現状維持バイアスに陥る心理とは?対策やマーケティングとの関係を解説

心理学

Sprocket編集部

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現状維持バイアスは、プラスに作用することもあればマイナスに作用することもあります。現状維持バイアスはどのような仕組みで発生するのでしょうか。ここでは、現状維持バイアスが発生するときの心理や克服する方法、マーケティングとの関係を解説します。

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現状維持バイアスとは、変化を受け入れたくない心理作用

現状維持バイアス(status quo bias)とは、未知のものや変化を受け入れず、現状維持を望む心理作用です。この理論は、1988年にリチャード・ゼックハウザーとウィリアム・サミュエルソンによって提唱されました。

心理学や行動経済学における認知バイアスのひとつ

このような心理になる理由としては、行動経済学の「プロスペクト理論」でいう損失回避性も関係しています。未知のものや変化を受け入れると、現状の安定した状態を「損失」するリスクがあるため、それを回避しようとする心理が働いているというものです。

現状維持バイアスとは、心理学や行動経済学での認知バイアスのひとつです。最初の設定をそのまま受け入れる「デフォルト効果」や自分の所有物に対して高い価値があると考える「保有効果」なども関連しています。

「デフォルト効果」との違い

デフォルト効果と現状維持バイアスは似ているところが多く、ほとんど違いはないといえます。例えば、デフォルト効果の特徴としては初期値を変えることによる「損失回避」や初期値への「信頼」、初期値を変更するために必要な「コスト削減」などがあります。これらの特徴は、現状維持バイアスでも並行して起きている心理効果ですので、相互に作用しているといえます。

現状維持バイアスが起きる心理

現状維持バイアスのような心理状態は、なぜ発生するのでしょうか。実は、現状維持バイアスにはほかの心理学や行動経済学などの理論が影響しているケースも多いのです。ここでは、現状維持バイアスが起きる心理を見ていきましょう。

損失や失敗を回避したい

「損失や失敗を回避したい」という心理から、現状維持バイアスが発生します。現状を変化させることは、メリットもあるかもしれませんが、デメリットがある可能性もあるのです。そうなると、デメリットを回避したいあまり、現状維持を選択してしまいます。

なお、メリットよりデメリットを優先してしまうのは、別記事で紹介したプロスペクト理論の「人は得をするよりも損をすることを回避したい」という傾向も関係しています。

デフォルトから変更したくない

初期設定である「デフォルトから変更したくない」という心理も、現状維持バイアスが発生する要因です。これは、初期値を変えることで現状を損失することを恐れるからです。これは、前述したデフォルト効果にも見られる特徴でしょう。

慣れ親しんだものを選ぶ

「慣れ親しんだものを選ぼう」とする心理も、現状維持バイアスの発生に関係しています。慣れ親しんだものを選ぶのは単純接触効果の影響で、くり返し利用しているものに好感を持つからです。また、保有効果により現在使用しているものへの価値を高く感じていたり、デフォルト効果で慣れ親しんだものを高く信頼していたりも影響しています。

マーケティング施策を実行する上で、現状維持バイアスといった人の行動原理を読み解くことは重要です。人間が行動をするときにどのような心理に基づいているかを紐解く「行動心理学」をマーケティングに活用するポイントをわかりやすくまとめた資料を公開中です。そちらもぜひご参照ください。

マーケティングで使える行動経済学

現状維持バイアスの具体例

現状維持バイアスは、プライベートやビジネスシーンで、どのように発生しているのでしょう。ここでは、現状維持バイアスの具体例を身近な例でいくつかご紹介します。

新商品を受け入れられない

新商品を販売しても受け入れられずに、結局元の商品が売れるというケースも、現状維持バイアスが影響しています。

例えば、飲食業界で「オリジナル味のチキン」と「新しい味のチキン」を売り出したとします。事前のリサーチでは「新しい味のチキンがおいしい」という評価があったとしても、実際に新旧のチキンを並べて販売すると、オリジナルチキンのほうが売れ続けます。これは「損失や失敗を回避したい」や「慣れ親しんだものを選ぶ」心理が影響しています。

いつも同じメニューを頼む

飲食店に行き、いつも同じメニューを頼むのも、現状維持バイアスの一例といえるでしょう。なじみの店に行き、同じ席に座り、いつものメニューを注文するという行動は「慣れ親しんだものを選ぶ」心理や、別の店に行ったり、別のメニューを頼んだりして「失敗したくない」という心理が働いているのです。

転職できない

あまり待遇が良くない企業で働いている人がなかなか転職を決意できないのも、現状維持バイアスの一例です。仮に現状に満足していなくても「転職した先が、今より良い環境とはかぎらないのでは?」という不安から、転職の結果失敗したくないという心理が働いているのです。

新しい営業提案を断る

営業マンが持ってくる魅力的な提案を断るのも、現状維持バイアスが影響しているといえます。例えば「新しいソフトウェアを使えば、今よりもコストが1割削減できます」という営業提案があったとしても、1割くらいのコストダウンなら新しいソフトウェアに変える必要がないと判断してしまいます。これはメリットとデメリットを比較したときに、デメリットのほうを気にして現状維持を選んでしまう心理といえます。

