カスタマージャーニーマップに必要な5つの要素とは?やりがちなミスと正しい作り方

マーケティング

西 倫英 (監修 上野 裕樹

イメージ:カスタマージャーニーマップに必要な5つの要素とは?やりがちなミスと正しい作り方

カスタマージャーニーマップは顧客が目的を達成するまでのプロセスを視覚化したものです。しかし作り方を間違えると、企業視点で都合のいい、役に立たないマップになりかねません。カスタマージャーニーマップに必要な要素や注意点、正しい作り方を解説します。

カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップは直訳すると「顧客の旅」となり、「あるユーザーが目的の達成するために通るプロセスを視覚化したマップ」のことです。カスタマージャーニーマップはマーケティング領域でもよく利用されていますが、本来はUX改善のための手法のひとつです。UXについては、別の記事を参照してください。

ニールセン・ノーマン・グループによる定義

ユーザビリティー研究の第一人者であるニールセン・ノーマン・グループでは、カスタマージャーニーマップを次のように定義しています。ニールセン・ノーマン・グループの記事内では、エクスペリエンスマップやユーザーストーリーマップについても触れられています。

ジャーニーマップは、目標を達成するために人が通過するプロセスを視覚化したもの(原文: A journey map is a visualization of the process that a person goes through in order to accomplish a goal.)

引用:「Journey Mapping 101」ニールセン・ノーマン・グループ

マッピングエクスペリエンス』(オライリー)によると、カスタマージャーニーマップのもととなるコンセプトは、元スカンジナビア航空のCEOであるヤン・カールソン氏が提唱した「Moments of Truth」にあると書かれています。

エクスペリエンスマップについては、本記事を監修した上野が社内勉強会を行った際の記録も参照してください。

カスタマージャーニーマップの例

カスタマージャーニーマップは、一般的に1枚の絵でまとめられます。ニールセン・ノーマン・グループの記事内では、マップの例として以下の図が挙げられています。

出典:「Journey Mapping 101」ニールセン・ノーマン・グループ

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カスタマージャーニーマップのメリット

マーケティング活動において、カスタマージャーニーマップはどのように役立つのでしょうか。カスタマージャーニーマップのメリットを4つ見ていきましょう。

顧客行動を可視化できる

顧客の行動をマッピングすることで「どのタッチポイントで自社の商品やサービスと接触して、そのときにどのような考えを持って行動しているのか」を可視化できるようになります。長々と文字で書かれた文章よりも、マップで視覚化された情報はわかりやすく、他人と共有するときにも役立ちます。

顧客視点を持てる

カスタマージャーニーマップのような手法を一切使わないと、自社製品と競合製品しか気にせずに施策を進めていくことになり、顧客の本当のニーズを取り違えてしまうことにもなりかねません。「顧客視点」「ユーザー視点」とよく言われますが、それを取り入れるための手段がカスタマージャーニーマップです。

社内で共通認識を持てる

自分だけではなく、カスタマージャーニーマップを作ればチーム内や社内で同じ認識を共有できます。施策を進めるには、チームの協力が欠かせません。見やすいマップに整理することで、関係者の認識を合わせてさまざまな施策を検討できるようになります。

施策を立てる根拠になる

カスタマージャーニーマップを用意すると、各種施策の「誰のために、何のためにやるのか」という目的や位置づけがはっきりします。広告やWebサイト、実店舗の接客など、それぞれ別の部署が施策を行う場合にも一定の軸のもとで実施できるようになり、本質的な見落としがなくなります。

カスタマージャーニーマップに必要な5つの要素

ニールセン・ノーマン・グループの記事では、カスタマージャーニーマップに最低でも「5つの要素」を入れることを提唱しています。それぞれの要素について解説します。

人物

「誰が」そのカスタマージャーニーマップの主役かということです。一般的にはペルソナが使われます。ペルソナについては、別の記事で詳しく解説しています。カスタマージャーニーマップを作るなら、最初にペルソナから作るといいでしょう。

シナリオ

「顧客が目的のために取る行動」のシナリオです。決して「企業がしてほしい行動」ではありません。ここは非常に間違えやすいポイントで、マーケティング担当者がカスタマージャーニーマップを作ると「広告を見て商品を知って、Webで検索して、購入する」のようなシナリオを作ってしまいがちです。「顧客が目的を達成する」ためのシナリオであることを押さえておきましょう。

「こう行動してほしい」というシナリオは「ペルソナシナリオ」で作成することがあります。ここで詳しくは触れませんが、混同している人は認識を正しておいてください。

フェーズ

シナリオを細かくプロセスに分割したものです。一般的にはフェーズを列で分割して横に並べていきます。

動作と手順、思考、感情

それぞれのフェーズで、具体的にどのようなアクションを取るのか、何を考えて、どう感じるかという要素です。感情を省略したカスタマージャーニーマップを作るケースも見られますが、カスタマージャーニーマップは顧客理解のために作るものですので「どう感じたか」は重要な要素です。

洞察

上記のシナリオ、フェーズ、動作や思考をもとに検討して、自社から見たときのビジネス機会や課題点など、マップから得られた洞察を書き込みます。これが具体的な施策のもととなります。

カスタマージャーニーマップのよくある誤解

カスタマージャーニーマップは広く使われている手法で、見た目だけなら簡単に真似できることもあり、多くの企業で利用されています。カスタマージャーニーマップでよくある誤解を解説します。

