サードパーティCookie規制とは?マーケティングへの影響とゼロパーティデータ活用
「Cookie規制」や「ポストCookie」という言葉がマーケティング業界で騒がれています。この資料では、Cookieの基本からおさらいし、規制の内容とマーケティング活動への影響を整理して解説します。さらに、今後重要性が増すゼロパーティデータの活用についてお伝えします。
“ポストCookie時代”に、マーケターはどのように個人情報の扱いと向き合うべきなのでしょうか。ゼロパーティデータとはそもそも何か?どのように集め、どう活用すべきかを解説します。
「ユーザーの同意を得た1stパーティーデータ」と解釈され、ユーザーが自ら企業に提供する意図を持って提供するデータのことを指します。アメリカのリサーチ会社であるフォレスターが最初に提唱したとされますが、ざっと調べたところでは該当するレポートは2018年の10月に出された「Q&A:What Marketers Need To Know About Zero-Party Data」かと思います。
[ポイント]
このレポートを書いているKhatibloo氏、データ活用とプライバシーに関するレポートを他にも色々と出されているので、「ゼロパーティデータ」というコンセプトも基本的にはこの文脈でまずは捉えるのがよさそうです。
ヨーロッパで始まった個人情報保護に関する法律として有名なGDPRが実行に移されたのは2018年5月のことですから、このレポートはその約半年後に出されたということになります。
GDPR施行の後、ユーザーに許諾なくデータを収集することが厳しく制限される環境となり、サイト運営者であっても勝手にトラッキングデータを集めることが許されなくなりました。データ収集の許諾を求めるポップアップを表示し、同意をするという行為を明示的にユーザーに取ってもらうということが一般になっていきました。
テクノロジーが進化したことで、どこでどのようなデータが収集されているかわからないだけでなく、収集されたデータがどのようなネットワークを通じてどこに渡っていっているのか、どんなことに使われているのか、ユーザーが知るすべもない状態となってしまいました。
・・・というのは理屈ではわかるのですが、このあたり日本人的にはややピンとこない部分もあります。ユーザーの立場からすると、そこまで不都合ってあったっけ?・・・という気もしてきます。
アメリカの事情を眺めてみると、個人データの取り扱いを直接的にビジネスにしているデータブローカー、というカテゴリがあります。Acxiom社、Datalogix社などが巨大かつ有名で、2014年の記事ですが「名簿屋に未来はあるのか?データブローカーの役割と規制のあり方を考える」にある図表1がわかりやすく彼らのビジネス内容をまとめています。
要約すると
ということで、この記事のタイトルにもありますが日本人的な感覚でいうとまさに「名簿屋」で、名簿そのものを販売しているようなイメージです。
このようなことをビジネスにしている企業がアメリカでは上場していたりするのが面白いというか、マーケティングも奥深いなというかエグいなというか、そのような複雑な気分にはなりますが、ともかくもダイレクトに個人情報はビジネス資産として仕入れの対象になっている感じです。データブローカー大手もほとんどの世帯を押さえてますよとか、日々色々なところからデータを集めデータ鮮度を保っていますよということがビジネスの売りになってきます。
このような環境が背景にあると、オンライン上で収集されるデータもどうせロクなことに使われてないんだろうなとか、彼らの収入源になっているのだろうなということが前提になってくるのだろうと思います。
実際例えば2015年には、ACXIOM BECOMES AN AUDIENCE DATA PROVIDER IN FACEBOOK MARKETING PARTNER PROGRAM(ACXIOMがFACEBOOKマーケティングパートナープログラムのオーディエンスデータプロバイダーに)というリリースがこのAcxiom社から出されています。Facebookもまあ言ってみれば似たようなことをしてるんだろうということが想像がつきます。
オンライン上の行動までこのようなビジネスに利用されてるのか、となると、さすがに少し気持ち悪いというのは感覚的に腹落ちしやすくなりますよね。どんなページを見ているか、どんな写真あげてるのか、誰とつながってるのかなど、踏み込んでほしくない領域の内容も多々ありますし、それが堂々と(?)このような企業に渡り収入源化していること。確かに勘弁して欲しい。
