「費用対効果」という言葉そのものは一般的ですが、その算出方法や施策ごとの最適な水準の見極め方を知らないという方も意外と多いのではないでしょうか?マーケターならその考え方をマスターしておきたい費用対効果の基本と、指標であるROI・ROAS・CPAの計算方法をわかりやすく解説します。
アトリビューション分析とは?5つのモデルや具体的な分析手法を解説
アトリビューション分析とは、直接コンバージョンにつながった施策だけを評価するのではなく、成果に至るまでの複数の経路を解析して、貢献度を測る取り組みのことをいいます。今回は、アトリビューション分析の基礎知識、方法などについてご紹介します。
アトリビューション分析とは
アトリビューション分析は、「間接効果の分析」とも呼ばれています。ユーザーがコンバージョンに至るまでのすべての接触履歴から「貢献度」を分析する手法です。「アトリビューション(attribution)」は日本語で「帰属」を意味し、直接成果につながった経路以外の間接的な影響度を測るというものです。広告予算の最適な配分に示唆を与えてくれます。
分析結果をもとに適切な広告予算、リソースに組み替える「アトリビューションマネージメント」という言葉も一緒に覚えておくと良いでしょう。
アトリビューション分析が有効なシーン
どんな状況でもアトリビューション分析を行えば成果が得られるわけではありません。扱う商材により、向き・不向きがあります。ここで、比較的向いていると言える事例を紹介します。
例えば「成果に至るまでの経路を把握したい(SNS、広告、展示会、検索など)」「広告が本当に成果に貢献しているかを知りたい」「新しいターゲットへのアプローチ方法を考えたい」「コストを削減し、効率よくプロモーションを行いたい」「複数のチャンネルを経由しているため、貢献度の高い経路を把握したい」と考えている場合に向いています。
アトリビューション分析を行わないと起きうること
アトリビューション分析を行わないと、以下のような状況に陥る可能性があります。
- 無駄な広告を出し続けてしまう
- 成果が出ている広告をやめてしまう
- コンバージョンに貢献していない施策の費用対効果が説明しにくい
- 実施できる施策が限られる
効率よく広告を運用するためには、分析によって得られる効果を把握することが重要と言えます。
アトリビューション分析のメリット
アトリビューション分析を行うことで、目標としている成果を見出せます。そこで、具体的なメリットを見ていきましょう。
CV数の増加につながる
サイト運営の大きな悩みの一つが「ユーザーの離脱」ではないでしょうか。商品やサービスの購入、メルマガ登録、イベント申し込み、資料請求など、成果を得るためにアトリビューション分析から得られた貢献度に応じて、強化する経路を見直します。CPA(*)を改善し、CV数の増加を目指すことができます。
- *CPAとはCost Per Actionの略で、「顧客獲得単価」を意味する。1件のコンバージョンを獲得するのにかかったコストのことをいう。
効率よく予算を配分できる
ユーザーのコンバージョンにつながる経路を分析することで、適切な予算配分を判断しやすくなります。例えば、配信している広告Aにユーザーが接触したと仮定します。そこからキーワードを検索し、辿り着いた広告B経由でコンバージョンが発生します。広告Aと広告Bが同じ配信者によるものである場合、「広告Aがなければ広告Bからのコンバージョンは発生しなかった」と考えられます。しかし、直接的な効果だけだと「広告Bからコンバージョンが発生した」と判断することになるのです。
一方で、アトリビューション分析のデメリットも存在します。一般的に「購入に至るまでのスパンが短い商品は、広告を通さなくてもコンバージョンに至るため、アトリビューション分析で変化を実感するのは難しい」「アトリビューション分析のツールは有償であることが多く、場合によってはコストがかかる」と言われています。
アトリビューション分析の5つのモデル
では、アトリビューション分析はどのように行われるのか、基本的な5つのモデルをご紹介します。
ラストクリックモデル
直接的な成果に至ったラスト(最終)の接点だけを評価することです。ラストクリックモデルは一般的によく使われているモデルではあるものの、アトリビューション分析をしない場合でも結果は同じように扱われます。
起点モデル
ラストクリックモデルの反対で、成果に至った最初の接点だけを評価することです。新しいユーザーや認知の低いユーザーに対してアプローチできるメリットがあります。そのため、ブランドの認知拡大を目的としたキャンペーンや広告を分析したい場合に向いています。
均等配分モデル
成果に至ったすべての接点の貢献度を均等に評価します。5つのモデルのなかで一番使いやすいと言われ、アトリビューション分析の初心者に向いています。ただし、すべての接点を均等に割り当てるため、一定量のデータがないと判断が難しいこともあります。
減衰モデル
成果に至ったすべての接点の貢献度を評価します。最初の接点から最終接点に向かうにつれ、評価の割合を高めていきます。SNSで見た商品の情報を調べていくうちに、購入意欲が高まっていった経験はないでしょうか。そのような変化を捉えたのが、このモデルの特徴です。
接点ベースモデル
成果に至ったすべての接点の貢献度を評価します。最初と最後の接点の評価を高くし、残りの中間に位置する接点の貢献度を均等に割り当てます。このモデルは、BtoBマーケティングで使われることが多いのが特徴です。
