サンクコスト効果とは?「これまでの投資がもったいない」で判断が曇る心理とその対策を紹介

心理学

Sprocket編集部

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サンクコスト効果とは、すでに使った費用やコストに対して「もったいない」という心理が働き、合理的な判断ができなくなってしまう現象のことです。ここではサンクコストについてと、サンクコスト効果について解説します。

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サンクコストとは回収不可能な費用のこと

サンクコスト(sunk costs)とは、日本語で「埋没費用」や「過去コスト」とも呼ばれる、将来的に回収できる見込みのないコストのことです。

例えば、オフィスの賃借料は企業活動に必要なコストですが、それ自体を後から回収することはできません。また、キャンペーンの費用や設備投資費用なども、それを行ったことで収益が上がるかもしれませんが、直接コスト回収はできませんので、やはりサンクコストとなります。

サンクコストの例

サンクコストをより理解するために、マーケティングや研究開発などで実際に起きるサンクコストの例を紹介します。自社にも同様の例がないのか、考えるきっかけになります。

マーケティングにおけるサンクコストとは?

マーケティングでは、自社メディアなどの運営費や広告費がサンクコストになります。メディアなどの運営費や広告費は、自社製品やサービスを宣伝するためのマーケティング費用ですが、宣伝したことによって効果があってもなくても、支払った費用が戻ってくることはありません。

研究開発におけるサンクコストとは?

新しい商品やサービスを生み出すためにリサーチしたり、サンプルを制作したりする場合もあるでしょう。これらは、最終的に商品を販売したり、サービスをローンチできたりすれば回収可能なコストです。しかし最終的に市場に「出さない」となった場合、投資した費用は回収不能なサンクコストとなります。

社内研修におけるサンクコストとは?

社内研修でも、サンクコストは発生します。通常、社内で研修を行えば、従業員はなんらかのスキルを得られます。しかしそのスキルそのものが会社にとって無用になれば、サンクコストになるのです。例えば、会社が中国企業と提携する予定があり、現場に派遣する予定の従業員に中国語研修を実施したとします。しかし、提携がご破算になれば、その研修費はサンクコストとなります。

サンクコスト効果とは

サンクコスト自体は企業活動において必要なものですから、必ず発生します。しかし問題なのは、サンクコストを支払ったことによる「それを取り戻そうとする心理」です。

例えば、前述した例でいえば広告費です。広告費自体は、いずれにしろ回収できないサンクコストですが、その広告に効果がないにもかかわらず、出稿し続けたらどうなるでしょうか?

イラストやキャッチコピー、デザインなど広告を作るためにかけた費用を「もったいない」と感じ、冷静な判断をできなくなった結果、効果がないにもかかわらず延々と出稿し、広告費を無駄にしてしまうかもしれません。行動経済学では、これを「サンクコスト効果」とよび、合理的な意思決定を妨げる心理のひとつとしています。

サンクコスト効果は、心理学者のエイモス・トベルスキーとダニエル・カーネマンが1972年提唱した「認知バイアス」という概念から派生した研究です。その後、行動経済学の専門家であるリチャード・セイラーによって、サンクコスト効果の概念が提唱されました。

有名な事例・超音速旅客機コンコルド

サンクコスト効果には有名な事例があります。1970年代に英仏が開発した超音速旅客機の「コンコルド」は、マッハ2のスピードで、パリ−ニューヨークを約3時間で飛行することができました。ところが、そもそもこのコンコルドには、燃費の悪さや収容定員の問題があり、採算が取れないことが開発段階から判明していたのです。そこで開発を中止すればいいのですが、すでに多額の投資をしていたためにそのまま開発を続行して就航し、最終的に開発費を上回る大赤字となりました。

このように、サンクコスト効果によって合理的な判断ができなくなることは、多かれ少なかれ起きる問題です。ちなみに、サンクコスト効果は、前述の例から「コンコルド効果」と呼ばれることもあります。

マーケティング施策を実行する上で、サンクコスト効果が起きる心理といった人の行動原理を読み解くことは重要です。人間が行動をするときにどのような心理に基づいているかを紐解く「行動心理学」をマーケティングに活用するポイントをわかりやすくまとめた資料を公開中です。そちらもぜひご参照ください。

マーケティングで使える行動経済学

サンクコスト効果が起きる心理

サンクコスト効果が起きる心理には、「損失回避」「非現実的楽観主義」「自己責任の意識」「無駄にしたくない・思われたくない心理」などがあります。ここでは、サンクコスト効果が起きる心理をご紹介しましょう。

損失回避

まずは、目の前の損失を避けようとする「損失回避」という心理があります。行動経済学では、人が5万円もらう喜びよりも、5万円失う悲しさのほうが上回るとされています。そのため、「損をしたくない」という気持ちから、サンクコスト効果が発生します。

非現実的楽観主義

非現実的楽観主義という心理がある場合も、サンクコスト効果が発生します。非現実的楽観主義というのは、現実的な確証もないまま「自分の判断は失敗しない」と考える心理です。ですから、コンコルドのように、問題が発生していても「最終的にはうまくいくはず」という根拠のない思考が、サンクコスト効果につながるのです。

