「都合のいいペルソナ」を作っていませんか?ペルソナの正しい意味や作り方を理解する

マーケティング

Sprocket編集部 (監修 上野 裕樹

イメージ:ペルソナはマーケティングでユーザー視点を取り入れるために広く使われていますが、多くの誤解がある言葉でもあります。ペルソナの正しい意味やよくある誤解、作る際の注意点などを解説します。

ペルソナとペルソナシナリオはマーケティングでユーザー視点を取り入れるために広く使われていますが、多くの誤解がある言葉でもあります。ペルソナの正しい意味やよくある誤解、作る際の注意点などを解説します。

マーケティングのペルソナとは

ペルソナとは「人格を肉付けしたユーザー像」のことで、もともとはスイスの心理学者ユングが提唱した心理学用語です。UIの文脈で使われだしたのは、アラン・クーパー氏が提唱したことが始まりといわれています。「Visual Basicの父」とも呼ばれるプログラマーの同氏は、名著『コンピューターは難しすぎて使えない!』(翔泳社)の著者でもあります。

ペルソナはデザイン領域から提唱され、マーケティング領域に広がっていきました。マーケティング領域で知名度が上がったのは『ペルソナ戦略―マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする』(ダイヤモンド社)といわれています。ここではマーケティングにおけるペルソナについて解説します。

「ペルソナ」と「ペルソナシナリオ」の2つを作成する

「ペルソナ」といわれると、以下のような図を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。ペルソナは作成した仮想のユーザー像の情報をまとめたものですが、それに加えてもう1つ「ペルソナシナリオ」という文書も作成する必要があります。

ペルソナのイメージ

ペルソナシナリオとは「そのユーザーが製品・サービスを利用する際の行動や背景」を物語風に記述したものです。ペルソナとペルソナシナリオを合わせることで「どのようなユーザー要求や行動があるのか」「それらに対してどのようなアプローチが有効なのか」を考える材料になります。

ペルソナシナリオは見落とされがちですが、ペルソナを作るだけでは不十分です。「ペルソナとペルソナシナリオの両方が必要」ということに注意してください。ペルソナとペルソナシナリオについては『ペルソナ作って、それからどうするの?』(SBクリエイティブ)という書籍でも詳しく触れられています。

ペルソナシナリオのイメージ

ターゲットとの違い

ペルソナとよく混同される言葉に「ターゲット」があります。ターゲットは広告を出稿するときなどに使われる考え方で、「30代女性」などの範囲でユーザーを平均化・抽象化して捉えます。それに対してペルソナは1人の人物像であることが最大の違いです。ペルソナには「普段どんなことを考えていて、どんな行動を取るのか」というストーリー(ペルソナシナリオ)があります。ここでは「ペルソナはユーザーを平均化したものではない」ということに注意してください。

ペルソナとターゲットはどちらが優れているというものではなく、使う目的が異なります。

ペルソナを使う理由

ペルソナは、企業がユーザーの視点を理解するのに役立ちます。「誰のために、何を作るのか」をチームで共有して、別の記事で解説している「カスタマージャーニーマップ」と併用することで、実際の企画や施策にも反映しやすくなります。

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ペルソナをマーケティングで利用するメリット

マーケティング活動においてペルソナはどのようなメリットがあるのでしょうか。3つご紹介します。

ユーザー視点を取り入れられる

マーケティング担当者は、普段からアクセス解析や広告成果などの数字を見ていることでしょう。ペルソナを作ることで、ユーザーを数字ではなく人間として認識できるようになります。特に「何が好まれるのか、何が嫌われるのか」といった心情は数値データから読み解くことが難しく、そのような場合にペルソナはユーザー視点を取り入れる有効な手段となります。

社内で共通認識を持てる

自分一人だけではなく、チーム内や社内で共通認識を持つことができます。仮に誰かが鋭いユーザー視点を持っていたとしても、人によってその認識が違っていては施策もうまくいきません。ペルソナという誰が見てもわかりやすいユーザー像を作ることで、社内の理解も得やすくなります。