アトリビューション分析モデルの選び方
ここまで5つのアトリビューション分析のモデルを解説しました。どのモデルが最も効果的かとは言えず、フェーズや、目標、戦略などに応じて適切なモデルを選ぶことが鍵となります。
ビジネスの成長戦略における積極性は、「ラストクリックモデル→減衰モデル→均等配分モデル→接点ベースモデル→起点モデル」の順だと考えられています。
アトリビューション分析の手法
アトリビューション分析を行う上でまず大事なのは「仮説」です。具体的にどのような効果が想定できるのかを考えながら、コンバージョンに至るまでのシナリオをつくりましょう。
アトリビューション分析は、以下の3つの工程で行います。
- ビジネスモデルに合わせた仮説を立てる
- 仮説を検証する
- 検証結果に基づいて改善を行う
では、それぞれの工程を詳しく説明します。
1.ビジネスモデルに合わせた仮説を立てる
まず、ユーザーのコンバージョンに至るまでの経路の仮説を立てます。一例として、下記の経路が考えられたとします。
- ユーザーは、Twitterで拡散されたPR投稿により化粧品について知る
- その後、コスメのランキングサイトにて配信されたPR広告で商品に関心を持つ
- さらにその商品を知りたいと思い、ネットで検索をする
- 最終的に、初回購入者限定のキャンペーンを実施するECサイトで購入する
次に、ビジネスモデルに合わせて適切なアトリビューション分析モデルを選択します。
2.仮説を検証する
コンバージョンしたユーザーの行動から、広告の効果測定を行います。ここで、1.で立てた仮説が正しいかどうかを確認できます。
次に出稿先のデータを分析します。1.の例でいうと、Twitter、コスメランキングサイト、検索で上位に出た複数のサイト、ECサイトなどです。分析により、広告の表示数、ユーザーの訪問数、接触数の増減がわかります。
3.検証結果に基づいて改善を行う
例えば2.の検証で、コスメランキングサイトから商品購入に至ったユーザーが一番多いとします。そして、コンバージョンに至る最初の接点であるTwitterは、一番投稿が拡散されていた1ヶ月前のコンバージョン率が高く、徐々に低下傾向にあることがわかりました。
この検証結果をもとに、Twitterの広告コストを削減、コスメランキングサイトで配信している広告へ予算を投下するなど広告運用を変えます。そして、広告への予算分配を見直したことで、どのようにコンバージョン率が変化したかを検証します。その結果をもとに、仮説を検証を繰り替えし、さらなるコンバージョン率向上を目指します。
Googleのサービスを利用してアトリビューション分析を行う
アトリビューション分析は、Googleが提供するGoogle広告やGoogleアナリティクスを使って分析することが可能です。
Google広告
Google広告のアトリビューション分析は、検索広告とショッピング広告におけるクリックが対象となります。利用できるアトリビューション分析モデルは、最大で6つです。先述した5つのモデルのほかに、「データドリブン」と呼ばれるモデルが存在します。
データドリブンモデルは、機械学習したアルゴリズムによりコンバージョンまでの接点の貢献度を割り当てるため、一定量以上のコンバージョンデータが必要です。Google広告のヘルプには、以下のように表記されています。
コンバージョン アクションの種類によっては、サポート対象ネットワークで 30日以内に300回以上のコンバージョンと3,000回以上の広告インタラクションが必要な場合があります
出典:データドリブン アトリビューションについて(Google広告)
さらに注意点として、過去30日間で広告のインタラクション数が2,000回未満に減少、もしくはコンバージョンが200回未満になるとデータトリブンモデルを使用できなくなります。
具体的には、コンバージョンに至ったユーザーと至らなかったユーザーを比較、コンバージョンを発生しやすい経路を分析、適切な広告に対しての貢献度を上げることが行われます。成果が得られやすい広告やキーワードを把握できる点が魅力的です。しかし、過去の蓄積された情報が必要なため、最初はほかのモデルを活用するケースも多く見られます。
Googleアナリティクス
Googleアナリティクスは、Googleが提供する無料解析ツールです。Google広告とは異なり、カスタムパラメーターの設定によってGoogle広告以外のチャネルでのアトリビューション分析が可能です。さらに、最大3つの別モデルとの比較が可能です。
Google広告で紹介した6つのアトリビューション分析モデルのほかに、「最後の間接クリックモデル」「Google広告のラストクリックモデル」と呼ばれる2つのモデルを選択できます。最後の間接クリックモデルは、コンバージョンに至る前の最終接点の貢献度を100%とし、Google広告のラストクリックモデルは、Google広告の最終クリックの貢献度を100%とします。
まとめ
アトリビューション分析は直接的なコンバージョンの接点だけでなく、成果に至るまでの経路を評価するというものです。適切な予算配分の判断につながり、結果的にコンバージョン率の改善を促すことも可能です。
しかし、扱う商品や広告経路などによっては、別の分析方法を検討したほうがいいケースもあります。あくまで一つの手法と理解した上で、活用できるかを検討してみてください。
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