デジタルマーケティングに活用するための「KPI」とは?

マーケティングノウハウ

深田 浩嗣

KPI、という言葉はデジタルマーケティングに関わっている皆さんであれば聞いたことがあるのではないでしょうか。 改めて「KPIとはどういうものなのか」「KPI設定のコツ」などを解説します。

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KPIとはKey Performance Indicatorの略称で、日本語で言うと重要業績指標となりますが、デジタルマーケティング領域においてはKPIという表現が普通に使われています。

しかしこのKPI、シンプルなようで奥の深い言葉です。何気なく「KPIちゃんと追いかけないとね・・・!」と使うにとどまらず、改めて

などについて解説していきたいと思います。

1. KPIとは?

Webサイトの運営につきものの「PV/UU/セッション」。これらをKPIとしているケースも多いのではないでしょうか。

KPIとは「重要業績指標」と呼ばれるだけに、業績を表現する数値的な指標を表します。KPIは複数設定することが一般的かと思いますので、前述のPV/UU/セッション、をそれぞれKPIとするようなことがあり得ます。しかしこの設定の仕方は果たしてKPIとして妥当と言えるでしょうか?

別の事例で考えてみましょう。

ECサイトであればよくでてくる式として

売上=客数✕コンバージョン率✕客単価

があります。この場合、客数、コンバージョン率、客単価、がそれぞれKPIとして位置付けられます。ではここでいう「売上」はKPIに当たるでしょうか?

ここの考え方が、KPIを正しく使えるかどうかをまず分けるところです。売上は一般的にはECサイトで定められる指標の中では「最」重要の指標として位置付けられることが多いと思います。

最重要というのは、もっとも重要ということですから、重要業績指標であるKPIより上位にくる指標となります。この「最重要業績指標」はKPIと区別して、KGI(Key Goal Indicator)と呼びます

2.KGIとKPIの違いとは?

KPIを考える上で、欠かせないのがこのKGIという概念です。KGIとKPIの関係性は次の図のようにツリー構造になっています。

図:KPIツリーの例

ここで覚えておいてほしいのが、KGIは「最重要」な指標ですから、ある取り組みを評価する上では必ず1つだけ存在するということです。

そして、KPIとはKGIがどのような指標に分解できるかを表現する中間指標としての位置付けになります。ですので上の図のように、KGIとKPIはKGIを頂点とするツリー構造を示すことになります。

先ほどのECサイトの例でいうと、「売上」がKGI、それ以外の指標はKPIとなります。では「PV/UU/セッション」はKPIとして妥当と言えるでしょうか?

ここで考えなければならないのは、

などということです。

PV/UU/セッションの1つが実はKGIになっている、というサイトも実際にあることと思います。ただ、とりあえず盲目的この3つを同列のKPIとして扱うのは、不適切な場合もありますので一度立ち止まって考えてみてもよいかと思います。

3.KGIとKPIの関係性とは?

このように、KGIを定めずにKPIだけ設定してしまっていたり、KPI間に順序を付けずに同列に扱ってしまったりすると、改善のサイクルを回す上で不都合が生じやすくなります。

もちろん何も指標を定めないよりは、何かしら指標を定めるほうが間違いなくよいのですが、KGIの分解としてのKPIや、KPI間の順序関係といったことへの区別があるかどうかで実運用上の改善スピードが大きく変わることになります。

というのはKPIとは原則的に、KGIを達成するために必要な構成要素として位置付けられるためです。先程の例で、PV/UU/セッションを並列的にKPIと設定していたとしましょう。この場合、改善のサイクルを回す上でどのKPIを重視すべきかは明確になっているでしょうか?

PV/UU/セッションの関係性を分解すると次のようになります。

  • PV=UU数✕UUあたりPV数
  • PV=セッション数✕セッションあたりPV数
  • セッション数=UU数✕UUあたり訪問回数

KPI同士の関係性がわからないままにしてしまうと改善のサイクルを回す際にどのKPIにフォーカスを置くべきかが隠れてしまいます。

KPIを設定するとは、

という改善のプロセスを回していくために行うものであるということをしっかり認識しておきましょう。

4.中間KPIとは?