誤解1:検討から購入までのマップである

非常に多いのが「購入」で終わっているカスタマージャーニーマップです。購入して終わりなのは企業側の視点で、顧客を起点にマップを作るのであれば、必ずその続きがあるはずです。例えば「おなかがすいたので、目に入ったコンビニでサンドイッチを買う」という行動は、購入した後に必ず「食べる」というフェーズ・体験があります。なぜなら「おなかがすいた」という目的を解決するためのシナリオだからです。カスタマージャーニーマップには、購入行動だけではなく必ずユーザーの目的が達成されるまでの体験も含めるようにしましょう。

ありがちなのは、AISAS(アイサス)などの購買プロセスを横に並べて、カスタマージャーニーマップのような表を作るパターンで、その作り方をすると企業視点のシナリオにしかなりえません。「顧客が目的を達成するためのシナリオ」であることを間違えないようにしてください。

誤解2:カスタマージャーニーマップはマスターを1つ作ればよい

カスタマージャーニーマップは、基本は顧客1人、もしくはペルソナ1人ごとに1つずつ必要です。複数のペルソナがいるのに、カスタマージャーニーマップが1つでは、ペルソナを複数作った意味がありません。ペルソナとカスタマージャーニーマップは1対1が基本と考えましょう。

誤解3:BtoC向けでBtoBには向かない

BtoBでは「バイヤーズジャーニー」や「意志決定プロセス」といった稟議のプロセスを視覚化したマップが使われることがあります。これらはカスタマージャーニーマップとは目的が異なるもので、どちらかを選んだり、比較するものではありません。BtoCかBtoBかにかかわらず、カスタマージャーニーマップは有効です。

誤解4:顧客の平均的な行動のマップである

ペルソナと同様、カスタマージャーニーマップは平均値を取るものではありません。マーケティング担当者がやってしまいがちなのは、アクセス解析などの数値データをもとにして平均化したマップを作ってしまうことです。ペルソナの記事でも触れていますが、あくまで個人の考えや行動をマッピングしたものであることに注意してください。

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カスタマージャーニーマップの作り方

カスタマージャーニーマップは、具体的にどのように作っていけばいいのでしょうか。4つのステップに分けて解説します。

ステップ1:定性調査を行ってペルソナを用意する

カスタマージャーニーマップを作るなら、先にペルソナを用意します。ペルソナを作るには、インタービューやフィールド調査、エスノグラフィなどの定性調査行います。これが第一歩です。

ステップ2:顧客の体験を書き出す

ペルソナを準備したら、顧客の行動や体験を複数人で書き出します。商品やサービスの利用前・利用中・利用後とざっくりと時系列を分けて、それぞれどんな体験があるかを出し合っていきましょう。この作業は1人でやるのではなく、ふせんを使ってみんなでわいわいと行うのがおすすめです。出し合った体験を、時系列で並べてフェーズに分解していきます。

ステップ3:行動や思考、感情曲線を考える

書き出した体験をもとに、フェーズごとの顧客の思考や感情を考え、これも書き出していきます。例えば「高いな、ほかにないかな」など、顧客の声のような形で考えるのがおすすめです。

思考がある程度そろったら、その下に「感情曲線」を描きます。感情曲線とは、気持ちが高まっているか落ちているかを線で表したものです。感情曲線が高いフェーズでは何をすればいいか、逆に低いフェーズではどのようなアプローチがあるか、などを考えるときに役立ちます。

ステップ4:自社サービスの課題を検討する

顧客のカスタマージャーニーマップをまとめられたら、それを見ながら自社にどのような課題があるか、どういうアクションが考えられるかを検討します。これも複数人でにぎやかに実施できると理想的です。考え抜いた施策でなくても構いませんので、感じたこと、気付いたことをメモしてマップに配置していきます。

これで、対象としたペルソナに対するカスタマージャーニーマップは完成です。ペルソナが複数人いる場合は、同じ手順で別のカスタマージャーニーマップを作りましょう。

カスタマージャーニーマップの注意点

カスタマージャーニーマップは作るのに一定の手間がかかりますが、方法を間違えるとまったく役に立たないマップとなってしまいます。カスタマージャーニーマップを作る上での注意点をご紹介します。

根拠のあるデータが必要

ペルソナと同様、カスタマージャーニーマップを作る際には根拠となる実際の顧客のデータが必要です。十分な調査をせずにマーケティング担当者がカスタマージャーニーマップに取り組むと、「こう考えて自社の商品を買ってほしい」という妄想のマップを作ってしまいがちです。

これはペルソナを作る際にしっかりと定性調査を行うことで防止できます。ペルソナとカスタマージャーニーマップはセットで取り組むケースが多いので、根拠となるデータは必ず用意しましょう。

必ず複数人で作成する

これもペルソナと共通ですが、必ず複数人で話し合いながら作成するようにしましょう。1人で作ると思い込みが入ったり、バイアスがかかったりしやすくなり、カスタマージャーニーマップの信頼性が損なわれます。ペルソナとカスタマージャーニーマップでそれぞれ時間を確保して、会議室やmiroなどのホワイトボードツールを使って作成しましょう。

あくまで目的ではなく手段

カスタマージャーニーマップは、ある顧客の行動や思考を知るための手段にすぎません。施策のヒントとして使うぶんには大いに役立ちますが、別の顧客は当然別の行動や思考があるはずです。カスタマージャーニーマップを作って満足してしまうことがないよう、作成したマップを施策に生かすところまで考えましょう。そのためには、社内で共有して浸透させる努力も必要です。

まとめ

カスタマージャーニーマップは、顧客が目的を達成するためのプロセスを視覚化したもので、施策のヒントとなったり、社内で認識を共有したりするのに役立ちます。事前に根拠のあるデータを準備しないと企業視点での「都合の良い」マップを作ってしまいがちなので、注意してください。

UXやペルソナなど関連する記事もありますので、ぜひそちらもご覧ください。

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