【2023年版】KJ法をオンラインで実施するベストな方法は?おすすめのツールやメリット、注意点を解説

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Sprocket編集部

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KJ法とは、大量のデータを分類して整理する発想法のことです。リモートワークでKJ法を行いたい場合は、どうすればいいのでしょうか? Sprocketが社内で実施したワークショップを例に、オンラインでのKJ法のやり方を解説します。

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オンラインでもKJ法をやりたい!

在宅勤務が浸透して、ZoomやGoogle Meetを使ったリモートワークの会議にも慣れてきた人が多いと思います。それでも、すべての業務をオンラインに書き換えられるわけではありません。例えば、ブレインストーミングやKJ法などをワークショップで行いたい場合は、ビデオ会議でどう実施すればいいのでしょうか?

オンラインでのワークショップには「miro(ミロ)」というツールがおすすめです。Sprocket社内で実施したワークショップを例にして、オンラインでKJ法を行う方法をご紹介します。

Sprocket社内でKJ法のワークショップを行った様子

(※2022年7月15日追記)miroがGoogle Meetと連携可能になりました。miroのアカウントがなくても、ゲスト参加ができるようになります。詳しくは以下の記事を参照してください。

KJ法とは

まずはKJ法について簡単におさらいしておきましょう。KJ法とは川喜田二郎氏が自著の『発想法』(1967年)内で提唱したもので、大量の情報をグルーピング・ラベリングし、ロジカルに整理していく発想法です。KJ法は現在も広く使われています。ホワイトボードに大量のふせんを貼り付けている様子を見たことがある人も多いのではないでしょうか。

KJ法とブレインストーミング

KJ法は、よくブレインストーミングとセットで使われます。ブレインストーミングは複数人で自由な発想からアイデアを出し合う手法のことで、質よりも量を重視するという特徴があります。そのため「ブレインストーミングで出した大量のアイデアをKJ法でまとめる」という手法が一般的です。

しかし、KJ法は必ずしもブレインストーミングとセットというわけではありません。KJ法は、ユーザーインタビューの声をまとめたり、アンケートのフリー入力欄を分類してまとめたりなど、定性的なデータを整理するときにも有用です。

Sprocketでもユーザーアンケートを実施しており、ポップアップに対する調査をまとめた資料をご用意しています。よろしければご活用ください。

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オンラインでKJ法におすすめのツール

オンラインでKJ法のワークショップを行うのにおすすめのツールをご紹介します。すぐに試せるおすすめのツールは、次の3つです。

miro

ブラウザーで利用できるホワイトボードツール「miro」

miroは、KJ法をはじめとしたさまざまな共同作業を行えるホワイトボードツールです。優れたUIとデザインで操作性が良く、直感的に使えるので、本来の目的である思考に集中できます。ボードの広さも無制限と思っていいくらい広々と使え、ブラウザーからログインして利用するので、WindowsやMacなどのOSを選びません。

利用するにはアカウント登録が必要で、無料版では3つまでボードを作成できます。無料版でも、参加するメンバー数に制限はありません。まずは無料で試してみて、良さそうであれば有料プランを検討しましょう。

Canva

Canva

Canvaも、無料から利用できるオンラインホワイトボードツールです。パソコンのブラウザーだけでなくスマートフォンやタブレットからもホワイトボードにアクセスでき、数千のテンプレートが用意されています。

Google Jamboard

Google Jamboard

Google Jamboardは、Google Meetのビデオ会議から利用できるホワイトボードツールです。企業向けのGoogle Workspaceの契約があれば利用できます。新しいツールを入れることなく、普段のビデオ会議からすぐに移動して使えることがメリットですが、miroと異なりページの概念があるので、そこまで広く使うことができません。

広さに制限があると、アイデアやグルーピングにも制限がかかってしまいます。手軽に簡易的な整理をするぶんにはいいのですが、本格的にKJ法を実施する場合はmiroのほうがおすすめです。

miroを使ったKJ法のやり方

miroでは、無料版でも200種類以上のテンプレートを利用できます。KJ法を行うには「Brainwriting」のテンプレートを選択しましょう。

「Brainstorming & Ideation」にある「Brainwriting」を選択する

Brainwritingのテンプレートを選択すると、色とりどりのふせんが表示されます。操作方法はシンプルで、次のとおりです。

ふせんをクリックしたときのメニューからテキストの色やふせんの色なども設定できますが、テキストのサイズは自動的に調整されるので、参加者が行う操作は「クリックしてテキストを入力する」だけです。テキストのサイズが小さくて見づらいときは、適宜改行を入れると見やすくなります。

