分析に使っている時間を顧客を知る時間に。Sprocketが「分析レシピ」を作った理由

AISprocket

Sprocket編集部

頭の中の分析手順を、誰でも使えるレシピに

「F2転換率を出しておいて」と頼まれて、どのデータをどう集計すればよいのかわからず手が止まったことはないでしょうか。

Sprocketで分析事業を統括している寺本です。Sprocketのデータ分析エージェントには「分析レシピ」という機能があります。F2転換分析やファネル分析のように、私たちが企業のマーケティングを支援する中で何度も繰り返してきた分析の手順をあらかじめ組み立てておき、レシピを選んで対象を指定すれば、数字と打ち手、報告用のスライドまで出せるようにしたものです。

この機能を作った理由は、分析の手順が詳しい人の頭の中にしかなく、ほかの人が同じ分析をできずに止まってしまう場面を、支援先の企業でも社内でも何度も見てきたからです。そして、手順を組み立てることに使われている時間を、顧客を理解して施策を考えることに使ってほしいと考えたからです。

この記事では、分析の手がどこで止まるのか、手順を固定すると何が変わるのかを、分析レシピを使うかどうかにかかわらず役立つ形で書きます。汎用の生成AIに分析を任せたときに起きる問題は、前回の記事で書きましたので、あわせてお読みください。

分析の手が止まるのはどこか

ECサイトの運用担当者の1週間は、キャンペーンページの企画や制作やメルマガ・SNSの配信などで埋まりがちです。その合間に、管理画面から先週の数字をコピーしてスプレッドシートに貼り付け、定例の資料を作ります。支援先の企業の担当者からも、毎週同じことの繰り返しで、生み出すもののない作業だという声をよく聞きます。

そこへ上司から「初回購入した人がどれくらい2回目を買っているか、F2転換率を出しておいて」と頼まれたとします。F2転換という言葉は知っていても、手を動かそうとするとわからないことが次々に出てきます。初回購入から何日以内の2回目を数えればよいのか。購買データはどこにあって、サイトの行動データとどうつなげればよいのか。新規で来た人とキャンペーンで来た人は分けて見るべきなのか。調べながらなんとか数字を出しても、それが正しいのかを確かめる方法がありません。翌月にもう一度出そうとすると、先月どう計算したかを思い出すところから始まります。

詳しい人に聞けば早いのですが、そういう人ほど忙しいものです。分析の専門チームを社内に持っていても、依頼は優先度順に処理されるため、順番が回ってくるまで施策が止まることがあります。

こうした場面で手が止まる原因は、担当者のスキルの不足でも、詳しい人の数の不足でもないと私は考えています。分析の手順や指標の組み立て方が、スキルの高いメンバーの頭の中にしか存在しないことが原因です。手順が頭の中にしかなければ、その人が忙しいときには止まり、異動や退職があれば消えてしまいます。

手順を自分で組み立てる作業はもったいない

手順のわからない分析を自力で組み立てれば、身に付くこともあります。それでも私がもったいないと言うのは、その間、担当者が本来やるべきことに手が回らなくなるからです。本来やるべきことは、事業成長につながる活動であり、そのために顧客を理解し、そこから施策を考えることです。

社内にデータがあっても、上司から「顧客を理解した上でキャンペーンを設計して」と言われて、すぐに動ける担当者は多くありません。数字を出すところで時間を使い切り、その数字が自社の顧客について何を語っているのかを考える前に、次の締め切りが来てしまうからです。F2転換率が出たところで、2回目を買わなかった人がなぜ買わなかったのかを考える時間が残っていなければ、次の施策は決まりません。

料理にたとえると、毎回レシピなしで同じ味を再現しようとしている状態です。シェフの頭の中にしかない味は、シェフが休んだ日には出せず、同じシェフでも日によって出来が揺れます。レシピに書き出してあれば、誰が作っても同じ味に近づき、シェフは次の季節のメニューを考える時間を持てます。

分析も、手順を頭の外に出して固定すると、時間が空きます。Sprocket社内の実測では、私やカスタマーサクセスのメンバーがGoogleアナリティクス 4(GA4)や社内分析ツールで2時間ほどかけて組み立てていた分析が、レシピにした後は5分ほどで終わるようになりました。ただ、時間が縮んだことより、誰がやっても同じ手順で同じ数字が出るようになったことのほうが、現場では意味があると感じています。

分析レシピでできること

分析レシピには、「共通のレシピ」と「わたしのレシピ」の2種類があります。

共通のレシピは、Sprocketが創業以来10年以上CX改善を支援してきた中で、繰り返し行ってきた分析を誰でも実行できる形にしたものです。16万回を超えるA/Bテストをはじめとする施策の試行錯誤から、頻出する分析を選んでレシピにしました。業界を問わず使えるもの、EC向け、申し込み型のサイト向けなど、業界や目的に合わせて用意しています。例えば「初回購入者のF2転換の要因を見極める」「LTVスコアでロイヤル顧客を特定する」「毎週のサイト定点観測レポート」といったレシピがあります。

