ユーザーインタビューについて勉強会をしました
こんにちは。UXチームの足立淳です。 今回は、UXチームに新しく入ってきた社員向けに、インタビューについての勉強会を行ったので記事にしたいと思います。
インタビューの重要性
製品やサービス改善には、実際のユーザーの声が欠かせません。
限られた社内メンバーのアイディアだけで設計をしても他社に勝てるものは生まれてこず、またアンケートなど表層的な情報を鵜呑みにしてしまうと、ユーザーのニーズをミスリードをしてしまう恐れがあります。
より本質的な要求を明らかにして、さらに無意識化に隠れている本質的な欲求や意識を引き出すためには、実際のユーザーの声を聞く「インタビュー」が重要になってきます。
デプスインタビューについて
インタビューにはグループ(複数人に対して行う)インタビューもありますが、今回は1対1で行うデプスインタビューを取り上げます。
デプスインタビューでは、インタビュアー(聞く人)とインタビュイー(話す人)が1対1で向き合うことで、より深い示唆や潜在的・本質的な情報・価値観・欲求を知ることができる手法です。
インタビューの前に
実際にインタビューを行う前に、事前の準備がいくつかあります。
目標・課題・仮説の設定
何のためにインタビューを行うのか、その「目標・課題・仮設の設定」を事前に明確にしておき、インタビュー中でも意識しておくことで、想像外への方向に話がぶれたときにも対応でき、聞きたかったことがしっかり聞けるようになります。
実際のインタビューのスキルより、この「目標・課題・仮設の設定」がインタビューの成功を左右するといっても過言ではありません。念入りに準備をしましょう!
質問の設計
「目標・課題・仮設の設定」ができたら、その仮説を実証するための質問を予め準備(設計)しておきます。
質問の設計方法はいくつかありますが、その中でも「半構造化インタビュー」といった、質問を詳細に作りこまず明らかにしたい重要なポイントだけに絞る方法がおすすめです。
予め質問内容を決めきってしまうと、想定外の回答に対して深く聞き出せなくなるなど、臨機応変さに欠けるため、回答に応じて新しい質問を作れる柔軟性も重要です。
インタビューの実施にあたり
ラポールの形成
インタビューをするということは、相手と会話をするということですから、インタビュイー(話す人)が、『この人になら話をしても大丈夫そうだ』という、ラポール=信頼関係の形成が前提になります。信頼関係が無い状態では、心の奥で思っていることは聞き出せません。
そのためには、ラポールを形成しやすい環境と、充分なアイスブレイク(緊張をときほぐすこと)が必要です。
インタビューの環境準備
まず代表的なのは”おやつと飲み物”です。
おやつと飲み物はアイスブレイクにも役立ちます。
「おやつを用意したのですが、甘いものは大丈夫ですか?」といった会話から、共通な話題にしやすい”食事”の話に繋げられたりできます。また純粋に、”おもてなし”されているため、警戒心を緩めさせ安心感を与える効果もあります。
おやつは小分けにして食べやすいものが良いです。あまったら持って帰ってもらってもよいでしょう。
あとは服装も大切です。
きっちりフォーマルだと相手も「礼儀正しくしなきゃ」と固くなってしまうので、ターゲットユーザーにあった程よいカジュアルが良いとされています。
また環境として、1対1のインタビューでは、向かい合わずL字に座るというのも大切です。
対面で向かい合うと、相手に面接のような圧を与えてしまい、緊張をさせてしまいます。
L字で横にいると、同じ側にいる安心感を与えやすくなります。
最後に、カメラや録音機器、記録係りがあると便利です。
それらが無いと、自分がメモするのに忙しくなってしまい、相手をおろそかにしてしまうリスクがあります。
アイスブレイクについて
アイスブレイクは、緊張感を解き、相手に安心感や好感・親しみを持ってもらうのが目的です。そのためには、お互いの共通点など、類似性を意識した会話が良いとされています。
同じ出身や同じ経験、とくに身近な話題だといいですね。天気や気候の話題で「雨降ってましたけど大丈夫でしたか?」「寒くなってきましたね」から、「ここまでの道順はわかりにくくなかったですか?」など、当たり障りに無い会話から入っていき、相手の興味や嗜好を聞き取ると次の話題に進めやすくなります。
個人的には「自分の笑える失敗談」がおすすめです。
犬が相手に服従の場合、おなかを見せるように、自分の隙を見せることで、相手に敵ではないことのアピールとなり安心感を与えます。
