パーソナライズとは? 考え方やメリット、4つの視点と事例を解説

マーケティングノウハウ接客

深田 浩嗣

イメージ:パーソナライズサービスをイメージさせる

「パーソナライズ」とはユーザー1人ひとりに最適化した情報を提供するマーケティングの手法のことで、顧客体験を向上するという意味で着目されています。パーソナライズの考え方やメリット、具体的な実践方法について解説します。

パーソナライズは、ユーザーデータの蓄積とひも付けて語られることの多い概念でもありますが、そもそもパーソナライズとはどのようなものとして捉え、どのような考えで実践していくべきなのでしょうか。

1. パーソナライズとは何か

パーソナライズとは、ユーザー1人ひとりに最適化した情報を提供する手法のことです。

マーケターなら、誰しも「このユーザーにこういうコミュニケーションをしたら、もっと商品を買ってくれるんじゃないか」「またWebサイトに来てくれるんじゃないか」と想像したことがあるのではないでしょうか。

パーソナライズと似た言葉として「1to1」というものがあります。1to1はその昔『ONE to ONEマーケティング―顧客リレーションシップ戦略』(日本での出版は1995年)という本で提唱された概念で、この本の著者であるドン・ペパーズは、CRMや顧客体験についての大家です。概念としては古くからありますが、2021年現在でも試行錯誤が続いています。

いずれも「ユーザーのデータを活用することで、よりそのユーザーにマッチした体験の提供ができるようになる」という背景を踏まえ、テクノロジーの力を使ってそれを実践しようという試みです。

Amazonの商品レコメンドはパーソナライズの一種

20年ほど前は、Webサイト訪問時に「深田さん、ようこそ!」と表示されるだけでもパーソナライズに近い体験がありました。その後さまざまな試みがありましたが、パーソナライズの実践例として非常に優れていたのがAmazonの商品レコメンドです。

Amazonの商品レコメンドは「この商品を見ている人はこんな商品を買っています」という案内が代表的です。実際に役に立つ情報ですし、皆さんもこのレコメンド経由で商品を買ったことがあるのではないでしょうか。

ただし、この方法は商品点数がたくさんあるAmazonだからこそ有効なやり方だといえます。仮に商品が10アイテムしかないECサイトで、Amazonと同じ商品レコメンドをしても、ほとんど意味はありません。

だからといって「そうしたECサイトではパーソナライズを実践できない」というわけではありません。例えば単品商材の定期販売を行っているECサイトでも、ユーザーの購入頻度や継続期間に合わせてコミュニケーションを変えることは可能です。こうした体験も間違いなくパーソナライズの一種といえます。

Amazonのレコメンドはパーソナライズの実践例として素晴らしいものですが、それにとらわれすぎてしまうとパーソナライズの本質を見失いますので、気を付けましょう。

パーソナライズとは「1人」に向けたものか?

パーソナライズ(もしくは1to1)というと「特定の1人」に向けた施策という印象を持ちがちです。これは、レコメンドがすべてのユーザーに違う内容が配信されるように見えることが影響しています。

ただ、実際に「特定の1人」に対しての施策はほとんどの場合費用対効果が合いません。特定の1人に対して何か実践したいのであれば、営業マンや店舗スタッフ、コールセンター、有人チャット、など人間が対応したほうがいい場合が多いでしょう。

マーケティング施策のひとつとしてパーソナライズを捉える場合は「特定の1人に向ける」という考え方ではなく、「ユーザーにとって価値のある体験に洗練していく」と考えるのがポイントです。

そのためには「ユーザーの状況に合わせる」ことが必要で、「ユーザーの状況を把握するためにはデータを活用する」という順序となります。

「ユーザーがどう感じるか」が大切

ある体験やコミュニケーションがパーソナライズされたものかどうかは、「ユーザーがそのように感じるかどうか」で決まります。

自分1人に向けたメッセージでなくても、タイミングや内容が自分の体験にマッチしていれば、ユーザーはパーソナライズ性を感じます。逆に、明確に自分1人に向けたものであったとしても、タイミングや内容がそぐわなければパーソナライズ性は失われます。

