マーケティング領域の人工知能活用の虚像と本質

マーケティングテクノロジー

イメージ:ロボットが迷路に入りこでいるイメージイラスト

最近よく、「人工知能や機械が職を奪う」という話を耳にします。NHKでもニュースになるなど、テクノロジー領域に限らず一般向けのメディアでも取り上げています。「マーケティング領域の仕事も色々持っていかれるんじゃないか」という話も当然あり、テクノロジーカンパニーとしてSprocketも関心の高い領域です。

マーケティングツールの人工知能化はまだ遠い

今のところ、人工知能的アプローチを取っているマーテクツールはまだ多くはないですし、見る限り本質的に来たなという感じのものはまだ出ていない印象を受けています。

米国では、Mixpanel、SMC、UrbanAirshipが続けて予測スコア的な機能をリリースしたのは象徴的でしたが、まずは将来予測などからやっていくのが妥当だと思います。

人工知能といっても万能なわけではありませんから、マーケティングの領域で言えば基本的には最終的に「お客さんが買ったかどうか」で良し悪しを判断することになるでしょう。ですので、データを元に人間という教師付きで機械に学習させるというのが考えられるアプローチです。

CVRの最適化とLTV最適化の壁


そもそも現状は、購買データが取れない場合もあるので、まずはこの整備が必要ですから、環境整備にも一定の時間はかかるでしょう。ただしここは時間の問題だろうという気はしますので、その問題はスキップすることとしても、買ったかどうかだけで判断して良いのかという問題が次に出てきます。これはECでも同様かと思いますが、単純に1回の購買率だけを最適化しても、長期的に本当にそれが良いのかわからないという話です。

「CVRの最適化がLTVの最大化になるのか?」という命題を考えると、直感的にはならないと思います。おそらく多くのマーケターの方も同じように思われるのではないかと思います。

僕自身、クーポンなどの金銭的インセンティブと違う方法を模索し続けているのはまさにこの考えが根幹にあるからです。CVRの最適化を機械にやらせると、まず間違いなくクーポン(あるいはポイント付与)のばら撒きを始めると思いますが、LTVの向上にはおそらくつながらないでしょう。

LTVの行動データの蓄積の難易度


本来、LTVの最大化を持って機械に学習させないといけないわけですが、これが結構難しい。まずLife Timeって一体どのくらいなんだということがなかなか明確にならないでしょう。3年で見るのか、5年で見るのか。多くのビジネスでもっと長い期間お客さんで在り続けてくれる人がいると思います。

そうするとその期間分のデータが必要になりますが、ほとんどの企業で行動系のデータをちゃんと蓄積するということをやり始めたのはここ最近のこと(あるいはまだ始めていないかも)だと思います。この実態を考えると、今から数年は少なくとも機械に食わせるに足るデータが貯まりません。

「1年で見ると正しかった施策が3年で見ると正しくなかった」ということが起こり得るわけですから、機械に全面的に任せるということはリスクが高いということになります。ある程度は補完的に使える(予測スコアの提供など)アウトプットを出すことに活用できるとしても、「この施策はいけそうだな/ダメそうだな」という判断は少なくとも企業として満足できる長さでのLife Time以上の期間でのデータが貯まるまでは人間が判断せざるを得ません。

急速に変わる人間の行動様式にデータが追いつかない


もう一つあると思うのは、それだけの期間のデータを見ていかないといけないとすると、人間の行動様式が変わってしまうことが十分あり得るだろうという点です。

テクノロジーの進化によって変わってしまうこともあるでしょうし、同じLife Time10年といっても10代のこれからの10年と、40代のこれからの10年は行動様式に大きく差があります。僕も自分の6歳と3歳の子供のタブレットの使い方などを見ていると、自分の欲しいものをどうやって見つけるのか・どうやって関心を持って買いたいと思うに至るのか、自分とはかなり違うなと思わざるを得ません。

おそらく僕に刺さる施策と僕の子供に刺さる施策は、同じ商品であっても異なるでしょう。この前提に立つと、僕の子供がその商品の購買対象年齢に至った時には、またデータの集め直しをしなきゃいけないということがあり得ます。

もし、本質的な態度変容を察知できるようなレベルでデータ収集ができるとすれば、多少の行動様式の違いは吸収できるかもしれません。しかし、さすがにそこレベルまで到達するには、身体データをほぼ日常的に蓄積し、それを分析に使えるというような環境でもないと困難でしょう。なにせ自分でもどこで態度変容したのか、を明確に言えるわけではありませんから、無意識的な変化を捉えられるだけのデータが必要となると考えます。

企業と顧客の長期的な関係を築ける人工知能機能を模索


こうしたことから、少なくともマーケティングの打ち手を考える仕事が機械に取って代わられることは、かなり長い間起こらないでしょう。もちろんもっと単純な作業、例えばABテスト用のバナー画像やメールの件名を生成するといった水準の仕事は機械がやるようになることは十分にあり得ると思います。

現時点ではコンピュータが処理しやすい形でデータを蓄積するように工夫していますので、例えばサイトを横断して分析をしたり学習用のデータとして使うことが出来たりといったことがあとあと容易にできるようになっています。

Sprocketも今後の機能拡充の1つとして人工知能的なものを付加していくことになると思いますが、人間がやるべきこと、機械に任せてもいいこと、本質的に企業と顧客の関係性構築にプラスになること、といった観点からしっかり考えて取り入れていくつもりです。

書き方は僭越ですが、マーケターの方がおもてなしレベルを上げていけるような使い方ができるものにしていきますので、まだ先にはなると思いますが楽しみにしていてください。

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