アンカリング効果とは?マーケティングに活用した事例と注意点を解説

心理学

Sprocket編集部

アンカリング効果とは?マーケティングに活用した事例と注意点を解説

アンカリング効果とは、先に与えられた情報がその後の意思決定に影響する認知バイアスの一種で、心理学や行動経済学でよく知られた現象です。この記事ではアンカリング効果を活用したマーケティング事例と、注意点について解説します。

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アンカリング効果とは

アンカリング効果とは、先に与えられた情報や数字に無意識のうちに判断を歪められてしまう「認知バイアス」のことです。最初に見た価格や条件などを基準としてそれに引っ張られてしまう様子が、まるで海にいかり(アンカー)を下ろした船のようであることから名付けられました。

例えば、家電量販店で「当店通常価格10万円の洗濯機が、今ならセールで5万円!」という表示を見たら「お得な商品だ」と感じてしまわないでしょうか。先に「10万円」という価格が提示されているため、その数字に引っ張られて5万円を「安い」と判断してしまうのです。しかし、その時実際に「洗濯機の相場と比較して安いのか」や「その商品に5万円に見合う価値があるか」は分かりません。

容量や効果など、数値が大きい方が好ましいものであれば「通常1kgのところを、今だけ120%増量の1.2kgで販売!」と逆に最初に提示した数字より大きい数字を後から示すことでもアンカリング効果は発揮されます。

アンカリング効果は値段以外にも売り文句の「当店限定」「本日限定」「売り切れ御免」などの情報によっても引き起こされますが、数字のほうがより強く働くことがわかっています。

アンカリング効果を活用したマーケティング事例

マーケティングを行う際には、どのようにアンカリング効果を使えばよいのでしょうか。実際にアンカリング効果が使用されている具体例を見てみましょう。

メーカー希望小売価格

メーカーが「この価格で当社の商品を販売して欲しい」と考える価格がメーカー希望小売価格です。標準的な価格となるため「メーカー希望小売価格7,000円のところ、20%引きの5,600円で販売」と店頭価格と並べて表示することで、消費者にわかりやすくお得感の演出ができるでしょう。

ただし、最近では「メーカー希望小売価格から割引表示して販売する小売店が多いため、実際にお得ではないのにお得に感じさせてしまう」「メーカー希望小売価格から割引されていることが普通になると、ブランドに安売りイメージがついてしまう」などの理由から、特に家電製品ではオープン価格が採用されることが多くなっています。

はっきりとカタログなどに明記されたものでないと「メーカー希望小売価格」と表示できないため注意しましょう。

見積書の値引き欄

見積書を作成する際には、最初から値引きした金額を書くのではなく、最後に「値引き欄」を設けて合計金額よりいくら安くなったのかを書きましょう。アンカリング効果により、値引きあり/なしの状態を比較して見られるため、お得感を強調できるからです。

また、見積書を作成する場合はあえて「高価格で高機能(高性能)なプラン」「お客様におすすめしたいプラン」の2パターンの見積書を作り、高価格な見積書から提示するのもおすすめです。最初の価格がアンカーとなり次に見た価格に対して「安い」と思ってもらいやすくなるため、スムーズにおすすめプランへの決定を誘導できます。

商品・サービスの価格設定

商品やサービスでは、最初に高い価格を提示してからそれよりも低い価格のものを提示すると、低い価格のものを「お得で安い」と感じやすくなるため購入につながりやすくなります。

例えば、1万円のコース料理を売りたいと思った時は、それよりも高い1万5,000円のコースもメニューに加えるとよいでしょう。これにより1万円のコースが「より手頃でお得」に感じるため、注文が入りやすくなります。

直接目に見える価格設定だけでなく、評価の高い口コミや料理に使用する素材へのこだわりを伝えたり、店舗の内装を豪華にしたりすることで「この店の料理には高いお金を払う価値がある」と間接的に来店者に思わせることもアンカリング効果を発揮します。

マーケティング施策を実行する上で、アンカリング効果といった人の行動原理を読み解くことは重要です。人間が行動をするときにどのような心理に基づいているかを紐解く「行動心理学」をマーケティングに活用するポイントをわかりやすくまとめた資料を公開中です。そちらもぜひご参照ください。

マーケティングで使える行動経済学

アンカリング効果の注意点

アンカリング効果は手軽に取り入れられる施策ですが、安易に利用してしまうと顧客からの信頼を損ねてしまったり、法律違反になってしまったりする場合もあります。以下で注意点を確認しましょう。

注意点1:盛りすぎは逆効果

アンカリング効果を最大限に利用しようと、最初に提示する「通常価格」を高く設定しすぎると、かえって顧客の不信感を煽ってしまうこともあります。

例えば「当店通常価格10万円の洗濯機が、今ならセールで5万円!」と表示している商品について、顧客がその洗濯機の相場や口コミなどから「もともとの相場が5万円くらいの洗濯機のはず」「機能面から考えて5万円が妥当」と知っているケースです。

このような場合、顧客に「もともと5万円程度の洗濯機を、この店では通常価格10万円で売っていたのだろうか」あるいは「不必要にお得感を煽ろうと通常価格を盛っているのだろうか」と不信感を抱かれる可能性があります。

相場や製品のスペックに合わせた誠実な価格を表示することで、顧客からの信頼を得るようにしましょう。

アンカリング効果

注意点2:二重価格表示

アンカリング効果を狙って通常価格からの割引表示(二重価格表示)をする場合、景品表示法の価格表示ガイドラインを守らないと「不当な二重価格表示」として措置命令を受ける可能性があります。二重価格表示で比較対照価格として表示することを認められている価格は、主に以下の3種類です。

二重価格表示には細かくルールが定められており、例えば過去に販売実績がない価格、あるいは値引き前に相当程度の期間販売実績がない価格、将来の値上げ販売に根拠がない価格などは不当表示になってしまいます。

また、競争事業者の販売価格を使うときには、遠く離れたまったく違う生活圏の店舗価格を表示したり、昔の販売価格を使ったりしてはいけません。常に顧客に対し正確、かつ誠実な表示であることが求められるため、表示前にガイドラインを熟読するとよいでしょう。

業界大手であるAmazonもこの二重価格表示で行政処分を受けたことがあり、少しのミスや「もっと自社商品をよく見せよう」という気持ちから違反しがちな部分であるため注意が必要です。

アンカリング効果をマーケティングに応用する際に重要となるライティングスキル、「言葉選び」についてまとめた下記の資料もご参照ください。

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