Webマーケティングでも注意すべきインビジブルゴリラ(見えないゴリラ)現象とは

心理学

深田 浩嗣

インビジブルゴリラ(見えないゴリラ)

突然ですが、「インビジブルゴリラ(見えないゴリラ)」という実験をご存知でしょうか? 下記動画をご覧頂きたいのですが、動画のナレーションが英語になってしまっていますので補足を入れておきます。

この動画は人の注意力をテストするためのもので、「白い服を来た人たちが何回パスをするかを数えてください」と最初に言われます。再生して実際に数えてみてください。動画自体は1分半もありませんのですぐに終わります。

・・・動画を最後まで見終わると、、、

タネがわかると思います。

人間の注意力をテストするための動画なのですが、実はちゃんとパスの数を数えることが出来たか、を問うわけではないんですね。僕も最初にこの動画を見たときは「え??何言ってんの??」と思ったのですが、もう一度再生してみると結果に驚きました。みなさんはインビジブルゴリラ(見えないゴリラ)に気づけましたでしょうか??(実験としてはおよそ半分くらいの人が気づくそうです)

パスを数えることに意識を向けていると、それ以外のことには気づきにくくなってしまう。わかった上で動画を見ると、なぜこれを見過ごしたのかが信じられないという感想を持たれるのではないかと思います(ぼくもそうでした)。

インビジブルゴリラ(見えないゴリラ)現象とは

この実験は「錯覚の科学」という書籍に詳しく紹介されているのですが、ハーバード大学の心理学部の授業で同書籍の著者が行った実験が元になっています。この書籍ではインビジブルゴリラ(見えないゴリラ)だけではなく他の様々な人間の錯覚にまつわる現象が取り上げられており、いずれも

ということを示しています。

「選択的注意」というように言われるそうなのですが、人間の注意力というのは非常に選択的で見ようとしているものはしっかりと目に入るのですが、見ようとしていないものはまるで目に入らないということが起きるものなのだというのがこの書籍での主張です。確かにインビジブルゴリラ、2回目に見るとこんなん絶対見過ごさないやろ!と思ってしまうくらい堂々と登場しているのに、面白いもんですよね。

この実験には追試があって、「ゴリラが黒い色をしており目立たないので気付かないのではないか」ということが実験された様子も紹介されています。わざと目立つように用意したもので同じ実験を行っても、引き続き気づかない。目立たせるよりも人間の「非注意による見落とし力」のほうが勝っているという結果が出たそうです。

日常生活でもなにかに集中していると他のことが目に入らなくなるということはよくありますし、逆に「これを探そう」と思って探していると目に飛び込んでくるといったことも経験が皆さんおありかと思います。

インビジブルゴリラ現象はWeb上でも起きている

このようなインビジブルゴリラ現象ですが、Webマーケティングの領域でも実はしょっちゅう起こっています。ご承知のようにWebというメディアは基本的に見たいものを自ら能動的に見るという視聴態度で臨むメディアです。特にデバイスがPCからスマホに変わっていくことで、「(じっくり読まずに)ざっと見て見たいものを探す」という視聴行動が自然に増えることになります。

そうすると自分が選択的注意を払っていないコンテンツはインビジブルゴリラとなり、なかなか目に入ることがなくなります。

つまり、皆さんが頑張ってコンテンツを作って、そのコンテンツに誘導するバナーを用意して、クリック率を高められるようにABテストを繰り返しても、そもそもそのコンテンツ自体がユーザーの選択的注意の外にあるものなのであれば、何も目に入ってこないということが起きているのです。

これはよく考えるとすごく恐ろしいことで、上のような動画ならタネ明かしをすることで2回目をみようと思いますが、大半のサイトではタネもなにも気づくことなくスルーされきってしまう、という結果になります。なおかつ、そもそも気づいていない以上、サイト運営者としてはどう頑張っても手の打ちようがありません。

実店舗など、接客として人間が介在できるメディアであれば、「あ、この人気づいていないな」と察知できればその場で気付かせるように声をかけることが出来ます。Webの場合は原則的にユーザーの視聴行動はセルフサービス型になりますので、インビジブルゴリラには永遠に気づけない。

また、Webマーケティングであればなんでもデータとして取れるように思ってしまいますが、インビジブルゴリラ現象はデータには落ちることがありません。行動を起こさないのでデータに落ちようがないのです。そのためGoogle analyticsとにらめっこしても、インビジブルゴリラ現象が起きているかどうかを判別することは困難です。