文章にするとあたりまえですが、「すでに保有しているデータ」ありきでパーソナライズを考えると、ユーザーの状況を見失いかねません。あくまで「ユーザーにとっての体験」ありきで、「その体験を切り取るためにはどのようなデータが必要か」という順序で考えましょう。

2. パーソナライズのメリット

パーソナライズされた体験は、何よりも「ユーザーにとってメリットがあること」が重要です。Amazonの商品レコメンドが成功したのは、ユーザーが自分では探しきれないほどの商品点数がある中、「これは見てみたい」と思える商品を高い精度で提案することで、探す手間を省くことができたからです。時には予期せぬ商品との出会いを生み出すこともあります。

「自社のユーザーにとってどのようなパーソナライズが価値があるのか」は、自分自身で考えるべきことです。

ときどき「1to1のコミュニケーションを設計したいが、商品軸の発想から抜けられない」という悩みを聞くことがあります。こういうことに悩んでいる時点で、「商品軸発想でコミュニケーションを組み立てても、ユーザーにとって価値のあるパーソナライズ体験にならない」という自覚を持っているのだろうと思います。

パーソナライズを考える上では、商品にとらわれる必要はありません。ユーザーがたどる体験をイメージした上で、特定のプロセスで生じている何かしらのフリクション(引っかかり)を解消するコミュニケーションが取れれば、パーソナライズ性を表現することはできるでしょう。

ユーザーに対してメリットのあるパーソナライズになっていれば、コンバージョン率が上がったり、客単価が上がったりなどのビジネス上のメリットにも必ずつながってきます。

フリクションについては、別の記事で詳しくご紹介しています。

顧客体験をスムーズにするフリクションレスとは?

3. パーソナライズを実践するための4つの視点

それでは、具体的にどのような視点でパーソナライズを考えていけばいいのでしょうか。

ユーザー体験を作る要素として、次の4つの視点でパーソナライズのアプローチが考えられます。

4つの囲みが並んだ図。左から「いつ:タイミングによるパーソナライズ」「どこで:場所(ページ)によるパーソナライズ」「誰に:セグメントによるパーソナライズ」「どのような:コンテンツによるパーソナライズ」

それぞれの視点について、解説していきましょう。

いつ:タイミングによるパーソナライズ

筆者は仕事柄、実店舗における接客を例にしてコミュニケーションを説明する機会が多くあります。その関係で店舗スタッフの方にインタビューさせていただくこともあるのですが、皆さんが気を遣われているのは「声をかけるタイミング」です。

実はオンラインでも同じことがいえるということが、Sprocketで計測したデータからもわかっています。タイミングの指定の仕方としては、次のようなものがあります。

あることを伝える上で、ユーザーにとってふさわしいタイミングというものがあります。同じことを伝えていても「自分に向けたコミュニケーションだな」と感じてもらえるかどうかは、タイミングの違いで大きく変わります。

実店舗の接客に例えると、入店直後に「何かお探しですか?」と聞かれるのと、しばらく店内を回遊し目当ての商品が見つからないときに聞かれるのとでは受け取り方が変わるのと同じです。

どこで:場所(ページ)によるパーソナライズ

タイミングによるパーソナライズと考え方としては似ていますが、オンラインにおいての「場所」は主にページ(URL)で指定することになります。

タイミングと場所を組み合わせて指定することで、ユーザーの状況をより具体的に絞り込むことができます。

ちなみにAmazonの商品レコメンドも場所によって内容が異なります。商品詳細ページではその商品に関するレコメンドが提案されますが、トップページで提案されるのは「最近チェックした商品」や「過去の閲覧に関連する商品」などです。

誰に:セグメントによるパーソナライズ

対象のユーザーを絞り込むには、セグメントを使います。「いつ」「どこで」でももちろんユーザーは絞り込まれるのですが、そこだけで十分にユーザーの状況を絞り込めるとは限りません。