保守的な意見に負ける

会社で何か改革をしようとしても、保守的な意見が通ってしまうケースがありますが、これも現状維持バイアスの一例です。改革をするということはこれまでと違う状況を作り出すことですので、「慣れ親しんだものを選ぶ」心理や「失敗したくない」とい心理が働きます。決議の場で現状維持バイアスによる保守的な意見が多くなると、提案は通りません。

オプションを解約しない

有料オプションを断れないのも、現状維持バイアスの一例です。例えば、あるサービスの契約時に有料のオプションサービスが「最初の1年は無料で使える」と言われて契約したとします。実際に1年経過した後も、多くの人はオプションを付けたままにしてしまいます。これは「デフォルトから変更したくない」という心理が働いています。

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現状維持バイアスに陥らないための対策

メリットとデメリットを比較して従来のものを選ぶこと自体は何も問題ありませんが、現状維持バイアスが働くと、合理的な判断ができない場合があります。大事な決断が必要なときに現状維持バイアスが影響するのは回避したいところです。ここでは、現状維持バイアスに陥らないための対策をご紹介します。

現状維持バイアスを認識する

簡単な対策としては現状維持バイアスの存在を認識することが挙げられます。自分の判断が「自分自身で下したもの」でなく「現状維持バイアスに影響されている可能性がある」と認識できていれば、考えが変わるかもしれません。「これは現状維持バイアスではないか」と、都度自分に問いかけてみるのもいいでしょう。

数字やデータで客観視する

数字やデータで客観視するのも対策として有効です。前述した新しいソフトウェアの例でいえば、長期間利用するもので1割のコストダウンができるなら、変更すべき理由は十分にあるでしょう。

もちろん、新しいソフトの使い方を覚えなければいけないという学習期間にかかる人的コストもありますから、一概には言えないかもしれません。しかし、感覚や感情で主観的に考えるのではなく、数字やデータをもとに客観的に考えることが、現状維持バイアスの対策として有効です。

メリットとデメリットを書き出して客観視する

数値やデータがない場合は、メリットとデメリットを書き出して客観視することも対策として考えられます。例えば「新しい車を買うかどうするか」を迷っているとします。頭の中だけで考えていると、現状維持バイアスにより「今のままでいいや」という選択になりがちです。

こういうときは、メリットとデメリットを書き出してみます。メリットとしては「新しい車に乗れる」、デメリットとしては「操作性が変わる」などがあるでしょう。メリットとデメリットを書き出していくことで、客観的になれるはずです。

少しずつ変化させる

現状維持バイアスの対策として小さなことから変えてみるのも有効です。大きな変化を起こそうとすると、現状維持バイアスも強く働きます。ですから、少しずつ変化を進めていくことで、できるだけストレスを小さくするのです。

例えば会社で「朝礼」を導入したいなら、いきなり毎日やるのではなく、月1回から始めて月2回、週1回と増やしていくことで、徐々に朝礼をすることが「デフォルトである」と感じるようにするのです。

現状を維持するこが失敗と考える

現状を維持するこは失敗であるとはっきり認識するのも、現状維持バイアスの対策になります。例えば前述した転職のケースであれば「このままブラック企業で働き続けたら倒れるかもしれない」という結果を想像します。

現状維持バイアスは「失敗したくない」という心理が働いているわけですから、現状維持が失敗と考えることで合理的な判断が下せるようになります。

現状維持バイアスをマーケティングに応用する際に重要となるライティングスキル、「言葉選び」についてまとめた下記の資料もご参照ください。

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現状維持バイアスとマーケティングの関係

現状維持バイアスのように人の行動にかかわる心理は、マーケティングにも関係があります。ここではマーケティングにおける現状維持バイアスの事例をご紹介します。

サブスクリプションサービスの試用期間

サブスクリプションサービスを初月無料で利用し始めると、登録を解除することは継続利用できなくなるという損失があるため、継続して利用してもらうことが期待できます。

もちろん、大前提として「サービスに価値があり、ユーザーの求めるものとマッチしてメリットを感じている」ことが必要ですが、初月無料の提案はマーケティング施策としては有効でしょう。

メルマガの配信許可

会員登録やアカウント作成の際、メルマガの配信を許可してもらうのもマーケティング施策では重要です。こちらもメルマガに価値やメリットを感じてもらっていることが前提ですが、わざわざ「登録を解除」することは損失になる可能性があるため、継続的にコミュニケーションを取れる手段となります。

おすすめプランの自動選択

現状維持バイアスの「デフォルトから変更したくない」という心理を考慮して、契約の際におすすめプランを自動選択しておく方法もあります。もちろん、ニーズによって別のプランを自ら選択する人はいるでしょうが、デフォルトで選択されているプランに大きな不満がなければ、そのまま契約してもらえます。

ユーザーの心理に寄り添った提案をしよう

現状維持バイアスは、新たな選択のリスクを軽減できるメリットもありますが、場合によっては合理的な判断ができない要因にもなり得ます。特に「申し込みたい気持ちはあるけれど、いま一歩踏み出せない」という状態のユーザーは現状維持バイアスが働いていることも考えられるでしょう。

現状維持バイアスのゆがみに対処するには、客観的に判断するための考え方や行動が重要です。Sprocketでは、ユーザーの行動データをリアルタイムに分析して、ユーザー心理に合わせた最適な声かけが可能です。ユーザーの気持ちに寄り添った接客でCVRを向上したいとお考えの方は、ぜひご相談ください。

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