訪問者のコンバージョン率を上げるべく施策に取り組むことをコンバージョン率最適化、またはCRO(Conversion Rate Optimization)といいます。この資料では、コンバージョン率を上げていくために必要な前提知識や考え方を解説します。
【連載第8回】資料請求、体験/来場予約系サイトのKPIツリー
売り上げがKGIにならないサイトのKPIツリーとして、資料請求・体験/来場予約系サイトを取り上げます。このタイプのサイトは、サイト内でビジネスが完結しない点がECサイトや予約系サイトとは大きく異なります。
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資料請求、体験/来場予約系サイトの特徴
資料請求系のサイトのKPIツリーは、単品系ECサイトや月額課金系サイトにおける「無料トライアル申し込み」「無料会員登録」の部分までを切り出したような形態です。
資料請求や体験/来場予約といった行動は、そのサービスに対して一定以上の関心を示す行動ではあるものの、たいていは金銭の支払いを伴うほどの強い意思決定を必要としません。ビジネス主体から見ても、資料請求や体験予約は「中間コンバージョン行動」であり、本来のコンバージョン行動を資料請求や来店のあとに起こしてもらう必要があります。
このため、サイト内でのコンバージョン行動である資料請求や体験予約という成果に対しては、その数だけでなく、「本来のコンバージョン行動につなげやすいかどうか」という「質の高さ」も求められることになります。
資料請求系サイトとしてのKPIツリー構築において、コンバージョンの質の要素をどこまで取り入れるかはビジネスの状況に応じて考えていくことになります。
また本契約を他部門で対応する渇合は、資料請求者の情報を引き渡せるようにすれば、その質の高低のフィードパックを得やすくなります。
資料請求数や体験予約数がKGI
このタイプのサイトでは、資料請求数や体験予約数がKGIになります。これまで見てきたサイトのKGIはビジネス上のKGIと同じ「売り上げ」でしたが、今回は異なるので注意が必要です。
「サイト内KGI」とその上位にある「ビジネスKGI」を分けて考えたときに、ビジネスKGI を仮に実獲得数とすると、図のように分解できます。したがってここでの問題は、「獲得率をサイト内KGI にどのように織り込めるか」になります。
サイト外での獲得率を考慮する場合
獲得率を考える際によくあるパターンを2つ挙げてみましょう。
- ①資料請求したユーザーの質によらず、一定の率で獲得できる
- ②資料請求したユーザーの質で獲得率が大きく変わる
さらに、①については次の2つに分かれます。
- ①-1 構造上、サイト内でスクリーニングされた訪問者しか資料請求行動をとらないため、資料請求行動からの獲得率に大きな変動がない場合
- ①-2 獲得率を決定する要因が、資料請求者に対するサイト外でのビジネス活動にほぼ依存している場合
①の場合、①-1、①-2のいずれも獲得率の概念をKGIに織り込む必要はありません。資料請求数や来店予約数をそのまま見ていきましょう。
問題は②の場合です. どんなときに獲得率が変わるのか、獲得活動を実施する他部門(他社)のメンバーと密に協議し、サイト運営者としてコントロールできる要因を見つけましょう。KGIをKPIに分解する際は、ここが重要なポイントになります。
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KPI は訪問者と資料請求率に分解
まずKGI を分解すると、次のようになります。
資料請求数 = 訪問者数 ✕ 資料請求率
単品系ECサイトなどと同様に、訪問者数は流入元で分解できます。この種の資料請求系サイトは原則として1 回のコンバージョン行動で完結するため、コンバージョン行動にリピートの概念はありません。ただし、サイトへの訪問回数が資料請求率に影響を与えている場合は(数
回の訪問後に資料請求を行うなど)、訪問回数で分解するのも有効です。
さらに、資料請求率に影響を与える行動がほかにあるかも考えてみましょう。特定のコンテンツや特定の機能を利用したかどうかが影響しているケースもあります。例えば、生命保険では「契約後の支払い額のシミュレーションの実施」、体験エステの来店予約では「来店する際の店舗の地図検索」などが中間コンバージョン行動としてよく使われます。
「資料請求の質の高さ」を織り込みたいときは、近年多くの企業が導入しているマーケティングオートメーション(MA)ツールを使うことが考えられます。MAツールを使えば特定の行動に対してスコアを設定できるので、訪問者ごとに行動に応じたスコアをつけられます。するとこのスコアの値を使って資料請求率を分解できます。できればここは、サイト外のビジネス活動とうまく連携し、「スコアが高い訪問者の資料請求は獲得率が高い」となるようにスコアリングのルールを作り込みたいところです。ここまでできれば、獲得率をサイト内KGIに織り込めます。
つまり、「一定のスコア以上にある訪問者が行った資料請求だけを資料請求数としてカウン卜する」「資料請求のスコア数の合計値をKGIとする」といった具合です。
なお、ECサイトにつきものの「力一卜離脱」は資料請求系サイトでも発生します。申し込みの入力フォームでの離脱は意外に多いので、分解時に押さえておきましょう。
事例研究:保険商品の資料請求
KPIツリーの分解例として、ある保険金社で保険商品の資料請求を増やすために取り組んだ事例を紹介します。このサイトの場合、保険料金のシミュレーションを行ったかどうかで、資料請求後の申し込み率に大きな差が見られたので、まずはそこで図のように分解します。
分解後の「訪問者数 ✕ シミュレーション非実施率 ✕ 資料請求率」の部分は実獲得率が低い資料請求行動とみなせるので、これ以上分解しないこととしました。
サイト訪問者のうち、特定のキーワードからの流入者は、シミュレーション実施率や資料請求率が高く、事実上「指名買い」と考えられました。
したがってそれ以外の流入元の訪問者にフォーカスし、図のように分解していきます。さらに指名買いでない訪問者に対しては商品や保険についての理解を深めてもらうと良いということがデータからもわかったので、そのための特定のコンテンツの閲覧でさらに分解します。
指名買いの訪問者に対してはフォーム離脱が資料請求に直結していることがわかったので、そのように分解していきましょう。
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まとめ
- 資料請求、体験/来場予約系サイトは、サイト外にビジネス上の真のコンバージョンがあることが特徴
- KGIはサイト内で計測できる資料請求数や体験予約数がよい
- サイト外での獲得率が一定ではなく、その考慮が必要な場合は、連携する部署との密な相談が必要
- KPIは訪問者と資料請求率に分解する
資料請求系サイトでの分解の方法は多数あります。流入元、訪問回数、特定のコンテンツや特定の機能を利用したかどうかなど、改善の糸口を発見するために、いろいろなセグメントを検討してみることが重要です。
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▼連載:いちばんやさしいコンバージョン最適化のコツ 記事一覧
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