一般的にはユーザーの過去の行動や直前の行動、性別・年代などの属性で絞り込んで、セグメントによるパーソナライズを行います。

「誰に」も「いつ」「どこで」と組み合わせて指定することが多くなるはずです。

どのような:コンテンツによるパーソナライズ

「いつ」「どこで」「誰に」という3つの要素でユーザーの状況を絞り込み、そこにマッチするコンテンツを当てていきます。

Amazonの商品レコメンドはユーザーの過去の商品閲覧や購入などの履歴を使っているため、ユーザーごとに異なる履歴に合わせたコンテンツを出すことでパーソナライズが実現しているわけです。

「いつ」「どこで」「誰に」を指定すると、自然にコンテンツが決まる場合もよくあります。簡単な例だと「トップページで商品未購入者に『会員登録でポイント付与』を訴求する」というような場合はコンテンツ自体のパーソナライズ性はほぼありませんが、ユーザー側の体験としての違和感は特にありません。

4つの要素を組み合わせてパーソナライズを考える

これら4つの要素を組み合わせて考えれば、たとえ商品点数が少ないECサイトでも、パーソナライズ性のある体験を作るための視点を持てるようになります。

どのようなWebサイトや商材であっても、ユーザーがWebサイト内にあるコンテンツを必要なタイミングで十分に確認できるとは限りません。すべてのユーザーに提示するわけではないコンテンツ・提示するべきではないコンテンツが存在することもあります。

4つの要素を組み合わせることで、ユーザーの状況に合わせたコミュニケーションを実践できます。「誰に」「何を」だけではなく、「いつ」「どのように」もパーソナライズの要素だということを覚えておきましょう。

4. パーソナライズの事例

4つのパーソナライズのアプローチについて、それぞれ実践的な事例を見ていきましょう。

いつ:タイミングによるパーソナライズの例

ECサイトの「カゴ落ちメール」は、タイミングによるパーソナライズを実践しているといえます。カゴ落ちメールとは、ショッピングカートに商品を入れたものの購入せずに離脱したユーザーに対し、離脱後30分以内にメールを送るという手法です。

通常は離脱後時間が経過すればするほどCVR(コンバージョン率)が下がる傾向が見られます。

どこで:場所によるパーソナライズの例

Webサイトの場合は、場所によるパーソナライズといわれてもピンと来ないかもしれません。場所によるパーソナライズは、「いつ」「誰に」と組み合わせることで意味が出てきます。

例えば、クーポンを保有しているユーザーがカートページを表示したときに「お持ちのクーポンを使ってくださいね」と伝えてあげるのは、カートページという場所によるパーソナライズです。

場所によるパーソナライズは、ポップアップUIを使うとアプローチを考えやすくなります。

例えば、申し込みフォームに到達したユーザーが、フォームを入力している途中で何か迷うことがあったとします。FAQページに行けば疑問が解消できるかもしれませんが、入力の途中でページを移動してしまうと、戻ってきてまた入力をやり直さなければいけません。

このような場合に「フォーム入力中に気になったのはこちらですか?」という内容のポップアップを出すことで、ユーザーがFAQページに移動することなく疑問を解消することができるわけです。

誰に:セグメントによるパーソナライズの例

セグメントによるパーソナライズは最も想像がしやすいでしょう。購入経験の有無や性別、年代などで思いつく事例はたくさんあると思いますので、ここでは説明は省略します。

どのような:コンテンツによるパーソナライズの例

「いつ」「どこで」「誰に」という条件を考えれば、提供するべきコンテンツもそれに応じて変わります。例えば、トップページのファーストビューにあるバナーの内容が、過去の行動によって変わるような仕組みはコンテンツによるパーソナライズのわかりやすい例です。

Amazonの商品レコメンドも、提示する内容がユーザーによって異なりますのでコンテンツによるパーソナライズといえます。

5. パーソナライズを実践するときの注意点

続いて、パーソナライズを実践するときの注意点を解説します。

実店舗での買い物を想像してみてください。店員さんがあなたに向かって話しかけてきました。明らかに1to1のコミュニケーションですが、果たしてあなたはパーソナライズ性を感じるでしょうか?

