行動データとは?マーケティング活用の重要性と具体的な施策を徹底解説

行動データ

Sprocket編集部

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行動データとは、顧客のさまざまな行動を記録したデータのことです。オンラインではWebサイトの閲覧履歴、検索履歴、アプリ内での操作、SNS上での活動などが含まれ、オフラインでは店舗での購買履歴、移動履歴、GPSによる位置情報などが該当します。本記事では、行動データの定義から重要性、CX改善への活用方法まで、具体例を交えて詳しく解説します。約99%を占める匿名ユーザーへのアプローチ手段として注目される行動データの活用術をご紹介します。

デジタルマーケティングの世界で、「行動データ」という言葉を耳にする機会が増えています。従来のマーケティングでは、顧客の年齢や性別、居住地といった「属性データ」を中心に戦略を立てていました。

しかし、スマートフォンやSNSの普及により購買プロセスが複雑化した現在、属性データだけでは顧客の真のニーズを捉えきれなくなっています。

そこで注目されているのが「行動データ」です。行動データを活用することで、顧客が「いつ」「何を」「どのように」行動したかを把握し、より精度の高いマーケティング施策を展開できるようになります。

本記事では、行動データの基本的な定義から、その重要性、そしてCX(顧客体験)改善への具体的な活用方法まで、実践的な内容をお伝えします。

1. 行動データとは?基本を理解しよう

行動データの定義

行動データとは、顧客のさまざまな行動を記録したデータのことです。オンラインではWebサイトの閲覧履歴、検索履歴、アプリ内での操作、SNS上での活動などが含まれ、オフラインでは店舗での購買履歴、移動履歴、GPSによる位置情報などが該当します。

企業が保有する顧客データは、大きく「属性データ」と「行動データ」の2種類に分類できます。

属性データとは、年齢、性別、居住地、家族構成、職業、収入など、顧客の静的な特徴を示すデータです。

一方、行動データは、顧客の動的な行動パターンを示すデータであり、以下のような情報が該当します。

具体的な行動データの例

本記事では、行動データの中でも特にマーケティング施策に活用しやすいWebサイトの行動データに焦点を当てて解説します。Webサイトの行動データは、リアルタイムで取得・分析でき、施策への反映がしやすいという特徴があります。

行動データには、ページ閲覧やスクロールといった基本的なものから、より詳細な情報まで多岐にわたります。

ページ閲覧に関するデータ:ページの閲覧の有無・閲覧回数、スクロールの深度、ページの閲覧時間・滞在時間、ページ内要素の閲覧など

ユーザー行動に関するデータ:訪問回数、訪問した時間帯・曜日、特定ボタンのクリックの有無(お気に入り登録の有無など)、ログイン/ログアウトの有無、動画視聴の有無など

環境・流入に関するデータ:デバイス(PC、スマートフォン、タブレット)、流入元(リファラ、URLパラメータ)、商品の購入の有無・購入回数など

これらのデータはリアルタイムで取得・活用できるため、ユーザーをセグメント化し、施策や分析の対象にすることが可能です。

行動データ定義のイメージ図

2. 行動データが重要な3つの理由

行動データがマーケティングにおいて重要視される背景には、以下の3つの理由があります。

理由1:匿名ユーザーへのアプローチ手段になる

ECサイトやメディアサイトを訪問するユーザーの大多数は、会員登録をしていない「匿名ユーザー」です。実際のデータを見ると、ECサイトでは約99%、メディアサイトでも約97%が匿名ユーザーであること*がわかっています。*Sprocket導入企業調べ

属性データや購買データは、購入や会員登録を完了したユーザーにしか存在しません。つまり、サイト訪問者の大半を占める匿名ユーザーに対しては、属性データだけではアプローチの手がかりがないのです。

行動データを活用すれば、会員登録していない匿名ユーザーであっても、その行動パターンからニーズや興味関心を推測し、適切なコミュニケーションを取ることができます。これは、従来のマーケティング手法では実現できなかった大きなブレークスルーといえます。

匿名ユーザーと会員ユーザーの割合

理由2:ユーザーの興味・関心を把握できる

属性データ(性別、年齢、住所など)だけでは、その人が何に興味があるかを正確に把握することはできません。同じ30代女性でも、興味関心や購買意欲は一人ひとり異なります。

一方、行動データを分析することで、顧客の具体的な興味や購買意欲を判断できるようになります。

行動データから読み取れるインサイトの例:

このように、行動データは顧客の「今の状態」や「心理」を推測するための重要な手がかりとなります。

行動データから心理や意欲を読み解ける

理由3:適切なセグメンテーションによる施策の最適化ができる

属性データだけでは、顧客がカスタマージャーニーのどの段階にいるかを把握することができません。同じ属性を持つユーザーでも、初めてサイトを訪問した人と、すでに商品をカートに入れている人では、必要なアプローチが全く異なります。

行動データを活用することで、ユーザーが「認知」「興味」「検討」「登録」「初回購入」「リピート」「ロイヤル」といったジャーニーのどの段階にいるかを把握できます。これにより、それぞれの段階に応じた最適な施策を展開することが可能になります。

3. 行動データの差分に注目して施策を立案する方法

行動データを活用したマーケティング施策の立案には、「差分分析」というアプローチが効果的です。これは、特定の行動をしたグループとしなかったグループの行動データを比較し、そこから施策のヒントを得る手法です。

ステップ1:行動データの差分を発見する

まず、特定の行動(例:会員登録)をしたグループと、しなかったグループの行動データを比較します。

例:会員登録した人と会員登録していない人の比較

セグメントを「会員登録した人」と「会員登録していない人」に分け、それぞれの行動パターンを分析したところ、以下の差分が発見されました。

この発見から、「会社概要の閲覧は、会員登録のコンバージョン率を高める可能性がある」というインサイトが生まれます。

ステップ2:仮説を立て、施策を設計する

「効いている行動」をまだしていないユーザーをターゲットとして特定し、その行動を促すための仮説を立てます。

仮説の例:お気に入り登録まで進んだ人が会社概要を見れば、会社への信頼感が高まり、会員登録率が向上するのではないか。

施策の例:お気に入り登録を完了した直後に、会社概要ページへ誘導するためのポップアップやメール配信を実施する。

このように、行動データの差分に着目することで、データドリブンな施策立案が可能になります。

4. CX改善のための行動データ活用

カート離脱という課題

参照元:イー・エージェンシー調べ

ECサイト運営において、「カート離脱」は大きな課題の一つです。カート離脱とは、ユーザーが商品をショッピングカートに入れたにもかかわらず、購入まで至らずに離脱してしまう現象を指します。

調査によると、ECサイトのカート離脱率は平均で約70%に達しており、売上の約2倍の金額が機会損失として発生していることがわかっています。

しかし、カート離脱するユーザーの気持ちや、なぜ離脱が起こったのかを理解することは容易ではありません。この課題を解決するために、行動データの活用が不可欠です。

顧客の「今の状態」を知るために

CX改善を成功させるためには、「顧客の今の状態を知る」→「今の状態に合わせた施策を実施する」というプロセスが重要です。そして、リアルタイムで顧客を理解し、施策を実施するためには、行動データが必須となります。

施策の反応でデータを補完する

既存のデータの分析結果だけでは、CX改善に必要な情報が不十分な場合があります。そのような場合は、分析結果から導いた仮説に基づいて顧客に施策を実施し、その反応からデータを補完するアプローチが有効です。

CX改善サイクル

5. 行動データを活用した具体的な施策例

行動データを活用することで、顧客に合わせたパーソナライズされた施策を実施できます。以下に、具体的な活用例を紹介します。

施策例1:商品一覧を閲覧しているユーザーへのレコメンド

商品一覧ページを閲覧しているユーザーに対して、過去の閲覧履歴や行動パターンに基づいた「あなたへのおすすめ商品」をポップアップで表示します。これにより、ユーザーの商品発見を促進し、購買意欲を高めることができます。

施策例2:お気に入り登録していないユーザーへの機能案内

お気に入り機能を使っていないユーザーに対して、「お気に入り登録すると最新の商品情報をお届けするなどメリットがたくさん」というメッセージを表示します。機能の便益を伝えることで、ユーザーエンゲージメントを向上させます。

施策例3:購入したユーザーへのサイト満足度アンケート

購入したユーザーに対して、サイトの満足度調査のアンケートへの回答を促します。顧客の声を収集するとともに、セットアップ商品の導線を作ることができます。

施策例4:購入検討が進んだユーザーへFAQを案内

カートに商品を入れ、購入検討が一定進んだユーザーかつまだご利用ガイドを見ていないユーザーに対して、よくあるご質問の回答を案内します。適切なタイミングでの後押しにより、コンバージョン率を向上させます。