中間KPI、という表現も耳にする機会が多いのではないでしょうか。一般にはKPIへの到達の過程で達成すべき指標のことを中間KPIとして呼んでいるかと思います。

具体的には、例えばECサイトであれば、購入の手前の行動としてカートへの投下という行動があるので、カート投下率を中間KPIとしている、というような場合です。

中間KPI、という言い方自体がKPIの定義に優先度や階層性があることを暗に示しています。実質的にはKPIと中間KPIの関係性は、前述したKGIとKPIの関係と同じだと考えて良いでしょう。

5.KFSとは?

KPIやKGIと近い性質の概念として、KFS(Key Factor for Success)という言葉があります。同じ意味の言葉としてKSF(Key Success Factor)と言われることもあります。重要成功要因、などと訳されます。KFSはいくつか考えられる成功要因のうちで重要なものがどれかということを示すものです。

KFSは定性的に表現されることが多く、必ずしも数値的な指標が伴っているわけではありません。ですので、KFSを定量的に表現したものがKPIである、というように説明されることがあります。

KPIは通常複数設定されることになりますので、その中で取組優先度の高いKPIをKFSと考えても良いと思います。

ただKFSはKPI/KGIとは異なる文脈でも使われる言葉でもあります。例えば「任天堂のKFSは、必ずしも最先端の技術を追い求めず、枯れた技術の水平思考という発想であくまでユーザー視点を追求する姿勢にある(※筆者の主観です)」というように企業固有の考え方や製品機能といったものを指してKFSと呼ぶこともあります。このような場合には必ずしもKFSをKPIとして表現することが出来ません。

また、先ほど例に挙げた

売上=客数✕コンバージョン率✕客単価

の場合で考えてみたときに「KFSがコンバージョン率である」ということに意味がある場合とそうでもない場合があります。

このように、KFSという言葉はKPI/KGIと類似する概念として取り扱われることがありますが、用語の用途としてはそれに限るわけでもありません。使う際にはどの用途で使うかをはっきりさせた上で使ったほうが誤解がなくなりますので気をつけておきましょう。

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コンバージョン率改善の基本

6.KPI設定のコツ:SMARTとは?

KPIを設定する際には「SMART」と呼ばれるコツを覚えておきましょう。SMARTとは、

の頭文字をとった言葉です。

売上=客数✕コンバージョン率✕客単価

を例にとって説明していきましょう。

<Specific>

KPIは具体的で明確であるべきです。例えば「コンバージョン率」と言ったときに、会社によってはセッション数に対してのコンバージョン率を指している会社もあれば、ユニークユーザー数に対してのコンバージョン率を指している会社もあります。「客単価」もユニークユーザーに対しての平均単価を指している場合があれば、注文に対しての平均単価を指している場合もあります。

KPIは定義を明確に定めるようにしましょう。

<Measurable>

KPIは数値として計測出来るべきです。当たり前じゃないか、と思われると思います。ただ例えば「客数」を計測するときに、キャンセルされた客は客数に含めないようにしたいと思っても、システム上の問題やタイムラグの問題で、現実的にはデータの突合をしきれない場合もあり得ます。このような場合、現実的に計測可能な数値をKPIとして採用するようにしましょう。

<Achievable>

KPIは達成可能な数値であるべきです。これはSpecific、MeasurableのようにKPIの定義としての設定ではなく、設定されたKPIについての具体的な数値目標についての話となります。「コンバージョン率」というKPIの目標を1.5%にしよう、という場合の1.5%のことを指しています。

<Relevant>

KPIは目標に関連づいているべきです。これもKPIの定義としての設定の話です。KPIとKGIの関係性について上述していますが、KGIを構成する要素としてKPIが位置付けられていればRelevantであると言えます。