だいぶ話が長くなりましたが、ゼロパーティデータという発想が出てくる背景には、このような話もあるということは一定踏まえておいたほうが良いように思います。
そりゃあGDPRが制定されるのも仕方ないよね、という側面があるということですね。
記事冒頭で「ユーザーの同意を得た1stパーティーデータ」がゼロパーティデータだ、という定義の話をしました。
企業が自分で集めたデータが1stパーティーデータなわけですが、このような文脈で考えていくと、ユーザーから収集したデータを何に使うのかということを明らかにした上で許諾を得て集めたデータを区別したくなるのはわかる気がします。
1stパーティーデータはもちろんこのような売買目的だけではなく、ユーザーにとってよい体験を生み出すためにも使えますし、実際そのような使い方をしている企業も多数あります。じゃあそこは明確に区別して、ユーザーにもわかるようにしていこう、ということでゼロパーティデータという名前をつけようじゃないか。フォレスターが言いたかったのはそういうことなんだろうと思います。
ですので、ゼロパーティデータの言葉の定義としては「ユーザーの同意を得た1stパーティーデータ」なのですが、取得したデータの使い方も実質的には規定していて、情報を提供したユーザーにとっても意味のある結果(顧客にとって価値を感じる何か)をお返しすることが求められることになります。
お返し、と言ってわかりやすく考えると、例えば誕生日を登録した場合、誕生日クーポンがもらえる、といった金銭的なインセンティブがあります。クーポンもらえるなら誕生日を登録しておこうかな、と思う方も多いですよね。
ただお返しが常に金銭的なものである必要はなく、体験の質が改善されるというようなことでもいいわけです。例えば子供の誕生日を入れておくと、その1ヶ月位前に「来月お子さん誕生日ですけど、ちゃんと準備できてますか?」など言ってくれると、僕みたいにできの悪い父親にとってはなんか気の利いた提案がきたな感が感じられます。
[ポイント]
サードパーティCookie規制とは? マーケティングへの影響とゼロパーティデータ活用
日本の場合、私たちSprocketが協業させていただいている、チーターデジタル社がゼロパーティデータをかなり前面に押し出しているのが目立っている感じがします。彼らは19年7月にWayin(ウェイン、と読むようです)という会社の買収を発表しました。
この時点でリリース文面にはゼロパーティデータ収集の意図で買収しているということが書かれており、Wayinもそのような企業だという説明がされています。なるほどそういう企業があったのか、と思いCrunchbase(スタートアップ企業のデータベースサイト)のWayin社のページを眺めてみると、説明としては「デジタルキャンペーンCMSプラットフォーム」と記載があります。
買収後にはCheetah Experiencesという名称のプロダクトとして提供されています。こちらに説明ページには、アンケート、クイズ、フォーム、投票、など多種多様なユーザーからのインプットが得られるウィジェットが用意されているのがわかります。
もともとデジタルキャンペーンCMSであることから、一見、このようなウィジェット経由でのデータ収集が必ずしも上記の文脈に沿ったデータ収集になっているのか?という疑問を持ちますが、意外にそこがミソな気がしてまして、キャンペーンCMSでしたというプラットフォームをゼロパーティデータ文脈で買収し打ち出しを一気に変えていくというチーターデジタルの戦略は、とても面白いなと思っています。
もしかして読者のみなさんには少し皮肉ってるような書き方に見えるかもしれないのですが、むしろ逆で、かなりコンセプトとして練っていない限りこうはいかないと思います。またもちろん、そもそもデータブローカー的なことはやらないという宣言・立ち位置の明確化でもあると思います。
ただ、こうしたウィジェットとい方法以外にもゼロパーティデータとして価値ある面白いデータのとり方は出来るではないかと思っており、そのヒントが接客や営業に多数見られます。
営業の場合、色々お客さんからヒアリングさせていただき、その内容を活かしお客さんの課題解決につながる提案を考える、ということを日常的に行いますが、このような「ヒアリングデータ」はまさにゼロパーティデータです。
実店舗での気の利いた販売員の場合、来店客のさりげない質問に対し、しっかりと応対してくれますが、あのような質問の答えもゼロパーティデータになるでしょう。
リアルの場合、普通にこのようなデータの収集は行われていて、営業や接客に有益だということは言うまでも有りません。加えてヒアリングされる側もなんとなく察知ができ、「あ、この人はちゃんと(自分にあった・最適な)提案してくれそうだな」と感じた場合熱心に答えようとしますが、そうでもないと適当に答えておしまいにしたくなります。
