返報性の原理とは?4つのパターンとマーケティングで活用する際の注意ポイントを解説

心理学

Sprocket編集部

返報性の原理とは?4つのパターンとマーケティングで活用する際の注意ポイントを解説

返報性の原理とは、人から何かをもらうと「お返し」をしたくなる心理作用のことです。セールスやマーケティングでは必須のテクニックですが、相手の気持ちを利用するため、注意すべきポイントもあります。わかりやすく解説します。

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返報性の原理とは

返報性の原理とは、相手から何かを受け取ったときに「こちらも同じようにお返しをしないと申し訳ない」という気持ちになる心理効果のことです。例えば、当初は商品を購入するつもりがなかったのに、店員の丁寧な接客を受けて「つい買ってしまった」という経験がある人も多いのではないでしょうか。

よくある例として、化粧品売り場のタッチアップ(お試しメイク)があります。ビューティーアドバイザーから無料でメイクをしてもらうことで「タダでやってもらったのだから、何か購入しないと申し訳ない」という気持ちが生じやすくなります。

このように、人から良くしてもらったときに「お返しをしたい」といった気持ちになることは、本来人間が持っている人情や義理に近い感情ともいえます。無意識に感じていることが多い返報性の原理を意識的に考えられると、ビジネスにおいて物事をスムーズに進めやすくなるでしょう。

返報性の原理の応用「ドアインザフェイス」

返報性の原理はビジネスの場においても応用できます。そのテクニックのひとつに「ドアインザフェイス」があります。ドアインザフェイスとは、最初に「大きな要求」をして相手に断られたあとに、本命である「小さな要求」をすることで、相手の承諾を引き出しやすくする手法です。「相手が譲歩したのだから、こちらもお返しに譲歩をしないと」という心理を応用し、最終的にこちらの希望を受け入れてもらうテクニックです。

ここで「5万円で売れれば良い商品を持って、営業マンが訪問販売を行う場合」を例に挙げてみましょう。営業マンが「この商品を15万円で買ってください」というと、ほとんどの人は断りますが、それは営業マンも承知のこと。次に「通常は15万円ですが、今回は特別に5万円で販売いたします」というように値下げをする形で提案します。15万円から5万円に引き下げて提案することで、お客さま側に「譲歩してもらえた」という気持ちが生まれやすくなります。金額を引き下げてお得感を出しつつ、こちらの要求を受け入れてもらいやすくするのが、ドアインザフェイスなのです。

マーケティング施策を実行する上で、返報性の原理といった人の行動原理を読み解くことは重要です。人間が行動をするときにどのような心理に基づいているかを紐解く「行動心理学」をマーケティングに活用するポイントをわかりやすくまとめた資料を公開中です。そちらもぜひご参照ください。

マーケティングで使える行動経済学

返報性の原理は4パターン

返報性の原理はギブ&テイクが基本ですが、必ずしもギブに対するテイクだけではありません。次に解説する4パターンの返報性の原理を比較し「何を受けて何を返すのか」、その違いをみてみましょう。

パターン1:好意の返報性

好意の返報性とは、相手から何らかの好意や親切を受けたときなどに、そのお返しやお礼をしたくなる心理のことです。

身近な例でいうと、TwitterやInstagramといったSNSの「いいね」機能が挙げられます。SNS上で自分の投稿に「いいね」を付けてくれたら、相手の投稿にも同じように「いいね」を付けたくなりませんか?また、SNS上では、いいねを送り合うことをマナーだと考え「いいね返し」と呼ぶユーザーも少なくありません。

これは好意の返報性のわかりやすい事例といえるでしょう。このように、好意を持ってほしい人には、まず自分から好意をギブすることで、相手からも好意が返ってくる確率が高くなるでしょう。

パターン2:敵意の返報性

相手から敵意を向けられた際に、無意識のうちに同じように敵意を返したくなる感情を敵意の返報性といいます。例えば、飲食店で不快な接客を受けたとき、その店員には同じような態度で接してしまいたくなる心理があげられます。

また、そのときに受けた敵意を相手に返すのではなく、SNSや口コミサイトなどで拡散するという敵意の返し方もあります。返報性の原理は、このようにネガティブな側面も持ち合わせていることを知っておく必要があるでしょう。

パターン3:譲歩の返報性

譲歩の返報性とは「相手が譲歩してくれたから、今度は自分が譲ろう」という心理のことです。「人からもらった親切を返すこと」でもあるため、好意の返報性と近い心理といえるでしょう。

例えば、購入しようか迷っていた商品を特別に値引きしてもらった結果、予算をオーバーするにもかかわらず購入を決断するようなケースです。譲歩の返報性は、先述のドアインザフェイスでも応用されており、ビジネス上の交渉の場面でも応用しやすい手法のひとつです。

パターン4:自己開示の返報性

相手が先に本心を開示することで「自分も心を開いて接したい」という気持ちになる心理が自己開示の返報性です。例えば、初対面の人と話す際に相手が「緊張しています」と打ち明けたことで、自分の緊張がほぐれて話しやすくなった経験はありませんか?

