フォーカスグループインタビュー(FGI)のコツや注意点を解説。望ましい質問例や当日の進め方は?

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Sprocket編集部

イメージ:グループインタビュー(FGI)のコツや注意点を解説。望ましい質問例や当日の進め方は?

グループインタビューは、複数人の対象者を集めて行うインタビュー手法で、効率よくユーザーの生の声を集められます。ここでは、グループインタビューの目的や設計、メリットとデメリット、モデレーターに求められる技量などについてご紹介します。

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グループインタビューとは?

グループインタビューは、1人のモデレーターにつき複数人の対象者を集めて行うインタビューの方式で、マーケティングやデザインにおける定性調査の手法のひとつです。FGI(Focus Group Interview)と呼ばれることもあります。

グループインタビューの目的

グループインタビューで聞いた生の声は、ペルソナやカスタマージャーニーマップ、新しい仮説を作る際など、さまざまな目的に活用できます。自社の商品やサービスについてどう感じているのか、ユーザー自身の言葉で聞けるのは、定量データからは見えない貴重な情報です。

グループインタビューに必要な時間・対象者の人数

グループインタビューは、一般的に1名のモデレーターと複数人の対象者を集めて実施します。モデレーターのほかに、書記が参加する場合もあります。1人のモデレーターが仕切ることを考えると、4名程度から多くても6名程度が現実的でしょう。会議室やオンラインミーティングを利用して、1時間から2時間程度でインタビューを実施します。

グループインタビューのメリット

ここでは、グループインタビューならではのメリットをご紹介します。

一度に複数の対象者の声を聞ける

グループインタビューの大きなメリットは、一度に複数人の声を聞けることです。1人ひとりにインタビューを行うよりも効率的に、多くの声を集められます。

議論の活発化が期待できる

もうひとつの大きなメリットとして、わいわいと議論がはずみ、発言の活発化が期待できます。ほかの参加者の発言に刺激されて意見が出たり、1人では出なかった考えに気付いたりすることがあります。

グループインタビューのデメリット

インタビュー手法には、それぞれ向き不向きがあります。グループインタビューの不得意な面についても知っておきましょう。

深い話は聞けない

複数人で発言しますので、1人が話す時間は限られます。その評価や感想に至った背景や思考など、深い話や本音を聞きたい場合はグループインタビューは向きません。その場合は、デプスインタビューのほうが向いています。

意見が流されやすい

メリットで挙げた「議論の活発化」と裏表ですが、グループインタビューはほかの参加者の意見に影響を受けやすいというデメリットがあります。本来思っていなかったことでも、その場の雰囲気でつい同調してしまったり、先に発言した人と違う意見を言いづらくなったりという具合です。グループインタビューをうまく回すためには、この後触れるようにモデレーターの技量が必要となります。

モデレーターの技量が必要

グループインタビューを回すモデレーターは、1対1のインタビューとは別の技量が必要です。グループインタビューは場の雰囲気や時間の管理が難しく、1つの話題で盛り上がりすぎて時間が足りなくなったり、一部の対象者ばかりが発言してほかの参加者が同調したりといったパターンに陥りがちです。

モデレーターには、自身の誘導的な発言は控えながら、全体の状況を見ながら公平に回していく技術が必要です。

グループインタビューの流れ・進め方

グループインタビューを実施するには、いくつかの準備が必要です。ほかのインタビューと基本的な流れは同じですが、準備を中心にご紹介します。

1:目的の明確化

インタビューを実施する際に必ず押さえておきたいのが「そもそも何のためにインタビューを実施するのか」という目的の明確化です。

特にグループインタビューでは、参加者が盛り上がって議論があさっての方向に向かってしまうことがあります。例えば「他社の商品と比較して自社の商品を選んでもらうため、消費者がどのような魅力を感じているのかを聞き出したい」という目的で商品の魅力や感想を聞くのであれば、質問内容もその目的に沿ったものを用意して、議論が別の方向に進みそうな場合はうまくコントロールする必要があります。

2:調査対象の選定

グループインタビューは、複数人を選定してインタビューを打診します。調査対象者を選定することをリクルーティングと呼びます。対象者のリクルーティングには、ユーザーアンケートに回答してもらった中からスクリーニングして打診する方法や、自社のメルマガやSNSで募集する方法、調査会社に依頼する方法などがあります。

グループインタビューは「その商品についてぜひ話したい」というモチベーションを持った、いわゆる自社のファンの人が集まりやすい特徴があります。これはリクルーティング次第ではありますが、ネガティブな話も聞きたい場合は、グループインタビューが向いていないこともあります。

3:質問内容の設計

インタビューで質問する大まかな質問項目を事前に準備しておきましょう。議論が盛り上がって1つの話題に時間を取られすぎないように、時間配分や順番を決めておきます。対象者自身の言葉で話してもらえるよう、誘導するような質問はNGです。

4:インタビューの実施

準備ができたら、対象者とアポを取ってスケジュールを合わせ、インタビューを実施します。会議室でインタビューを行う場合は感染対策や当日のお菓子などの準備、オンラインミーティングの場合はツールの使い方や当日の連絡先などを共有しておきましょう。