これは感じる場合もあれば、感じない場合もあるはずです。もちろんパーソナライズ性を感じなくても、スムーズな体験になっていれば結果オーライでしょう。ただ、原則的には「自分のことを考えてコミュニケーションを取ってくれている」と感じられたほうが、ユーザーのスムーズな行動につながります。

「あなた向け」であることをユーザーに気付いてもらう工夫

よくあるパーソナライズの手法として「ユーザーの過去の行動に応じて、トップページのバナーを差し替える」というものがあります。この手法は、パーソナライズを実践しているものの、ユーザーに気付かれないことがあります。ユーザーからすれば、バナーが自分用になっているかどうかは比較して判断しようがないからです。

「あなた向けなんですよ」ということをうまく気付かせてあげるために、Amazonはこのあたりもうまくやっています。Amazonのトップページでは、次のようなラベルが付けられています。

こう書かれれば、自分向けに提示されていることが一目瞭然です。

費用対効果のバランスを考える

パーソナライズを考えるときには、費用対効果のバランスも考慮しましょう。

確かに細かく条件を絞れば絞るほど、パーソナライズの精度は高まります。ただし、そのぶん該当するユーザーの数も絞られることになります。

仮に1万人のユーザーがいたときに、人数分のパーソナライズを人が考えるのは時間的にまるで現実的ではありません。かといって、全員に同じ内容で情報配信するのも工夫がなさすぎます。パーソナライズを行う際は、この間のどこで区切るのが最もバランスがいいかを考えるのがポイントになります。

ベストなのは、「自分向けだ」と思える体験としてのパーソナライズ性を確保できる粒度でありつつ、実施の負担がなるべく小さいものです。

実施の負担と書くと誤解を招きそうですが、パーソナライズの施策は原則的にその評価を行うべきですので、実施の負担が高いと施策の評価や改善のPDCAサイクルを回すスピードが遅くなってしまいます。すると結果として提供できるパーソナライズ体験の質も上がりにくくなります。実施の負担が小さいということは、回り回ってユーザーの体験をより良いものにできるということでもあるのです。

6. パーソナライズの実践に必要なツール

具体的にパーソナライズを実践するためには、次のことを可能にする何かしらのテクノロジーが必要になります。

具体的には、Webサイト内の体験をパーソナライズするために次のようなツールがあります。

プッシュ型のツールでも、もちろんパーソナライズを実施することが可能です。

ここで大切なのは「ツールを入れることを目的にしない」ということです。あくまでユーザーにとって「気が利いている」と受け取られなければ、どれだけ優れたテクノロジーを導入しても意味がありません。

ツールを導入するだけでなく、ユーザーにとってメリットが感じられる体験になっているかどうかを評価・検証できるように準備しておきましょう。既存の分析ツールで評価する場合もあれば、パーソナライズ系のツールに評価機能が備わっているものもあります。いずれにしても、実施する前の段階で評価・検証の方法も一緒に考えておくことが大切です。

7. まとめ

本記事ではパーソナライズについて、どのような考え方で、どのように実践していくべきかを説明しました。

パーソナライズというと、どうしてもAmazonの商品レコメンドのイメージが強くありますが、Amazonの手法はパーソナライズの一種でしかありません。その先入観に惑わされずに、自社ならではのパーソナライズを考えてみてください。

パーソナライズは、「いつ」「どこで」「誰に」「どんな」の4つの要素に分解して考えること、そして結果を検証するPDCAサイクルを回すことが重要です。

オンラインではユーザーの顔や表情が見えませんので、せっかく考えて実践したパーソナライズ体験がユーザーの意にそぐわないものだったとしても、そのことに気付きにくいというリスクがあります。パーソナライズは、評価・検証を経てユーザーの反応を読み解きながら改善していくものです。1回やって終わりではなく、一定の期間と手間をかけながら作り込んでいくものだということは覚えておいてください。






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参考書籍:
ONE to ONEマーケティング―顧客リレーションシップ戦略

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