これらの施策に共通するのは、「機能を使っていない」「そろそろ使いそう」「購入検討が進んだ」「後押しが必要」といった顧客の状態を行動データから判断し、適切なセグメント・タイミングでアプローチしている点です。

施策例

6. 行動データ分析の手法

行動データを効果的に活用するためには、適切な分析手法を理解しておく必要があります。

経路分析

ユーザーがサイトに流入してからコンバージョンに至るまでの経路を可視化する分析手法です。どのような導線をたどるユーザーがコンバージョンしやすいかを把握することで、サイト設計や施策の改善に活かせます。

例えば、SNSから流入したユーザーは他の商品も見て回遊する傾向がある一方で、検索エンジンから流入したユーザーは余計な遷移をせずにカート直行する傾向がある、といった発見ができます。

行動差分分析

コンバージョンしたユーザーとしなかったユーザーの行動パターンを比較する分析手法です。例えば、初回購入者と未購入者を比較したところ、初回購入者は「ブランドの特徴ページ」を閲覧している傾向があり、未購入者は「商品ページのみ」を閲覧している傾向がある、といった発見ができます。

この発見から、「商品ページからブランドの特徴ページへの導線を強化することで、初回購入率が向上するのではないか」という仮説を立てることができます。

7. 行動データ活用に役立つ分析ツール

行動データを効果的に収集・分析するためには、適切なツールの活用が欠かせません。ここでは、目的別に3つの代表的なツールを紹介します。

① Google アナリティクス 4(GA4):全体傾向を把握する

Google アナリティクス 4(GA4)は、Googleが無料で提供するアクセス解析ツールです。Webサイトやアプリのユーザー行動を計測・分析でき、デジタルマーケティングの基盤ツールとして多くの企業で導入されています。

GA4の主な特徴

GA4は無料で利用でき、行動データ分析の第一歩として最適なツールです。

② Microsoft Clarity:ユーザー行動を可視化する

Microsoft Clarityは、Microsoftが無料で提供するヒートマップ・セッション録画ツールです。GA4が「数値」でユーザー行動を把握するのに対し、Clarityは「視覚的」にユーザー行動を理解できる点が特徴です。

Microsoft Clarityの主な特徴

Clarityを活用することで、「なぜユーザーが離脱したのか」「どこで迷っているのか」といった、数値だけでは見えない課題を発見できます。

③ Sprocket Insights:行動データからインサイトを導く

Sprocket Insightsは、マーケターの次の一手を導くための、生成AIを活用したデータ分析ツールです。GA4やClarityが「データの収集・可視化」に重点を置いているのに対し、Sprocket Insightsは「データから何をすべきかを導き出す」ことに強みがあります。

Sprocket Insightsの主な特徴

Sprocket Insightsは、「GA4でKPIは見ているが、施策に結びついていない」「顧客像が見えず、顧客理解につながらない」といった課題を持つ企業に適したツールです。

ツール選定のポイント

これら3つのツールは、それぞれ役割が異なります。

ツール主な役割費用向いている用途
GA4 全体傾向の把握・定量分析 無料 アクセス解析の基盤構築
Microsoft Clarity ユーザー行動の可視化・定性分析 無料 UI/UX改善、離脱原因の特定
Sprocket Insights 行動データからインサイト導出 有料 施策立案、顧客理解の深化

まずはGA4とMicrosoft Clarityで行動データの収集・分析基盤を構築し、「データはあるが施策に結びつかない」という課題が出てきた段階でSprocket Insightsのようなツールを検討するのがおすすめです。

まとめ

本記事では、行動データの基本から活用方法まで解説してきました。主要なポイントを振り返りましょう。

行動データとは:行動データとは、サイトを訪問したユーザーのさまざまな行動を記録したデータであり、ページ閲覧、クリック、滞在時間、デバイス、流入元など多岐にわたる情報が含まれます。

行動データが重要な理由:

CX改善への活用:顧客の「今の状態」をリアルタイムで把握し、状態に合わせた施策を実施することで、カート離脱の防止やコンバージョン率の向上を実現できます。

デジタルマーケティングにおいて、行動データの活用はもはや必須のスキルとなっています。本記事で紹介した考え方や手法を参考に、ぜひ自社のマーケティング活動に行動データを取り入れてみてください。

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