「ゼロパーティデータ」という言葉から、信頼関係のありようを考える

マーケティング

深田 浩嗣

突然ですがゼロパーティデータ、という単語を耳にされたことありますでしょうか? こういう言葉が出てきた背景と、今後の企業とユーザーの信頼関係の世界観を考えてみたいと思います。

詳しい言葉の説明はDIGIDAYの記事あたりを読んで頂ければと思うのですが、簡単にいうと「ユーザーが自ら意図して企業側に共有したデータ」をこのように呼ぼうとしているようです。ファーストパーティデータをシステムが(ユーザーの許諾の有無に関わらず)自動的に収集するデータとして位置づけることで、クッキー問題などに代表されるような無許諾状態のデータ収集・活用はイマイチだというトレンドに合わせて登場した単語ですね。

「ユーザーが意図して提供したデータ」ってどんなものか?例えばフォームへの入力や、アンケートへの回答などがそれにあたるとのこと。リンクをクリックしてページを遷移して・・・というのも意図した共有データではないか、という突っ込みもなくはない気はします。ただリアル店舗になぞらえると、店内の回遊行動を逐一カメラで撮影されて収集されているとなんだか気持ち悪い感じがしますが、店員さんに質問されて答えたことが適切に商品提案になっていると気が利いてる感じがするのとそこは同じようなものなのだろうと思います。

イメージ画像:会計時にカード清算している状況。

そう考えてみると、確かにゼロパーティデータとファーストパーティデータを区別することにも、一定意味があるのかもしれません。

むしろよく考えてみると、店舗などオフライン上でのコミュニケーションでは、ほぼこのゼロパーティデータのみを使って店員さんは応対を行っている状態ですよね。「今日は何をお探しですか?」の場合、割とダイレクトな質問でわかりやすいデータ収集ですが、「やっぱり春は明るい色が良いですよね!」と言って共感してくれる雰囲気かどうかを見る、というのもいわばゼロパーティデータの収集と言っていいのではないかと思います。

気の利いた店員さんほどさりげない会話の中で、うまくお客さんの様子を伺いながら、適切な提案や情報提供できるように心がけているはずです。

まだまだデジタル上ではこういう種類のコミュニケーションは見かけません。基本的にはユーザーのセルフサービスという前提がありますから、うまく質問しながらデータを集めるという発想になりにくい。チャットなどが出てくることで少しずつ変わっては来ているものの、やはりユーザーから話しかけないといけないという能動的な点や、回答結果を収集すべきデータと認識できているかという点など、まだまだ改善の余地がありそうに思います。

また、重要なこととして「ユーザーが自発的に、かつマジメに答えてくれるか」ということがあります。適当に投げかけられたと感じた問い、あるいはなにか答える意味・メリットがあるかわからない問いには、残念ながらちゃんと答えてはくれないでしょう。そうすると、「適切に問いかける」という態度及び態度の表明がとても重要になってきます。

単なる情報収集目的だな、とユーザーが捉えた場合、もちろん正しく答えてはくれないでしょう。一方でよい提案や情報提供をしようと思ってくれてるのかな、と捉えた場合はちゃんと答えてくれることでしょう。

自己完結できる時に「何をお探しですか?」と聞かれても、ユーザー側では「いや見てるんでいいです」となりますよね。でも「あれ、これないのかな?どうしよう」と思った時に、「何をお探しですか?」と聞かれると「お、いいところで聞いてくれた」となるものです。同じことを聞いていても、問いかけのタイミングでも全く反応が変わってきますし、集められるデータの質・量それぞれ大きな差が出ます。

「ゼロパーティデータ」という単語ですが、こんな風に考えてみると呼び名はともかく概念としては今後結構重要になってくるのかもしれません。特に、ファーストパーティデータとして位置づけられる自動収集系のデータと比べて差異が大きいのは「収集したデータの質が問われる」という点かと思います。自動収集系のデータの場合ももちろん質は問われますが、「AさんがXというページを見た」というデータ自体に質の良否はありません。

ゼロパーティデータの場合、「AさんがXと答えた」というデータの質が問われます。ちゃんと答えてくれていればマーケティングコミュニケーションに使えますが、適当に答えられていると何の役にも立ちませんし使用することがかえって有害になりかねません。上記のDIGIDAYの記事でも指摘されていましたが、信頼関係があれば質の高いゼロパーティデータが収集でき、その結果よりよい体験を提供することが出来ますが、信頼関係がなければそうはいきません。

・・・ただこのゼロパーティデータの話、ざっと説明しようとするとどうしてもこういった書き方になるので、最後は「ちゃんと信頼関係築きましょうね」的なお説教感が出てしまうのですが、この話の本質は実は僕はそこではないと思っています。今しがたは確かにどちらかというと企業側が消費者に対して後手に回っていて、悪者になりがちなのですが、本来的には企業と消費者はフラットでイーブンな関係であるべきではないでしょうか。

イーブンであれば、一定程度以上の信頼関係があれば情報提供に関してはかえってゆるくなるということも起きるはずです。ゆるい、というのは企業側が求める以上の情報を自ら開示してくれる、というイメージです。あるいは「私のことわかってくれているあなたが勧めてくれるんだから、疑わずに買いますよ」という態度も十分あり得ます。リアルの世界ではそういう関係性も多々見かけるかと思います。

企業とユーザーの関係性がこういう世界観になるようにしていきたいですよね・・・!

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