さまざまな施策に活用できる

マーケティングでは、ペルソナをもとにしてカスタマージャーニーマップを作成するのが一般的ですが、ペルソナはさまざまな施策に活用できます。例えば新商品を企画するとき、広告のクリエイティブを考えるときにも、社内で共有しているペルソナがあればユーザー視点からのヒントを得られます。

ペルソナの種類

ペルソナは厳密にいえばもっと細かく分ける場合もありますが、ここでは2種類に分けてご紹介します。

ペルソナ

一般的な「ペルソナ」です。詳しくは後述しますが、インタビューやフィールド調査などの定性調査をもとにして作成します。ここでの注意点は、いわゆる「妄想」で勝手に作らないことです。必ず実際のユーザーの定性調査から始めることを心がけましょう。

妄想で作ったペルソナは役に立たないだけでなく、そのペルソナを作ったことでかえってミスリードになるリスクがあります。都合の良いユーザー像から都合の良いカスタマージャーニーマップを作り、それに対する施策を実施することに意味はありません。定性調査から始められないのであれば、ペルソナを作らないほうが良いケースもあります。

プラグマティックペルソナ

「プラグラマティック」とは「実用的」という意味です。リーンUXやアジャイル開発などの場で「とりあえずペルソナを立てる」という目的で、チームの想定で素早くユーザー像を作成します。これを「ペルソナ」だと考えている人も多いかもしれません。

プラグラマティックペルソナはあくまでスピードを優先した「とりあえず」のものですので、その後にインタビューなどを経て正しいペルソナに近づけていく必要があります。想像だけで作ったペルソナにはリスクもありますので、その点は注意が必要です。

ペルソナでよくある誤解

ペルソナは便利なので、多くの企業が利用しています。しかしそれと比例して多くの誤解もあります。ペルソナのよくある誤解を見ていきましょう。

誤解1:ペルソナはもう古い・役に立たない

最近見かけるのが「ペルソナは古い」「ペルソナは使えない」という意見です。確かに「ペルソナで人物像を作ると、それが固定化されてしまう」というリスクは考えられます。しかしユーザーのコンテキスト(文脈)をチーム内で共有するのは現実的に難しく、象徴としてのペルソナは「チーム内で共有する」という点において優れています。

また「趣味はキャンプで、週末は川のほとりを愛犬と散歩して……」のような架空の情報が何の役に立つのか、という意見もあるでしょう。これには一理あって、これらの情報はペルソナを作る上で必須ではありません。ペルソナで最も重要なのは「そのユーザーが普段どんなことを考えていて、どんな行動を取るのか」ということです。

この後でも触れますが、平均化したペルソナを1人だけ作ってしまうとうまく運用できない事態に陥りがちです。「ペルソナ手法が役に立たない」のではなく、「運用を間違えるとうまく機能しない」と考えるべきでしょう。

誤解2:ペルソナは平均ユーザーのこと

マーケティング担当者がペルソナを作ると、想像上の平均ユーザーでペルソナを作ってしまいがちです。冒頭でも触れたとおり、ペルソナは平均ユーザーではなく人格を持った1人の個人です。ペルソナはインタビューやフィールド調査などの定性調査をもとに作成します。アクセス解析のデモグラフィック情報などの定量調査で平均値を取ると、誤ったペルソナを作ることになりかねないので注意が必要です。

誤解3:ペルソナは1人作ればよい

「ペルソナは何人作ればいいか?」はよく出る質問です。状況によって変わるので明確な答えはありませんが、少なくともよほどニッチなサービスでなければ1人では少ないといえるでしょう。あたりまえですが、商品やサービスを利用するユーザーは何人もいて、文脈によって何パターンものユーザー像があるはずです。

「ユーザーを平均化する」という誤った作り方をすると、ペルソナが1人となってしまいがちです。

誤解4:一度作ったらそれで終わり

ペルソナを作ったら、チーム内で共有して浸透させるためにも一定の期間はそのペルソナを使う必要があります。しかしペルソナは一度作ったら終わりではなく、ビジネスのスピードに合わせてアップデートしていく必要があります。適切な期間は業種により異なりますが、例えばアプリやゲームなど変化が速い業種の場合、半年や1年ごとにペルソナをアップデートしたほうがいいケースもあります。

