いま作るべき顧客体験とは

マーケティング

深田 浩嗣

リブランディングの件で、僕らなりに試行錯誤を繰り返して新しい性質の体験を作ってきたと書きました。割とこれまで無我夢中でやってきたのですが、あらためて現在のオンラインの顧客体験を踏まえ、どのようなことをやってきたかを整理してみたいと思います。

最近、深田自身も講演の機会があればよく使っているのが下記の図。

図:PCでのWeb接触の前提はスマホ時代には成立しない。

Webの作り方は、この20年くらいずっと変わらない前提をもとに作られてきているのではないでしょうか。
それは「ユーザーは自分で探すものである」という前提です。DIY、Do It Yourself的といいますか、とりあえず情報を置いておけば、あるいは検索できるようにしておけば、自分でいいようにユーザーは情報を探すだろう、という暗黙の前提があって、それに沿ってWebというものは作られてきていて、いまだにそこが変わっていない。

確かに20年前にWebが出てきた当初はその前提で良かったんだと思います。
むしろ、物理的な制限がなく無限に情報を置くことができる。多少読む人が少なくても、興味を持つ人が少なくても、置いておくことのコストがとても低いので、とりあえず置いておけば良い。検索性が高ければ、自分で探して見つけるだろう。
「ロングテール」という言葉がWebを特徴づける言葉として当時登場したのは、この前提の象徴だったと思います。

CX Issues Encountered When Seeking Information on Mobile Websites
(「Improve the Customer Experience Through Better Mobile Support by: Craig Borowski」より転載)

パソコンはある程度の画面サイズがあり、机の上で落ち着いて見ますし、Web誕生当時からしばらくは一定のリテラシーが求められた分、情報感度や情報収集意欲が高いユーザーが(少なくとも今と比べると)多かったので、この前提で良かったのでしょう。

ただ2019年の現在、もはやWebのアクセスはスマホに主役が移り変わりました。情報接触のシーンも、机の上に限られなくなりました。人口の大部分の人が使うようになり、広告費もTVに迫るようになった現状、リテラシーや情報感度の水準も様変わりしています。

端的に言えば、小さい画面、「ながら」見の常態化、ユーザーの大衆化といった変化を踏まえた情報接触体験をデザインしていく必要がある。
もはや「情報を置いておけば自分で探してくれる」という前提が成り立っていない。そう考えるべきではないかと思います。

さらに言えば、「無限に情報を置ける」ということから、Web上の情報は増える一方であり、特定のサイトを見てもほぼ減ることがありません。
言ってみれば、巨大なショッピングモールに放りこまれたユーザーが、自分がどこにいるかもあまりわからず、周辺を少し見渡して求める情報や商品がなければ諦めてすぐに帰ってしまう。そんな体験が日常化しているのがいまのWebではないでしょうか。

図:スマホの情報接触の前提は「ながら」「小画面」にプラスして「情報過多」。

このような前提の置き換えをしてみたときに、いま作るべき体験とはどのようなものか。ユーザーの目の前の棚をパーソナライズすることでしょうか。ちょっと違うような気がします。
そもそも何を探しに来たのか。どこに何があるのか。どういう探し方をすれば良いのか。もっと手前のところからコミュニケーションを組み立てていかないといけないのではないでしょうか。

リアルの世界でこの役割を果たしているのは、例えばお店のスタッフである店員さんです。僕らが接客的なコミュニケーションに着目しているのは、こういうふうに考えているからです。

店員さんは、探すことをサポートしてくれるだけではありません。ユーザーがなにか困っていないかを常に観察しています。
必要とあれば自ら声をかけます。購入などの意思決定に妨げとなる材料を察知して、どうすればそれを取り除けるかを考えます。買ったあとも安心感を与えられるように振る舞います。

図:実店舗の店員とWeb接客の比較。

いずれも、まだデジタルではほとんど表現されていない種類のコミュニケーションではないでしょうか。

デキる店員さんであればあるほど、ユーザーが自分からすべてを考えて、探して、組み立てなくても、商品のプロとして或いはユーザーへの気遣いとして役に立てることを見つけ出し、提案することができます。それは必ずしも商品のレコメンドでもなく、ましてや割引の提案でもないことでしょう。

こう考えると作るべき体験もイメージが湧きやすくなるのではないでしょうか。

(つづきはまた今度!)

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