マウスかトラックパッドかで拡大縮小などの操作が若干異なります。設定メニューの環境設定から、使いやすいほうを選択してください。

ふせんをクリックして文字を入力する

主催者は、事前に何枚かのふせんを例として用意しておきましょう。参加者ごとに色を分けておくのもひとつの方法です。後からふせんの意味がわからなくなったときに「赤は○○さんが書いたふせん」ということがわかれば、その場ですぐに「これってどういう意味?」と質問できるからです。

ふせんはコピー&ペーストか、Alt(option)キーを押しながらドラッグで複製できます。後述する「グルーピングする」フェーズでは、参加者にどんどんふせんをコピーしてもらいましょう。

オンラインでKJ法を実施するメリット・デメリット

数分触ってみれば、miroの見やすさと使いやすさがわかるはずです。オンラインのKJ法には「ホワイトボードの広さに制限がない」というメリットがあります。実際の会議室のホワイトボードだと貼れるふせんの数に限界がありますが、miroであれば、広さを気にせずいくらでもアイデアを追加できます。

簡単にコピーできるのもオンラインならではのメリットです。紙のふせんだと、2か所以上のグループに使う場合は同じ内容を書き写す必要がありますが、miroのふせんであればいくらでもコピーをして、さまざまな切り口でグルーピングできます。オンラインのほうが自由な発想ができるともいえるでしょう。

ただし、デメリットもあります。ノートパソコンの小さい画面だけでは、全体を把握しようとズームアウトすると文字が読みづらくなるため、大きなディスプレイが必要になるでしょう。少なくとも外部ディスプレイを利用して、ビデオ会議の画面とmiroで作業する画面は分けるのがおすすめです。また初めて参加する人がいる場合は、アカウントを作成してボードに入れるかどうかを事前に確認してもらいましょう。

(※2022年7月15日追記)miroがGoogle Meetと連携可能になり、miroのアカウントがなくてもGoogle Meetの画面から直接ゲスト参加ができるようになりました。

KJ法のメリット

ここからは、KJ法自体のメリットや注意点を解説します。「普通にビデオ会議で話し合うのじゃダメなの?」と思われるかもしれませんが、KJ法にはさまざまなメリットがあります。それぞれ簡単に紹介します。

定性データを図解化・可視化できる

KJ法では、アイデアやユーザーの声など定性的なデータを図解化・可視化できます。数字で測れる定量データは仮説を検証する際に役立ちますが、定性データは新たな仮説を発見したり、発想したりするときに有効です。デジタルマーケティングの領域では大量の定量データがあるのでそちらに目が行きがちですが、定性データも重要な要素です。

課題や価値を洗い出せる

すべての情報をテーブルに乗せてから分類・ラベリングしていくので、抜けや漏れを防ぐことができます。また、頭の中で考えていたことを言語化する機会になり、課題や価値を洗い出す場となります。

ロジカルな整理・発想を行える

大量の情報を1人で整理すると、思い込みや勘違いなどのバイアスがかかりがちです。KJ法は一定のルールに則ってラベリングをしてロジカルに関係性を整理していくので、個人のバイアスを減らして新しい発想につなげられます。

メンバーで共有できる

KJ法は複数人で行うので、後からわざわざ共有しなくてもメンバーで情報を共有できます。また、他人がまとめたものを見せられるよりも、自分で頭と手を使ってまとめたほうが深く理解できるでしょう。

ほかの人の意見や視点を直接見られるのもメリットです。自分が発想できなかったことや持っていなかった視点を見ると刺激になり、集合知を活用できます。「あの人やるな!」と感じることで、チーム感もアップします。

楽しい

最後のメリットは、シンプルに楽しいことです。参加者が多いビデオ会議では発言する人と聞く人に分かれてしまいがちですが、KJ法は全員が手を動かして意見を出し合います。わいわいと行うことで、コミュニケーションが活性化するという側面もあります。

KJ法の注意点

ただしKJ法にはいくつか注意点もあります。すべてを完ぺきにこなす必要はありませんが、実施前にポイントを押さえておきましょう。

一定の慣れとスキルが必要

KJ法に限らず、ワークショップは一定の慣れとスキルが必要です。初心者がKJ法を行うと、似たもの同士でグルーピングをして、ただのカテゴライズにしかならないことがよくあります。さまざまなグルーピングとかけ合わせて新しい発見につなげるには、スキルと経験が必要です。