自己責任

自己責任の心理も、サンクコスト効果の発生につながりやすいです。例えば、前述した広告の例でいえば、他人が作った広告であれば「失敗だから止めよう」と言えるかもしれません。しかし自分が作った広告であれば「失敗させてはいけない」という自己責任の心理から、継続してしまうのです。

無駄にしたくない・無駄だと思われたくない心理

「無駄にしたくない」「無駄だと思われたくない」という心理も、サンクコスト効果に影響します。例えば、健康的になろうとジムに入会したとします。しかし、仕事が多忙だったり、自分に合っていなかったりして、活用しなくなるかもしれません。

しかし、辞めてしまえばこれまでジムに支払ったお金が無駄になりますし、周囲から「お金を無駄にした」と思われるのも嫌だという心理が働きます。結果として「この先使わないかもしれない」とわかっていても、「いつか使うだろう」と退会しないままずるずると続けてしまうのです。

サンクコスト効果に陥らない対策

それでは、どのようにすれば合理的な判断ができるのでしょうか。ここでは、サンクコスト効果に陥らない対策をいくつかご紹介しましょう。

サンクコスト効果を理解する

サンクコスト効果に陥らない対策として、一番簡単なことは「サンクコスト効果を理解する」ことです。非現実的楽観主義や自己責任など、さまざまな心理が影響して合理的な判断ができていない「可能性がある」ことがわかっていれば、自分の判断に対して客観的になれるかもしれません。

「通わない英会話教室を辞められないのは、もしかしてサンクコスト効果なのかもしれない」と気付ければ、おのずと合理的な判断ができるようになるでしょう。

過去の自分に問いかける

サンクコスト効果が発生している場合は、その渦中にいるから合理的な判断ができないわけです。そこで「もしも今から始めるならばどうするか?」を、過去の自分に問いかけるのもいいでしょう。

例えば、前述したジムの例であれば「入会する前に戻れたら、ジムに入会するのか?」を問いかけるのです。その答えが「YES」なら続けるべきですが「NO」なら辞めるべきだとわかるでしょう。

機会費用と比較する

時間の有益性、効率性を考える「機会費用」という側面から、合理的な判断をするのもいいでしょう。例えば、ストリーミングサービスで映画をレンタルしたとします。しかし、サンクコスト効果が発生している場合、その映画がつまらなくても、支払ったレンタル代が無駄になるので見続けようとするでしょう。

しかし、その映画を見続けないことで、別の面白い映画を見られるチャンスがあるのです。ですから、埋没費用よりも機会費用を大切にしようと考えれば、サンクコスト効果の対策になります。

第三者に判断してもらう

サンクコスト効果は、主観的な立ち位置にいることで合理的な判断ができなくなっていることが原因のひとつでもあります。そこで、第三者に現状を説明し、客観的な判断をしてもらうのも、サンクコスト効果の対策になります。

データで判断する

サンクコスト効果で合理的な判断をしていないのであれば、合理的な判断をすることが対策になるはずです。例えば、コンコルドの例でいえば、運営費と収益のバランスが取れないとわかっているのですから、データだけを見れば合理的な判断ができたはずです。ですから、感情などは一切いれずに、データだけを見て押し引きを決めるのもいいでしょう。

サンクコスト効果をマーケティングに応用する際に重要となるライティングスキル、「言葉選び」についてまとめた下記の資料もご参照ください。

「顧客を動かす」訴求メッセージ

サンクコスト効果とマーケティングの関係

サンクコスト効果は、マーケティングにもかかわってきます。サンクコストという視点を取り入れることで、ユーザー心理を知るための手がかりにもなるでしょう。ここでは、サンクコスト効果の例をいくつかご紹介します。

試用版を提供する

いやゆる「お試し版」をユーザーに提供することで、サンクコスト効果を狙うマーケティング施策があります。例えば、高性能なペイントツールを「1か月無料」などで提供し、ユーザーに利用してもらいます。この場合、ユーザーはツールの操作手順を覚えるなどのサンクコストを支払うことになりますので、いざ1か月が過ぎたときに「今辞めたらこれまでの学習が無駄になる」と感じる心理が働きます。

付録や特典などを付ける

書籍や映像ソフトなどの付録や継続特典なども、サンクコスト効果を生む施策です。例えば、毎号付録のある雑誌を買い続けている場合、途中で購読を止めればオマケのコレクションがそろいません。特に、全号そろえることで完成する付録であれば、「ここまで買い続けたのにもったいない」と思ってしまうでしょう。同様に「シールを集めれば○○がもらえる」「ブルーレイを全巻買うと収納ボックスがもらえる」などの特典も同様です。

会員ランクを付与する

会員ランクの付与も、サンクコスト効果にかかわりがあります。例えば会員ランクによって還元ポイントが増加するといった特典がある場合、「今月あと○円でゴールド会員になって還元率が上がる」という案内は「使わないともったいない」という心理効果につながります。

心理効果を乱用せずユーザーと長期的な関係性を築く

サンクコスト効果の怖いところは、自分は「正しい判断をしている」と思っていることです。ビジネスシーンでは、さまざまなサンクコストが発生し、そしてサンクコスト効果で誤った判断をしてしまう可能性があります。

ユーザーと長期的に良好な関係を築くのであれば、誤った判断をさせるような施策は控えて、信頼性を高めていくべきです。ただし、こうした心理効果があることは知っておくに越したことはないでしょう。

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