自分に役立つこと(有益な提案をしてくれるなど)をしてくれそうだから自らデータを提供しよう、ということになりますので、ゼロパーティデータの定義である「ユーザーの同意を得た1stパーティデータ」であり、なおかつ意味のある結果をお返しする意図で集めている・使っている、という本来の文脈にも合致することになります。
ですので、個人的にはゼロパーティデータの本質を外さないためには、このようなリアルの情景をイメージすると集め方や使い方にしても、本来の主旨からズレることはないのではと考えます。
整理をすると、下記の図のようになってくるかと思います。
縦軸の表現が悩みますが、「データの価値」としてみました。価値が高いデータがあればそれだけ使える幅が広くなり重要なデータとなる、というようなニュアンスです。
ただこうしたデータを入手するには事前にお客さんに一定の信頼をしていただいていることが必要となります。「回答すれば良い体験を提供してくれる」ことが期待できることから、お客さん側も金銭的なインセンティブがなくてもデータを提供してくれるのです。
[ポイント]
前述したように、ゼロパーティデータの種類は多岐にわたりますし、「ゼロパーティデータとしてこれを集めておけばいい」ということが事前に判明しているような性質のものでもありません。
ですから、会員属性情報のように固定的・静的なデータとして扱うのは難しいように思います。やりながら「こういうデータも取りたいな」を思いついたりということも頻繁に出てくるでしょうし、また基本的には「なにかお返しをする」ことが前提としてあるので、ユーザーに対して施策として当てられる・セグメントとして切れるデータとして蓄積することが出来なければなりません。
ツールとしては柔軟にデータを取り込めるCDP(カスタマーデータプラットフォーム)的なものが相性が良いでしょうし、実際にチーターデジタルもそれに相当する位置づけのツールを同時に提供を始めています。
もう1つ大事なことは、匿名の状態でも一定の蓄積をしておきたいという点です。店舗の販売員の場合、原則的にはほぼ匿名の状態で常に接客を行いますし、また仮にリピートされだしたとしても引き続き匿名のままということも当たり前だったります。
むしろ匿名状態のままでコミュニケーションを繰り返し、一定の信頼が得られてくると個人が特定できるような情報も開示してもらえるようになってくる、という順序がゼロパーティデータの蓄積としてはあるべき姿かと思います。
また、「どんなデータがゼロパーティデータか?」で紹介したようなデータのマップをご覧いただくと、データの安定性にかなり幅があることがわかると思います。氏名や住所のようなデータは時間が経過としてもほぼ変わらないデータとして取り扱えますが、接客質問への回答のように、その時の状態や気分によって答えが変わりそうなデータもあります。例えば同じ人でも、「今日は何をお探しですか?」と聞かれて、母の日の前にプレゼントとして何が良いかを探している場合もあれば、自分用にと探している場合もあります。
ゼロパーティデータは、このように事前に定義などを取り決めることが難しいため、蓄積する仕組みも柔軟である必要があります。
[ポイント]
これまで見てきたように、ゼロパーティデータはユーザーの意図的な回答として集めることになります。ですから回答を促す企業側の何かしらの投げかけについて、
この2つを高めることが大切です。
「収集性」とは回答がどの程度収集しやすいかを指します。収集性を左右する要素としては、
のさらに2つに分解できます。
手間がかかれば収集性は下がります。お返しがイメージしやすければ収集性は上がります。
「適切性」とは回答内容と回答者の実態がずれていないということを指します。診断や接客、クイズにおいても、いい加減に回答しても、しっかりと答えても結果が変わらないのであれば、適切に回答してもらえる度合いは低くなります。また、いい加減に答えた事が相手にわかるかどうかも適切性を左右します。
投票やクイズ、アンケート、診断などは回答の収集性を高める仕掛けです。回答に対し何かしらのインセンティブを用意しておくとさらに収集性を上げることが出来ます。
インセンティブは、ポイントやクーポンの付与、回答者の中からの抽選プレゼントなどの金銭的なものがわかりやすく収集性を高める効果があります。ただこうしたインセンティブは必ずしも回答の適切性を高める効果があるわけではありません。