また、会社の外注先などを選定する際に「電話営業だけの会社よりも、自社に訪問して丁寧にヒアリングしてくれた会社と契約したい」と思う人も多いのではないでしょうか。

これは、訪問を重ねて話を聞いてくれたことで「そのお返しがしたい」という思いからくるものです。自己開示の返報性は、初対面の人と仕事をスタートするタイミングや、営業などで心理的に距離を縮めたいときなどに役に立つ手法です。

返報性の原理をマーケティングに活用する3つのポイント

返報性の原理は、マーケティングにおいてさまざまなシーンで活用でき、適切に使いこなすことで物事を有利に進められます。とはいえ、使い方を間違えるとユーザーからクレームを受けたりトラブルのもとになったりと、逆効果になる恐れもあるのです。マーケティングで返報性の原理を活用する際に、注意しておきたい3つのポイントを紹介します。

返報性の原理

ポイント1:決して「お返し」を迫らない

ビジネスの場で返報性の原理を活用する際は、相手にしつこく「お返し」を迫ってはいけません。返報性の原理が働かないだけでなく「相手に嫌がられる」「クレームや悪評が立つ」などネガティブな結果につながる可能性が高まるからです。

以下のような、相手の気持ちを無視した行動は控えましょう。

返報性の原理を活用するならば、まず相手に「純粋に喜んでほしい」という気持ちを持つことが大切です。

ポイント2:関係性と「お返し」の負担を考慮する

返報性の原理は、相手との関係性をしっかりと把握した上で、ギブ&テイクのバランスを考えることが重要です。関係性を考えずに返報性の原理を活用しようとすると、相手に嫌悪感を抱かれたり警戒されたりする可能性があるためです。

例えば、まだそれほど親しくない相手にいきなり高額なブランド物を贈ると、相手は「下心があるのではないか」「見返りに何を求めているのか」などと、不信感を抱くでしょう。それだけではなく「ブランド物に見合うお返しをしなければ」と相手に心理的・経済的な負担をかけてしまうことも。

マーケティングではギブ&テイクのバランスを考慮し、お互いの関係性を把握した上で返報性の原理を活用しましょう。

ポイント3:ポジティブな「お返し」の仕組みを考える

ポジティブなお返しの仕組みを考えることも、返報性の原理を上手に活用する大きなポイントです。

興味深い事例に、スーパーマーケットの試食があります。ソーセージなどの食品を無料で提供する試食は、本来は新商品の味を認知してもらうために行うものです。ところが「食べたら買わないと申し訳ない」という返報性の原理が働き、購買へのプレッシャーから試食を避ける人も少なくありません。

そこで、試食で使った爪楊枝を使い「この商品が美味しかったかどうか」を投票してもらう仕組みを作ったところ、投票が「お返し」となり「買わないと申し訳ない」という購買へのプレッシャーが和らぎました。結果として、試食へのハードルが下がり新商品の認知拡大につながったのです。

このように、相手が負担に思わないポジティブな「お返し」の仕組みで、返報性の原理を活用することもできます。

返報性の原理をマーケティングに応用する際に重要となるライティングスキル、「言葉選び」についてまとめた下記の資料もご参照ください。

「顧客を動かす」訴求メッセージ

返報性の原理は万能ではない

返報性の原理は、ビジネス上の交渉においてこちらの要求を受け入れてもらいたいときなどに役立つ手法です。原理を理解し意識的に使いこなすことができれば、利益アップにつなげられるでしょう。

ただし、譲歩や好意だけではなく敵意のようなネガティブな側面があることも意識しておきましょう。また、ギブ&テイクのバランスが崩れたときも、返報性の原理がマイナスに働く可能性があります。

そして、こちらから好意や親切心を提供したからといって、必ずしも「お返し」が確約されるわけではありません。テクニックだけに頼るのではなく、相手との関係性や状況などを見極めることも、返報性の原理をマーケティングに活かす上で重要です。

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