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マーケティングリサーチの基本用語と手法

グループインタビュー実施時のコツ・注意点

グループインタビューを実施するときは、モデレーターがうまく場をコントロールすることが必要です。インタビューを実施するときのコツや注意点をご紹介します。

議論を盛り上げるようサポートする

グループインタビューでモデレーターが心がけるべきことは「いかに議論を盛り上げてもらうか」という点です。質問を準備する際も、いかに活発化できるかという視点で設計しましょう。

自身の質問は誘導しないように端的にとどめつつ、対象者から公平に意見を引き出せるようなサポートが必要です。

参加者の表情を読む

モデレーターは、常に参加者の様子に気を払う必要があります。意見が強い人の意見に引きずられていそう、何か言いかけたけど遠慮していそうなど、細かい表情を読むことで「さっきの話題で少し考えていらっしゃいましたが、どう思われますか?」のように適切に話題を振っていきましょう。

また、本来のテーマとずれていったなと感じたら軌道修正が必要です。とはいえ、人は発言を遮られると不快に感じるものです。盛り上がりを妨げないよう、適切なタイミングで議論を進めます。

モデレーターの属性に注意する

ほかのインタビュー手法も同様ですが、モデレーターがどのような人かという属性によって、発言や態度に影響してしまうことがあります。例えば、メーカーの開発担当者や会社の社長を前にしたら、ネガティブな意見は言いづらくなってしまうでしょう。このような自体を避けるためには、第三者にモデレーターを依頼するか、詳しい素性をあえて伝えないのもひとつの方法です。

グループインタビューと関連する要素

グループインタビューは、複数の参加者の発言を取りまとめる必要があります。必須ではありませんが、グループインタビューと関係が深い要素についてもご紹介します。

文字起こしツール

インタビューを実施したら、発言内容をテキスト化してレポートや分析に活用します。1対1のインタビューの場合、書記がいれば一から文字起こしをする必要がない場合もありますが、グループインタビューの場合はすべて記録しておくのは困難です。

最近では文字起こしができるさまざまなツールがありますので、活用してみましょう。音声のテキスト化はGoogle ドキュメントの音声入力などが有名ですが、話者を自動で区別してくれるツールも存在します。ただし、テキスト化の際にサーバーに音声データをアップロードする場合は、プライバシーの観点からもサービスの利用規約をよく読み、参加者の事前同意を取っておきましょう。

デプスインタビュー

グループインタビューと異なり、1対1で深い話を聞くのが「デプスインタビュー」です。グループインタビューを実施して「この話はもう少し詳しく聞きたかったな」と思ったら、個別にデプスインタビューをお願いするのも有効です。

デプスインタビューはほかの人の目を気にせずに、その人の思考や背景、潜在的に考えていることなどを深く聞けるというメリットがあります。デプスインタビューについては、別の記事で詳しく解説しています。

KJ法

インタビューの結果をまとめる際は、KJ法もよく利用されます。発言の中から重要と思われる部分にマーカーを引き、ピックアップしてふせんにします。それをKJ法の手順に則ってロジカルに整理していくことで、ペルソナやカスタマージャーニーマップを作るもとになります。

マーケティングリサーチと組み合わせることでマーケティング活動に活かせる主要フレームワークをまとめた資料も公開中です。そちらもぜひご参照ください。

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グループインタビューの発言が本音とは限らない

最後に、グループインタビューにまつわる有名な話をご紹介します。

ある食器メーカーがグループインタビューを行い「どんな新商品が欲しいか」という調査を行いました。議論の末「黒くて四角いお皿が、目新しくてデザインが良い」という意見でまとまりました。

モデレーターが参加者にお礼を伝えて「好きなお皿をお持ち帰りください」と言ったところ、全員が従来の「白くて丸いお皿」を手に取りました。モデレーターが驚いて「黒くて四角いお皿ではないのですか?」と質問すると、参加者からは「家にあるのは白いお皿ばかりだから」「四角いお皿は食器棚に収納しづらいから」という意見が出てきたのです。

これは参加者が意図して嘘をついていたわけではなく、黒いお皿が素敵だというのは本音でしょう。しかし実際に手に取ったのは白いお皿でした。そこには、自宅にあるほかの食器や食器棚の都合など、別の本音が隠れていたのです。

このように、グループインタビューで出た意見がそのままユーザーの本音であるとは限りません。1人ひとりの本音を知るためには、デプスインタビューなども活用して心理を深掘りする方法があります。

グループインタビューで複数のユーザーの声を集める

商品やサービスのUXを向上させるには、まずインタビューなどでユーザーの声を集めることから始めるのが鉄則です。グループインタビューは複数のユーザーの声を一度に集められるので効率的で、商品やサービスの評価・感想などを聞くのに向いています。UXについては、別の記事で詳しく解説しています。

しかし、大量の意見を集めたければオンラインアンケートのほうが向いていますし、より深い話を聞きたい場合は別のインタビュー手法が適しています。目的に応じて調査手法を使い分けて、定性的な視点を取り入れていきましょう。

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