また、自分自身が心を開くことが最も大切です。
自分が緊張していると相手も緊張してしまうので、まずは自分が笑顔でリラックスすることが大切です。もし自分が緊張している場合は素直に「すみません、私も慣れてなくて緊張しちゃってて」と笑顔で告白をすることで、自分の隙を見せつつお互いの緊張を解く効果があります。
インタビューについて
基本は「それはなぜですか?」を繰り返すことになります。これはラダリング法と呼ばれるインタビュー手法の一つです。普段、人間は無意識で生活をしています。日常で無意識で行っている行為に「それはなぜか?」と問いかけることで、本人自体が意識をしていなかった行動の要因を明らかにしていきます。
気を付けたい点として、インタビュイーの経験がない方は、無意識の行為を言語化することに慣れていません。人間は普段意識できていることは5%で、残りの95%は無意識だとされています。そのような前提がある中で、インタビュー時に上手く話を聞き出すコツがいくつかありますので、その手法について説明していきます。
投影法
インタビューではプライバシーにかかわるような事柄を聞く場合もありますが、無意識に拒否反応が出て、模範的・規範的な回答でごまかされてしまう場合があります。その際には、この投影法を使って聞き出します。
投影法にはいくつかの種類があり、「その製品を買った人はどんな人だとおもいますか?」と直接その人の意見ではなく、他の人に投影した意見を聞く「推測法」、あるものに対して連想するものを色々出してもらう「語句連想法」、文章の穴埋めをしてもらうことで意識を知る「文章完成法」、またはラフな状況の絵を見せて意識を探る「略画法」など様々な手法があります。
ミラーリングとページング
相手の身振り手振りなどを同調させる「ミラーリング」と、話し方やトーン、話やブレスのタイミングを同調させる「ページング」という手法があります。
例えば、相手が飲み物を飲むタイミングで、こちらも飲み物を飲むなどです。
ただし、これらは事細かにやろうとすると非常に違和感がでやすく、違和感が相手に不信感を与えるリスクもあるため、無理のない程度で行うと良いと思います。
オープン質問とクローズド質問
質問には、「〇〇についてどう思いますか?」など意識を聞き出すオープン質問と、YES・NOで答えられるクローズド質問があります。
基本的にはオープン質問で話をしていただきますが、答えが出てこない・詰まる方もいらっしゃいます。その際には、一度クローズド質問で促してあげたりすることで、オープン質問に答えやすくなる場合があります。
一番大切なことは謙虚な気持ち
他にも手法やコツは色々ありますが、一番大切なのは謙虚な気持ちだと思います。
インタビューでは「弟子入り」と比喩されることがあります。相手はインタビューを受けるプロではないので、相手を敬って教えてもらう謙虚な気持ちで望むのが重要です。上手にやることよりも、相手の目を見て、笑いかけて安心できる姿勢ことが重要です。
インタビューでの注意点
もっとも気を付けなければならないのは、インタビューの質問で、”自分が誘導しない”ことです。「〇〇だと思ったのですか?」と聞くと誘導になってしまい、容易に事実を曲がってしまうので要注意です。
また、相手の意見を否定しないことも重要です。インタビューのなかでは、個人の主観とは異なる意見も出てくる場合もあります。ただ、それこそがインタビュイーからしか得られない貴重な情報です。大切に扱いましょう。
アフタートーク
インタビューが終わっても、お見送りして見えなくなる最後まで意識をしましょう。どんなに万全な対応をしても、インタビューを受ける方は緊張したり意識をしてしまうものです。
終わった後の緊張感がなくなったタイミングで、思わぬ本音が出たりもします。そういったタイミングで、気になったことをさらに少し聞き出すなど、臨機応変な対応もできると素晴らしいです。
また、一般的にインタビューで呼ばれるような方は、自社のターゲットユーザーの方が多いので、最後に感謝の気持ちを忘れずに伝えて、ファンになってもらうようにしましょう。
最後に
インタビューはUXに限った特別なスキルではなくて、営業はもちろん、エンジニアやグラフィックデザイナー、はてはビジネスだけではなく、生活全般をよりよくできるスキルだと思っています。
今回の勉強会で、少しでも参加者の役に立てばよいと思います。
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