<Time-bound>

KPIの達成には期限が設定されているべきです。これはKPIの定義ではなく、、Achievableと同様にKPIについての数値目標としての話になります。「コンバージョン率」目標1.5%を6ヶ月以内に達成しよう、というように期限を同時に設定するようにしましょう。

このように、KPIを設定する際にはSMARTに設定すると良いとされますが、中を見ていくと、

にわかれています。いずれも重要なのですが、特にKPIを定義するところで間違えてしまうと、その後いくら適切に数値目標化されていてもPDCAを正しく回せなくなってしまいます。定義のところをまずは押さえるようにしていきましょう。

7.KPI設定のプロセスとは?

KPIはSMARTにしようということはわかりましたので、次にKPIを設定するにはどのようなプロセスをたどっていくとよいかを説明していきます。

まず、KPI設定に先立ってKGIを1つ決めましょう。先の例だと「売上」がKGIになりますので、KGIの設定はほぼ自明であることが多いかと思います。 KGIを決めると、KPIはKGIを構成する要素として分解していく形で設定していきます。分解は、原則的には足し算・掛け算の数式していくことを考えましょう。

売上=客数✕コンバージョン率✕客単価

のように、KPI同士の掛け算として分解していくのがまずはわかりやすいかと思います。次に、商品別・顧客セグメント別など異なるセグメントに分解したほうが良い場合は足し算として分解していきます。

なお、KPI設定をしっかりやろうとすると、KGIを頂点とするKPIツリーを作ることになります。こちらについては以下の記事で詳述していますのでよろしければあわせて御覧ください。

KPIツリーを詳細に作り込んでいくところまでは踏み込まないにしても、KPIを設定するということは、これから取り組もうとしていることがどのようにモデル化されるかを考える、ということでもあります。

モデルが出来上がれば、まず改善対象とするKPIを1つ(場合により複数)選択します。選択したKPIについて、期限があって達成可能な数値目標を設定しましょう。

本記事、及びKPIツリーの記事でも、基本的にはKPI設定の要諦は「モデル化」にあるというスタンスをとっています。最初はそこまでキレイに出来上がらないかもしれませんが、KPI設定自体も定期的に見直していく対象です。

なんども改善のサイクルを回していくことで、KPI設定のモデルもブラッシュアップされていきますのである程度まで考えれば実践に移っていきましょう。

8.KPIの運用とは?

KPIの定義付けが一定出来てくれば、実運用に入っていきましょう。定義づけにあまり時間をかけすぎて実践への取り掛かりが遅れてしまっては本末転倒ですので、優先度が決められて施策がある程度イメージ出来る段階にまでなってくれば、その段階から運用スタートとしていくほうが良いでしょう。

運用上は、いくつか定めたKPIに優先度をつけ、まずどのKPIの改善から取り組むかを決めるところからはじめましょう。その上で数値目標と期限を設定し、施策化していきます。

通常の運用は、優先度順にKPIを対処していくことで、KGIの改善を進めていくということを行います。ただ、ある程度のサイクルでKPIの定義付け自体もまた見直しの対象として考えてみてください。

実運用を回していくと、KGIを分解していく際には気づかなかった重要指標が見えてくることもありますので、そうした指標はKPIとして取り入れていく必要があります。KPI運用には定義したKPI/KGIの構造自体の見直しも含めて考えるようにしましょう。

9.なんのためにKPIを設定するのか?

KPIの設定はもちろん目標(KGI)達成のために行うものです。ではKPIを設定するとなぜ目標達成のためになるのでしょうか?

