏りやすく、議論の発展も少ない点に注意が必要です。
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マーケティングリサーチは、調査の企画、調査設計、調査票の作成、調査実施と回収、調査と分析という流れで行われます。順番にポイントを押さえておきましょう。
マーケティングリサーチを行う際は、いきなり調査内容を考えるのではなく、まず調査課題を抽出して仮説を立てる調査企画から始めます。具体的で偏った見方のない調査仮説を立て、それに対応した調査内容を企画することでより深い調査ができます。
例えば「新商品の売れ行きが悪い」という課題に対しては「ターゲット層と宣伝方法がマッチしておらず周知されていない」などの仮説が考えられるでしょう。「ターゲット層に訴求するには、どのような手段が有効なのか」を調べればいいのでは、という企画が立てられます。
何を調べるかが決まったら、次に「どのように調べるか」を決めます。調べたい内容を明確にし、「どのような方法で」「どの属性の人に」「どんな質問をするか」を決定しましょう。「今までに自社製品を利用したことのない人にも手に取ってもらえるデザインを知りたい」と考えるならば、自社製品の利用経験のないターゲット層に対して、普段どのようなブランドやファッションを好んでいるのかを調査すると良いかもしれません。
調べる内容によっては定量調査と定性調査、あるいはパネル調査とアドホック調査を組み合わせることもあります。
調査設計ができたら、実際に調査票を作成します。調査票を作成するときの基本は「簡単なものから難しいものへ」「過不足なく質問をする」ことです。最初から難しいことを聞いたり質問数が多かったりすると、回答者に「面倒くさい」「負担が大きい」と思われてしまいます。
結果として離脱率が多くなり、調査の信頼性も低くなる可能性があります。正確なデータを集めるために、必要な質問を厳選しましょう。
調査の準備ができたら、実際に調査を行います。会場調査や訪問調査を行う場合は、調査員や会場の手配、回答者の時間調整などが必要です。
回答者のドタキャンや訪問時の不在など、当日起こりそうなトラブルを想定し、予め準備しておくことも大切です。
郵送調査やホームユーステストなどでは「切手を貼った返信用封筒を同封する」「謝礼は調査票回収後に渡す」といった工夫をすると回収率が高まります。
最後に、集まったデータを元に仮説が正しかったかどうかを検証します。データ分析には単純集計やクロス集計などがあり、明らかにしたいものによって集計方法は変化します。この結果をもとに、マーケティング課題をどう解決するかを決定しましょう。
もし「調査が不十分であった」「仮説が見込み違いであった」と分かったときは、もう1度調査をし直すこともあります。
マーケティングリサーチを成功させるには、最初の「調査企画」段階で、正しく調査課題を設定し、具体的な仮説を立てることが重要です。また、課題に合わせた調査方法にすることも必要です。
インターネット調査はコストを掛けず多くのデータを集められますが、他の調査方法に比べ信頼性が低いというデメリットもあり、インターネット調査だけではデータが不十分というケースも少なくありません。このようなときは、より深くユーザーの声を聞くためにグループインタビューなどの定性調査を組み合わせても良いでしょう。目的と調査方法の特徴に応じた使い分けが肝心です。
消費者の行動と心理を理解する マーケティングリサーチの基本用語と手法
マーケティングを成功させるための手段として用いられる「マーケティングリサーチ」。この資料では、消費者ニーズや自社に求められていることを把握するために大切な調査の基本とポイントをわかりやすく解説します。
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