【連載第6回】単品系ECサイトのKPIツリー

マーケティングノウハウ

深田 浩嗣

実際にKPIツリーがどのようになるか、事例を見ながら紹介します。あなたが運営しているサイトとタイプが異なっていても、考えかたとして共通する部分があると思います。今回はシンプルで分かりやすい「単品系ECサイト」について説明し、健康食品ECサイトの事例を紹介します。

この記事の目次

「単品系ECサイト」の特徴

単品系ECサイトのKPIツリーを考える際に重要な特徴は、「トライアルの商材や定期購入の商材を用意していること」です。つまり企業側としては最初に買って欲しい商品と次に買ってほしい商品が決まっていることになります。

トライアル商材と謳われている商材がなくても、特定の商品が事実上は最初に購入してほしい商品になっている場合も同様に考えられます。例えば化粧品系の商材であれば、一般に同一ブランドでもメイク系より基礎化粧品系のほうが購入のハードルが高い(ほかの製品への置き換えがおきにくい)ため、メイク系商品が事実上の初回購入用の商材として位置づけられます。

こうした特徴により、単品系ECサイトでは、訪問者のコンバージョン行動のプロセスは直線的なものになると考えればいいでしょう。

<単品系サイトのコンパージョン行動のプロセスは「直線的」>

単品系ECサイトのKGIは「売り上げ」

単品系ECサイトのこのような特徴を踏まえて、KPIツリーを考えてみましょう。

KGI はシンプルに「売り上げ」でいいでしょう。売り上げや利益の構成によっては、定期購入者の数や特定の商品を購入した人の数をKGIとするケースもあります。これは「定期購入者の増加が売り上げにもっとも寄与する」という仮説の精度が高く、疑う余地が極めて少ない場合に成り立ちます。ただし気をつけたいのは、これが「隠れた仮説」になってしまうと、中長期的に見て打つべき施策が手遅れになる危険性があることです。

ちなみに、会社の意思として「売り上げよりも定期購入者数を重視する!」という方針がある場合は、迷わず定期購入者の数をKGIとして採用してください。

定期購入者の数をKGIにする場合に注意したい
「隠れた仮説」とは?

本来は売り上げがKGI であるにもかかわらず、売上構成比が高いなどの理由で、定期購入者数をKGI とすると、「売上構成の多くを(初回購入よりも)定期購入が占めている」という仮説がKPIツリーから見えなくなってしまいます。これが「隠れた仮説」です。隠れた仮説が怖いのは、その仮説があまりにも当たり前で誰も疑わない状態になってしまうことです。こうなると、例えば事業環境変化などにより、もはやその仮説が成立しなくなっている状況になっていたとしても、誰もそれに気づかないという罠に陥りかねません。

上記の例に当てはめてみると、もし定期購入の商材の商品力がすでに低下していて、定期購入者が減少傾向にあるとしたときに、「定期購入以外の要因で売り上げを増やす」という施策案が生まれにくくなります。

特に長い時間軸で見たときに、隠れた仮説自体が成立しなくなることがあるので原則として「当たり前」のことであっても仮説としてKPIツリー上には表現しておくことをおすすめします。

売り上げ(KGI)からKPIに分解する

売り上げをKGIとしたときに、コンバージョン行動に至るまでのプロセスは、図のように「初回購入」「定期購入」「定期購入の継続」の3段階に分解できます。継続率を解約率としている場合も、解約率の算出は「解約率=100%−継続率」となるので分解上はどちらを使っても同じです。

<売り上げの分解例>

KPI をさらに分解していこう

コンバージョン最適化を考えるうえでは、ここからさらに分解を進めましょう。例えば、訪問者を流入元で足し算分解して流入元別に購入率を見てみると、効果の高い広告媒体などが見えてきます。

サイト訪問後の行動で掛け算分解してみることも考えられます。例えば「初回購入率」はランディングページ以降の初回購入までの行動プロセスで分解できます。購入までのプロセスのなかでは「カート投入後の離脱率」もよく見られるKPI です(カート離脱率などと言います) 。

カートに投入する前であれば、ランディングページで離脱を表す直帰率をKPIとすることもあります。またデータ分析の結果、特定ページの閲覧が初回購入率に効いていることがわかると、そのページの閲覧率をKPIにできます。

初回購入から定期購入への「引き上げ率」や継続率には商品自体の良し悪しも大きく影響しますが、それでも分解を考える余地があります。定期購入のメリットを知らない訪問者、あるいは定期配送の期間変更や休止ができることを知らない訪問者にうまく気づきを与えれば改善できるかもしれません。その場合はその内容を説明したコンテンツページの閲覧率をKPI としてみてください。

ただ、「注文単価」を指すKPIについては、商品点数が少ないと改善のためにできることはあまりないかもしれません。その場合、ツリーのなかに書いておきつつも「コントロールが困難なKPI」としてそれ以上は分解せずにおきましょう。

事例研究:ある健康食品ECサイトにおけるKGI/KPIの分解例

ある健康食品を販売しているECサイトでは、実質商品が1 つしかなく、その「お試しパック」「通常パック」「通常パックの定期購入」という3種類の商材を用意しています。商品力には自信をもっており、お試しパックを購入した訪問者の50パーセントが定期購入することが過去のデータからわかっています。

このサイトに本記事で示した分解をあてはめてみましよう。引き上げ率は十分な水準にあるのでこれ以上の分解はいったん行わずにおき、1 人あたりの注文単価も実質固定なので、まずはユーザーセグメント別の初回購入率と継続率を分解の対象にするといいでしょう。

このサイトでは、電話でしか解約を申し込めないため、ECサイト側で解約率を計測しづらく、またコントロールもしにくいため、解約率は深掘りしないことにして、初回購入率をより深く見ていくことにしました。

まずは未購入の訪問者を流入元で足し算分解し、広告経由の訪問者は広告別にカート投入後の離脱率を調べることにしました。さらに、自然流入による訪問者に対しては、商品の特徴や効果を訴求するコンテンツの閲覧率をチェックしていきます。

前者の分解では、どの広告が効くのかを見るとともに、カート投入後の離脱を防げないかを見ることになります。後者の分解では、どのようなコンテンツが初回購入率に効いているのかを見ていくことで、KPI ツリーを作っていくことになります。このくらいまで分解していくと、施策のアイディアにつながりやすくなります。

まとめ

単品系ECサイトの訪問者のコンバージョン行動のプロセスは直線的です。まずはその流れを分解した上で、分解した各プロセス内でCV改善の糸口になるKPIを検討しましょう。

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