しかしながら、みなさんもご自身のWeb閲覧行動を思い起こしていただければ実感できると思うのですが、インビジブルゴリラ現象はむしろ当たり前のように起きていると考えたほうが良いでしょう。「なかなか見て欲しいページを見てくれない」、「これを読んでくれればいいサービスだとわかると思うのに、なかなか辿り着いてくれない」といった悩みは頻繁に耳にしますし、現在ここで悩まれている方も多いのではないでしょうか。

マーケティング施策を実行する上で、インビジブルゴリラ現象といった人の行動原理を読み解くことは重要です。人間が行動をするときにどのような心理に基づいているかを紐解く「行動心理学」をマーケティングに活用するポイントをわかりやすくまとめた資料を公開中です。そちらもぜひご参照ください。

マーケティングで使える行動経済学

Webマーケティングで頻出のインビジブルゴリラ現象の対策は?

ではこのインビジブルゴリラ現象ですが、Webマーケティングではどのように対処すると良いでしょうか。

[対処1]気づいてもらえる表現に言い換える

実は「錯覚の科学」でもこの非注意による見落としを防ぐための方法は「できるだけ予想のつくものにする」ということが証明済みの対処方法として挙げられています。この考え方を応用するのがWebマーケティングでも有効でしょう。

Webにおけるインビジブルなゴリラをビジブルにするために、ユーザーが気付けるような表現を考えてみましょう。ユーザーがWebサイト閲覧時に選択的注意を払っている対象がなにかを理解し、それに合わせるとどのような表現をすると目に入りやすくなるかを考え実践してみることになります。

ABテストツールを使い、該当箇所の表現を何パターンか試してみて反応の違いを見ていきましょう。

流入元に合わせて出し分けを考えていくのも効果的です。どのような経路で流入してきたかでユーザーの頭の中の言葉・気づきやすい言葉が変わります。

[対処2]気づいてもらえるように声をかける

錯覚が起きていることを自身で気づくのはとはいえ難しいものがあります。そこで、注意の外からコミュニケーションを取ることで気付かせるという対処法が考えられます。

ポップアップを活用することで「声をかける」体験をWeb上でも作り上げることが出来ます。それを活用し、気づいてもらえるように声をかける工夫をすることで、インビジブルゴリラ現象を緩和することが出来るようになります。

こちらは弊社Sprocketが得意なやり方ですので事例にてご紹介することが出来ます。例えばデサントさまの事例がこの対処を適用した例になっています。Webでよくある「新規会員登録」を促進している事例になるのですが、会員登録という行動は基本的にユーザーにとっては面倒で手間のかかることです。このサイトでも、デサントの商品を見たいと思ってきている・あるいは何かスポーツに良いウェアはないかなと思ってきているユーザーは多くいらっしゃいますが、「デサントの会員登録をしよう!」と思って訪問しているユーザーはほとんどいないことでしょう。

画像:デサントサイトでの会員登録ポップアップ画面キャプチャ

そのようなユーザーにとっては、「新規会員登録」は典型的なインビジブルゴリラであり、選択的注意の対象外にあります。

ただこれは、会員登録に関心がないことを意味しているわけではありません。気づいてもらえるようなタイミングで声をかけ、選択的注意に止まるような提案として説明すれば、会員登録という行動を促進することが出来るようになります。このデサントさまの事例では、「会員限定のアウトレットを開催している」など、デサントというブランドやスポーツウェアに関心のあるユーザーにとっては魅力を感じると考えられるいくつかの会員登録メリットをご紹介しています。

こうすることで実際に会員登録率の向上を図ることが出来ています。

なお、向上率は、このポップアップ配信対象となるユーザーセグメントのうち、ランダムで一定割合のユーザーグループにはポップアップを配信し、残りのグループにはポップアップを配信しないこととし、2つのグループにおける会員登録率の差分から算出しています。

このような対処をすることで、Webマーケティングにおいてインビジブルゴリラ現象を緩和することが出来ます。運営されているサイトで「どうもこのコンテンツには気付かれていないのではないか」と思うものがあれば、こちらを実践することを検討してみてはいかがでしょうか?

最後に。Sprocketはこのように、「人を動かす」にはどうすればいいのか、なにか応用できる原理原則がないのか、ということを常に試行錯誤してきています。どのような実験をしているの・・・?ということをホワイトペーパーにて解説しておりますので、よろしければコンタクト情報をご記入の上ダウンロードいただければ嬉しいです。

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