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ペルソナの作り方

それでは、ペルソナは実際にどのように作っていけばいいのでしょうか。そこまで複雑なことはなく「根拠となるデータを用意すること」と「複数人でまとめること」の2ステップです。それぞれ解説します。

ステップ1:根拠となるデータを用意する

意外に抜け落ちてしまうのが、根拠となるデータの準備です。ペルソナはさまざまな人が自分なりの作り方を発信していますが、「インタビューやフィールド調査などの定性調査にもとづく」ことが基本です。なぜなら、ペルソナは妄想のユーザーではなく実際のユーザーにもとづいた人格だからです。何もない白紙の状態から勝手に作っていくものではない、ということは押さえておいてください。

インタビューやアンケートで、直接ユーザーに聞く方法も有効です。UXやUXデザインについて詳しくは、別の記事で解説しています。

ステップ2:複数人でまとめる

根拠となるデータを準備したら、複数人でまとめていきます。一人でペルソナを作るのは、思い込みや偏りが入りやすくなるのでおすすめしません。チームで作ったほうが、その後ペルソナを共有する際にも納得感を持ってスムーズに進められます。

ふせんなどを利用して意見を出し合い、最後に1枚にまとめるという順番がいいでしょう。1枚にまとめられない場合は、ふせんを分けて2人のペルソナにする手もあります。

一般的にペルソナに必要なのは、次の要素です。「顔写真はイメージが付きすぎてしまうから入れないほうがいい」とする意見もありますが、それはどちらでも構いません。目的は「そのユーザーが普段どんなことを考えていて、どんな行動を取るのか」を知ることですので、その目的を満たす内容を書き出しましょう。

ペルソナの注意点

ペルソナは、誤った認識で作るとミスリードの原因となるリスクがあります。これまで解説してきたことのくり返しですが、ペルソナの注意点は次のとおりです。

誤ったユーザー像を共有してしまうこともある

ペルソナは「絶対正しい」という性質のものではありません。実在するユーザーの定性調査をもとにすれば大きく間違うことはありませんが、妄想で都合のいいペルソナを作ると、実際のユーザーと乖離が大きくなってしまうリスクがあります。

ペルソナはあくまで「ユーザー視点を取り入れる」「社内で共通認識を持つ」ための手段であり、ヒントのひとつでしかありません。作ったペルソナが実態に即していなければ、適宜アップデートも必要です。

スピードを優先して作ったプラグラマティックペルソナは、その後も見直さずにずっと利用する目的のものではないということを認識しておきましょう。

必ず複数人で作成する

ペルソナは、1人で徹夜して作るという類のものではありません。1人で作ると個人的なバイアスがかかりますし、最終的にはチーム内や社内でユーザー視点を共有するのが目的ですので、必ず複数人で作成するようにします。誰かが1人で作ったペルソナを「今日からこれを守ってください」と突然言われてもうまく機能せず、本来の目的も果たせないでしょう。

作成したら必ず社内で共有する

ペルソナを作成して終わり、というのもよくある失敗例です。会議で一度共有した程度では、ペルソナを浸透させることは難しいでしょう。オフィスであれば目につくところに大きく貼り出したり、オンラインでも定例会議の際に目に入る場所にペルソナを貼っておいたりと、ペルソナを社内で浸透させるための工夫が必要です。ペルソナに名前を付けている場合は「○○さんだと、そう感じるかな?」のように、自然とペルソナの名前が会話に出るようになれば、浸透したといえるでしょう。

まとめ

ペルソナは、ユーザーを数字ではなく人間として認識して、さまざまなマーケティング施策に生かしていくためのものです。そのためには、妄想で勝手に作るのではなく、実際のユーザーの定性調査をもとにして作る必要があります。

ペルソナは誤解も多い手法ですが、正しく理解して使えば有用です。自社のユーザーを理解するためにも積極的に活用して、その後の浸透やアップデートも忘れないようにしましょう。

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