「退職します」の2つのパターン ? その退職は逃げではないのか?

働き方

イメージ:辞職のあいさつをするイメージの写真

経営の立場で仕事をしていると、避けられないのは「人」の話、進退に関わる話です。まずは採用するのかどうか。採用したら、評価をどうしていくのか。その後、人によっては辞める/辞めないの話。いずれもヘビーな話なんですが、特にヘビーなのは、悪い評価の話をする場合と、退職の話をする場合です。

悪い評価の場合、評価をしているのは主に上長あるいは経営の側であることが多いので、話の主導権は基本的にこちらにあります。

ヘビーですが、比較的話は組み立てやすい。なるべく客観的な材料を元に話をすること、本人としては納得しづらいであろうポイントがどこかということ、何を伝えて「悪い評価」をどういうものとして受け止めてもらいたいのかということ、こうしたことを踏まえて話を組み立てていけば、ヘビーではあるものの事前の準備がちゃんと出来ます。

一方で、退職の話。

特にメンバー側から持ちかけられる場合、退職を考えているという段階だったり、転職先を既に見つけているという段階だったり、退職に向けての状況がいくつかあります。

ただ大きく分けるとメンバーから持ち掛けてくる場合、2種類のパターンがあります。僕はこれを「ポジティブ退職」と「ネガティブ退職」と呼んでいます。

ポジティブ退職は、こちらも応援できる理由での転職の場合。プロジェクトの区切りがうまくつけられた、自分としても次の段階に行きたい、プライベートで人生の転機を迎えた、といったような理由です。

そして、ネガティブ退職の場合。

こちらは基本的に引き止めます。決心が固くて話を聞くことはないだろうなと思っても引き止めます。転職をすべきでない、と思うからです。

ネガティブ退職というのは、僕の目から見て、自分自身の中に要因があるのに周囲のせいにしている場合です。「僕の目から見て」ということなので間違っている場合もあるかもしれないのですが、やっぱり「この転職は本人のためにならないな」と思えば、その事実を言わざるを得ません。

難しいのは引き止めるときに、「会社都合・事業都合で退職して欲しくない」という気持ちと重なることが往々にしてあることです。この線引を自分の中でちゃんとして話をしないと、なんだか言葉にウソが混じっているような感じになって、力がこもらなくなってしまいます。

その線引をうまくできたとして、環境のせいにしている場合、なぜ引き止めるかと言えば、次の転職先でも同じことを繰り返してしまうからです。

ネガティブ退職を考える時、本人としても何かしらの行き詰まり感を感じていることが多いです。その行き詰まっている理由は、「上司がわかってくれない」「チームメンバーとの相性が悪い」「方向性が違っていると思う」などなど、色々あります。

自分自身の中に要因があるのに、そこに向き合わずに、環境のせいにしていると、何かうまくいかなかったときにまた同じことが起きます。

「伝える努力をほとんどしておらず、言わずともわかってくれるものだと思い込んでいる」「声を上げれば変えられる部分があるはずなのに、そもそもそうした行動を取っていない」などなど。

カベを自分なりにどうやって乗り越えるか、という話なんですね。そして、仕事をしていれば乗り越えるべきカベはどこかで必ず出てきますので、乗り越えずに逃げるという選択をしていると、いつまでも先に進めない。

行き詰まりの内容は様々ですが、大体において本人も自分に要因があることに薄々気付いています。でも自分にとって見たくない部分なので普段あまり見ないようにしている。指摘すると結構ショック、という表情をしていることもあります。

自分に要因があることを指摘するのは僕としても正直かなりエネルギーがいる話ですし、結局引き止められず転職する選択をして、結果が変わらないことも多いです。

あくまで僕から見て逃げているという印象を強く受けるので伝えているので、ひょっとしたら妥当でないことを言っている場合もあるのかもしれません。環境を変えるほうが結果として良かった、ということもあるだろうと思います。

だけど、要因を指摘するかどうかはかなり悩んできた中で、自分が本人のためになると信じられることで、伝えられることがあるのであれば、それは伝えよう、というのが今の僕の結論です。

おせっかいなのか、ある種の責任感なのか、自分が言ってすっきりしたいだけなのか、理由は必ずしも明確じゃないんですが、どうもやっぱり言ったほうがいいなと思っています。

退職、転職を考えた時に、その転職がカベから逃げるだけのネガティブ退職ではないのか。問いなおしてみると、まだ今の会社でできることがあることに気づくかもしれません。

追記:

環境を変えることが重要だ!という意見も最近よく耳にしますし、あるいはカベは乗り越えなきゃいけないものだというのは強者の論理だという話もあるでしょう。なのでこれは一般論というよりは僕自身の価値観の話です。振り返ると良くも悪くもこういう価値観にそれほど違和感を感じない人と長く一緒にやっていっているんだろうと思います。

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