投票やクイズなど、自分が答えると答えがわかる、他の人の回答がわかる、など答えた後に結果がわかるような集め方は、適切性を落とさずに収集性を高めます。また、診断のように適切に答えないと知りたい結果が得られないことが明白な場合も、適切性を落とさずに収集性を高める仕掛けと言えます。
たとえば最近ですと、Zoomを使ったウェビナーに参加すると、ときどき「投票」を求められることがありますね。回答してしばらくすると講演者側から結果が公開されます。講演者の促しが上手だと回答率が上がりますが、結果が公開されることも参加者側で大体わかっているので、じゃあ自分も答えようかなということになりやすい。
講演者も上手な慣れた方は、回答内容を踏まえプレゼンを工夫したりといったことにリアルタイムで対応してきます。参加者の関心の度合いや方向性がわかると、同時にウェビナー終了後のコミュニケーションも組み立てやすくなります。
人間がヒアリングをする場合も、状況によって投げかけ方が変わります。誠実な営業マンが「適切な提案をするためにしっかりヒアリングをさせてください」と言えば、多少手間がかかっても適切に答えようとするでしょう。
逆に、店舗の販売員が入店直後に「今日は何をお探しですか?」と聞いてきても「いやまだ何も見てないし」とお客さんが引いてしまうこともあれば、一方ですでに関係性が出来ている場合にはスムーズに答えてくれることもあるでしょう。
ゼロパーティデータの面白いところは、この単語の登場の文脈から考えても、聞く側と答える側の信頼関係がこの収集性・適切性を大きく左右するという点にあると思います。どのような手段でどのような聞き方をしても、信頼関係があればうまく集められますし、なければよいゼロパーティデータを集めることは難しくなります。
[ポイント]
以下の2つを高めることが大切である。聞く側と答える側の信頼関係がこれらを大きく左右する
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最後に、集めたゼロパーティデータをどのように活用するかを考えていきましょう。もちろんすでに繰り返し説明してきているように、原則的にはユーザーに何かしらのお返しをするために活用することになります。
度合いが色々ありますが、整理すると
このあたりはお返しが明確です。
ただ企業としては、
というようなお返しを明確にしづらいけれど答えて欲しい事柄もあります。このようなゼロパーティデータは収集性も適切性も低くなりますので、もともと一定以上の信頼関係が構築できているユーザ(ロイヤリティが高い)を対象とすることになります。
多少時間が開いても「データはこのように使い、結果この様になった」ということを伝えるだけでもお返しとして実感してもらいやすくなるので、忘れずにコミュニケーションを取るようにしておきましょう。
いずれにしても、信頼関係を築いていくためには、収集したゼロパーティデータがちゃんと使われているということがお返しの中で伝わることが大切になります。
これらは逆に言うと、活用のアテのないゼロパーティデータは原則的に収集するべきではない、ということにもなります。会員登録時など「マーケティングに使えるからとりあえず取っておこう」という発想で様々な属性情報を入れてもらいたくなりますが、これは信頼の構築という点ではマイナスに働きやすくなります。
[ポイント]
本記事ではゼロパーティデータという概念について、どのような性質のものでどのような活用を考えていくべきかということについて解説してきました。
ただ、まだまだ事例が多くない段階です。集め方と活用の仕方には洗練の余地が多々あると思いますのでまた面白い事例があればこちらに追記していきたいと思います。
ユーザーとの信頼関係を作っていくことがマーケティングだけでなく、企業活動として最重要テーマになりつつある現状、ユーザの同意を得たデータであるゼロパーティデータの活用が重要になるのは必然かと思います。
我々Sprocketとしても接客的なコミュニケーションの観点から自然にこうしたデータを集めたり活用することが多くなりますので、面白い事例を自ら作っていけるように模索していきたいと思います。
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サードパーティCookie規制とは?マーケティングへの影響とゼロパーティデータ活用
「Cookie規制」や「ポストCookie」という言葉がマーケティング業界で騒がれています。この資料では、Cookieの基本からおさらいし、規制の内容とマーケティング活動への影響を整理して解説します。さらに、今後重要性が増すゼロパーティデータの活用についてお伝えします。
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