レシピを選んで対象を指定すると、数字だけでなく、その数字から言える打ち手と報告用のスライドまで出力されます。F2転換のレシピなら、2回目の購入につながった人の割合と、そこまでの日数が出ます。その上で、購入後何日目に再訪を後押しするとよいかという施策の案まで示されます。冒頭の「F2転換率を出しておいて」に、その日のうちに施策の案を添えて答えられるわけです。

<p>「F2転換率を出しておいて」と頼まれて、どのデータをどう集計すればよいのかわからず手が止まったことはないでしょうか。</p> <p>★ここに画像挿入★</p> <p>Sprocketで分析事業を統括している寺本です。<a href="https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000225.000032195.html" target="_blank">Sprocketのデータ分析エージェントには「分析レシピ」という機能</a>があります。F2転換分析やファネル分析のように、私たちが企業のマーケティングを支援する中で何度も繰り返してきた分析の手順をあらかじめ組み立てておき、レシピを選んで対象を指定すれば、<mark>数字と打ち手、報告用のスライドまで出せるようにしたもの</mark>です。</p> <p>この機能を作った理由は、分析の手順が詳しい人の頭の中にしかなく、ほかの人が同じ分析をできずに止まってしまう場面を、支援先の企業でも社内でも何度も見てきたからです。そして、手順を組み立てることに使われている時間を、顧客を理解して施策を考えることに使ってほしいと考えたからです。</p> <p>この記事では、分析の手がどこで止まるのか、手順を固定すると何が変わるのかを、分析レシピを使うかどうかにかかわらず役立つ形で書きます。汎用の生成AIに分析を任せたときに起きる問題は、<a href="https://www.sprocket.bz/blog/20261009-DAGA4.html">前回の記事</a>で書きましたので、あわせてお読みください。</p>

「F2転換」分析レシピの出力イメージ(デモデータ)

わたしのレシピは、自分で行った分析を保存しておき、次からは日付などの条件を変えるだけで同じ指標の分析を再実行できる機能です。保存したレシピは最初は自分だけが使え、組織で共有するかどうかを自分で選べます。毎月の定点観測のように、同じ手順を繰り返す分析ほど効果が大きくなります。

使うために必要なデータは、Sprocketのタグで取得したWebサイトの行動ログの他、様々なデータをレシピに組み込むことができます。例えば、F2転換とカート投入率のレシピは購買データを、コホートのレシピは会員データを、それぞれ自社のシステムから連携することで、より事業実態に近い分析結果が得られるようになります。

分析の属人化を解消するために、ダッシュボードを整備したり、専門チームを作ったりする会社もあります。私は、それだけでは属人化は解消しないと考えています。ダッシュボードは数字を見て終わりになりやすく、次に何をするかまでは教えてくれません。専門チームは、依頼が集中した時点で待ちが生まれます。汎用の生成AIは、使う人の指示の出し方によって結果が変わります。分析レシピは、手順を固定した上で、数字から言える打ち手まで出すところが、これらとは違います。

分析レシピが引き受ける範囲は広がっていく

分析には、手順を固定しやすいものと、固定するのが難しいものがあります。毎週の定点観測のような定型の分析は、手順を決めやすい分析です。

顧客を優良度で分けるような分析は、その企業の商品や顧客の事情を踏まえて数字を読み解く必要があり、難しさが一段上がります。

その先には、マーケティング戦略や事業企画といった、より上流の判断があります。分析レシピは、定型の分析から始めて、企業ごとの事情を踏まえた分析、さらに戦略や企画を支える領域へと、段階的に対応する範囲を広げていく計画です。

範囲が広がっても、出てきた数字から顧客を理解し、施策を決めるのは担当者です。分析レシピは、そのための時間と材料を、担当者の手元に戻していきます。

考えるべきは数字が出たあとのこと

分析レシピを使うかどうかにかかわらず、一度試していただきたいことがあります。毎週や毎月繰り返している集計を書き出し、手順が毎回同じものと、毎回考えなければならないものに分けてみてください。

手順が毎回同じものは、テンプレートにする、手順書に残す、ツールに任せるといった形で、人の頭の外に出せます。毎回考えなければならないのは、多くの場合、数字が出た後の「なぜこの人は2回目を買わなかったのか」「次に何を届ければよいのか」のほうです。書き出してみると、手順を組み立てることに使っている時間の長さと、顧客について考えている時間の短さに気づくかもしれません。その差を埋めることが、分析を施策につなげる一番の近道だと私は考えています。

分析レシピは今もレシピが増え、できることが広がっています。このブログでは、その進化の様子をできるだけリアルタイムにお伝えしていきます。それぞれのレシピが現場のどんな問いに答えるのかも、順に紹介する予定です。ぜひこのブログをブックマークしてお待ちください。

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