慣れている人がファシリテーターをすれば、初めて参加する人でもスムーズに進められます。これは数をこなしてスキルを高めるしかありません。初めて主催する場合でも、気後れせずに経験を積むつもりでチャレンジしましょう。

発言しやすい場作りが大事

KJ法もブレインストーミングも、自由に発言できる場作りが大切です。「発言したら批判される」と感じて参加者が萎縮しない雰囲気作りを心がけましょう。リアルで実施するときは、お菓子を用意してつまみながら行うのも有効です。

定性的な視点で取り組む

ユーザーインタビューやアンケートは、定性的なデータです。デジタルマーケティングではアクセス解析やデモグラフィック情報などの定量データが豊富にありますが、事前の定量的な分析に引っぱられすぎないように注意しましょう。

必ず図解や文章に落とし込む

意外とありがちなのが、ふせんを整理したホワイトボードの写真を撮って終了というパターンです。KJ法で分類したものは、必ず図解や文章まで落とし込みましょう。ふせんを並べるのはあくまでステップのひとつですので、レポートにまとめる作業が必要です。ここは一定のスキルが必要で、センスが問われる部分でもあります。

KJ法などのフレームワークは、組み合わせて使うことで最大限の効果を発揮します。主要な18種のマーケティングフレームワークをまとめた資料も公開中です。そちらもぜひご参照ください。

マーケティングの主要フレームワーク18選

KJ法の手順

KJ法に取り組む際は、いくつかのステップがあります。いずれも重要なステップですので、時間配分に迷ったら、それぞれ同じくらいの時間を割り振っておきましょう。

ステップ1:書き出す

KJ法は大量のデータをラベリングしてまとめる手法ですので、対象となるデータが必要です。一般的には、ブレインストーミングで出したアイデアやユーザーの声などが対象になります。

ステップ2:小グループにまとめる

書き出したふせんにひととおり目をとおし、近いもの同士でグルーピングします。無理にすべてのふせんをグルーピングする必要はありません。1つの切り口だけではなく、いろいろな切り口でグルーピングします。

ステップ3:名札を付ける

分類したグループにあるふせんをよく見て、グループの内容を簡潔に表す名札(見出し)を付けます。例えば「安い」「手ごろ」「お得」などのユーザーの声は「価格が安い」のラベルでまとめられる、といった具合です。

ステップ4:中グループにまとめる

ステップ3で付けた名札を見ながら、お互いに近いグループ同士を中グループにまとめます。グループ同士の整理を続けて、最終的に10個くらいのグループまでまとめられたら、グループ化は終了です。

ステップ5:空間配置をする

グループ同士を近くに寄せたり順番に並べたりなど、論理的な関係性ができるように、グループの位置を並べ替えます。これを「空間配置」と呼びます。グループ同士をつなげて、一連のストーリーとして話せるように配置するのがポイントです。これはスキルが求められるステップです。

ステップ6:関係性を図解化する

配置したグループで、同じカテゴリーに属するものを線で囲ったり、順番や因果関係があるものは矢印でつなげたりしていきます。因果関係だけでなく、グループ同士が反対・対立する関係である場合もあります。

ステップ7:レポートにまとめる

整理した関係性を、レポートにまとめます。文章化するときは、できるだけグループのラベルにある言葉を使いましょう。まとめたレポートは参加していないメンバーにも伝わるよう、新たに発見した視点や重要なポイントを簡潔に書き出します。

レポート化までをワークショップ内で行えれば理想的ですが、時間の制限がある場合は、得意な人が後日まとめる手もあります。そこは臨機応変に対応してください。

まとめ

リモートワークでKJ法などのワークショップを行うなら、専用のツールを使いましょう。快適にワークショップを行うには、参加者の大きなディスプレイやネットワークなどの環境が必要ですが、それさえクリアできればオンラインならではのメリットを享受できます。

miroは豊富なテンプレートが用意されているので、KJ法だけでなく、ペルソナやカスタマージャーニーマップなどを作る際にも役立ちます。一人で考えを整理したいときも、マインドマップの機能が充実していて便利です。

Sprocketのワークショップは、IAである足立がファシリテーターを務めました。働き方が変わってきている中、オンラインでこうしたワークショップを行うスキルも今後より重要となっていくでしょう。デジタルマーケティングは定量的なデータが主となりがちですが、こうしたワークショップから得られる定性的なデータも軽視できません。オンラインという環境下でも定性的な視点を持ち続けるための取り組みのひとつとして、この記事が参考になれば幸いです。

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