KPIに落とし込むことで、具体的な施策の優先度を明らかにしやすくなります。

目標達成のために、施策ありきではなく、構造から「ここからまず取り組むべき」というコンセンサスをチーム内で作りやすくなります。

また各KPIを改善することでどのくらいの影響をKGIに対して与えることが出来るかという関係性も明確になります。

こうしたことを明確にしてPDCAに取り組んでいくと、チームとしてのナレッジが蓄積されやすくなるという効果が得られます。施策自体がうまくいかなくても、何がダメだったのかがわかりやすくなりますし、次にその失敗を踏まえてどうしていくべきかが考えやすくなります。

KPI設定自体も見直しをかけ続けていくことで、目標達成のためにどのKPIが重要なのか、どのようにKPIツリーを作っていくべきか、といったことが次第にブラッシュアップされていきます。

こうしたことの積み重ねでPDCAのサイクルが回しやすくなり、目標達成に近づきやすくなっていくのです。

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10.デジタルマーケティング領域での具体例

では実際にどのようなKPI設定になっていくのか、具体例を挙げていってみましょう。

ECサイトの場合

この記事でも何度か挙げている

売上=客数✕コンバージョン率✕客単価

ですが、実際は

売上=セッション数✕(セッション当たり)コンバージョン率✕注文単価

でみている場合が多いのではないかと思います。

もう少し粒度を細かくすると、例えば「セッション数を広告流入によるセッションとそれ以外の流入によるセッションに分解する」ことなどが考えられます。

この場合(ちょっと長くなりますが)、

売上 = 広告セッション数✕(広告セッション当たり)コンバージョン率✕(広告セッションからの)注文単価+広告以外セッション数✕(広告以外セッション当たり)コンバージョン率✕(広告以外セッションからの)注文単価

となります。

新規とリピートでセッションをわけるという考え方もあり得ます。この場合、少し踏み込むと、新規ユーザーのうちどのくらいの割合でリピートするのか、ということをKPIに組み込みたくなります。こうなると、セッション数でみていくのはちょっとわかりにくくなります。新規ユーザーのうちの一定の割合がリピートユーザーになる、ということであればユーザー数で考えたほうがわかりやすいでしょう。

ですので、まずは下記のように分解しましょう。

売上=新規ユーザー数✕(新規ユーザー当たり)コンバージョン率✕(新規ユーザーからの)注文単価
+リピートユーザー数✕(リピートユーザー当たり)コンバージョン率✕(リピートユーザーからの)注文単価

その上で、

リピートユーザー数=新規ユーザー数✕(新規ユーザー当たり)コンバージョン率✕リピート率

というように分解すれば、リピート率をKPIとして組み込めることになります。

この段階ではまだ「リピート率」の定義がSpecificではないのでより詳細に検討する必要がありますが、おおよそのイメージとしてはこのようにKPIの設定を進めていけば良いでしょう。

申し込み系サイトの場合

保険の申し込み、ローンの申し込み、口座開設の申し込み、体験入塾の申し込み、といったような申し込みをゴールとするサイトも数多く見られます。

こちらのKPIの構造を考えると、

申込み件数 = ユーザー数✕(ユーザー当たり)コンバージョン率

が一番シンプルな形です。

この種のサイトでは基本的にはユーザー一人につき申し込みは1回に限られますのでリピートの概念は織り込む必要はありません。これ以上分解していくとすると、ECサイトの場合と同様に流入元別に分解することができます。またそのほかに、コンバージョン(申し込み)までのプロセスとして通るであろういくつかの行動を取る率を織り込む、という分解を考えることが出来ます。

例えば申し込みに当たり、「料金シミュレーションを行う」といった行動を取る場合が多いとしてみましょう。

コンバージョン率 = 料金シミュレーション実施率×料金シミュレーション実施者中のコンバージョン率

として分解していくことが出来ます。

もちろん中には料金シミュレーションを実施せずにコンバージョンするユーザーもいるでしょうから、そこはまた別に分解していくことになります。

11.まとめ

KPIという言葉自体は日常的に耳すると思いますし、実務で活用されておられる方も多くいらっしゃると思います。

正しく運用すれば大きな効果を発揮することが出来ますのでぜひうまく業務に取り入れて頂ければ嬉しいです。

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