CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?マーケティングにおける顧客体験の重要性
さまざまなサービスのオンライン化が進む中、CX(カスタマーエクスペリエンス)の改善・向上は重要な要素です。本記事では、Sprocketが考えるCXの定義と顧客体験の設計手法をご紹介します。 |
CX(カスタマーエクスペリエンス)とは
CXとは「Customer Experience:カスタマーエクスペリエンス」の略で、日本語では「顧客体験」と訳されます。マーケティング領域において2000年代から使われ始めた用語で、明確な定義がないことから、具体的なイメージを持てていない方もいるかもしれません。
しかし、CXは今後のマーケティング活動、および企業活動において非常に重要な要素です。その理由、Sprocketが考えるCXの定義、具体的なアクションプランを順にご紹介します。
なぜこれからのビジネスにCXが重要なのか
スマートフォンの普及や在宅トレンドといったステップを経て、あらゆるサービスのオンライン化が進んでいます。広告の分野でも、電通『2023年 日本の広告費』によるとインターネット広告費は3兆3,330億円に達し、既存のマスメディアを超えてマーケティング活動の主軸はデジタルチャネルへとシフトしています。広告による新規顧客獲得は競争が激化し、マーケターにとってはいかに既存顧客のLTVを高めるかが重要な課題です。
そのような中、顧客側でも変化が進んでいます。ひと昔前に「デジタルネイティブ」と呼ばれていた層は成長して消費活動の主体になりつつあり、65歳以上のシニア層のデジタルサービスの利用率も年々上がっています。顧客から「長く選ばれる」製品・サービスになるためには、オンラインでの体験向上がカギになります。
インターネットが登場して以来、ECサイトは長らく「自動販売機」のような役割でした。インターネットに慣れた顧客が自分で商品を探して、情報を入力して、購入する。しかしこの認識は今すぐにあらためる必要があります。いくらでも選択肢がある現在、不親切だったり、面倒だったりするWebサイトはもはや選ばれません。
顧客との信頼関係を構築して長く選ばれ続けるために、企業は顧客の「体験」に敏感である必要があります。CXは「売上を上乗せするための追加要素」ではなく、今後ビジネスを継続する上で本気で取り組まなければならない、必須の要素なのです。
企業が抱えるCX改善・向上の課題
いざCX改善に取り組もうと考えても、「何から手を付けていいのかわからない」という方も多いでしょう。とりあえず、目に見えやすいUIから手を付けるケースもありますが、UIはCXを構成する要素の一部でしかありません。「そのUIを変更したことで、顧客の体験がどのように変化したのか」を検証できる仕組みがなければ、単発の施策で終わってしまいます。
「CX」自体が広い使われ方をする言葉ですので、まずは、自社にとっての「CXとは何か」を定義することからスタートする必要があります。
また、CXは一度改善したら終わりという類いのものではありません。顧客の反応を観察しながら、常に改善し続けていくことが求められます。
企業がCX改善に取り組むにあたり、「自社にとってのCXとは何かを定義する」「顧客の『良い体験』を設計する」「CXを改善し続ける仕組みを作る」というステップが必要です。
Sprocketが考えるCXの定義・意味
フィリップ・コトラーは「CXは顧客が製品に触れる可能性のあるすべてのタッチポイント」であると表現しています。
CXは購入体験や顧客サービスだけを意味するものではない。それどころか、顧客が製品を購入するずっと前から始まり、購入後もずっと続くのだ。CXは顧客が製品に触れる可能性のあるすべてのタッチポイント――ブランド・コミュニケーション、小売体験、販売員とのインタラクション、製品の使用、顧客サービス、他の顧客との会話――を包含している。
出典:『コトラーのマーケティング5.0 デジタル・テクノロジー時代の革新戦略』(朝日新聞出版)
Sprocketでも、CXは「顧客1人ひとりが製品・サービスとの直接的、間接的な接触を重ねることで形成される印象のこと」であると定義しています。
CXはとても広い言葉ですので、マーケターだけで作れるものではありません。前提として、CXは顧客の中にあるものですから、良い体験か悪い体験かを決めるのは顧客自身です。マーケターは、常に「これは顧客にとって良い体験なのか、悪い体験なのか」を考え、検証しながら改善施策に取り組み続ける必要があります。
CXを測るための3つの「価値とコスト」
同じくフィリップ・コトラーは、顧客(体験)価値を「ベネフィット - コスト」の式で表しています。顧客が感じる価値とコストにはそれぞれ「機能的」「心理的」「金銭的」の3種類があります。
このうち「機能的・金銭的」な価値やコストについては、製品・サービスを提供している時点で、一定の検討がなされているはずです。Webサイト・アプリの改善といったマーケティング施策で差を付けられるのは「心理的」な価値やコストの部分です。
良い体験を増やして、悪い体験を減らす
Sprocketは「企業と顧客の長期的な関係性構築」を目指しています。目先の売り上げをアップするだけではなく、末永く顧客から信頼され、愛される企業になるのを支援することが目的です。
そのためには、オンライン上で「良い体験を増やして、悪い体験を減らす」ことがすべての施策のベースになります。
良い体験を増やす
まずは「自社の顧客にとって、良い体験とな何か?」を考えることが最初の一歩です。同様の製品・サービスが多く存在する中で「どうしたら、よりうれしいと感じるのか?」「また利用したくなるのか?」を考えます。
これは、実店舗ではあたりまえに行われてきたことです。顧客が「また利用したい」と感じるのは、店舗のスタッフの心地よい接客が大きく関係しています。実店舗の接客も参考にしながら、Webサイトを「良い体験を提供する場」として位置づける必要があります。
Sprocketでは、オンラインの施策でよくある「クーポン訴求」や「離脱防止」施策を乱発するのはおすすめしていません。お店に入るなり突然割引クーポンを押しつけられたり、帰ろうとするところを無理に引き止められることが、顧客にとって「良い体験」でしょうか?
クーポン訴求や声かけにも、適したタイミングがあります。そのためには顧客の行動をよく観察して、「今、こうされたらうれしいと感じるはず」という瞬間を見計らって行うことが大切です。
悪い体験を減らす
悪い体験は、特にオンラインでは見えづらく、これまで軽視されてきがちでした。PVベースのアクセス解析ツールでは、購入に至った人の行動を追うことはできますが、途中で離脱した人が「なぜ離脱したのか」「その人にとってどんな悪い体験があったのか」を知ることは困難です。
「どのページで離脱したのか」だけでなく、「なぜ離脱したのか」「そのときどう感じたのか」を知るには、アクセス解析ツール以外の手がかりが必要です。そのためには、顧客のサイト内の行動データを取得・分析して観察する必要があります。
オンラインでは、その場で顧客の表情を見たり、話を聞いたりすることができません。「悪い体験」を減らすためには、手がかりとなる行動データをもとに、顧客の心理を推測しながら施策を実施して、それを検証するサイクルを回していくしかありません。
顧客理解とCX改善のスパイラルを作る
CX改善のためには、顧客理解が不可欠です。オンラインで顧客の心理を知るためには、仮説をもとにした施策を実施して、それがどのような体験につながったのかを分析します。仮説と検証をくり返すことで顧客理解が深まり、それがCX改善につながり、結果として成果にもつながります。
この「顧客理解とCX改善の好循環」をSprocketでは「グッドスパイラル」と呼んでいます。企業の内部にこのグッドスパイラルを生み出し、この先もずっと続く仕組みとして定着させることがSprocketの役割です。
Sprocket独自のCX設計フレームワーク
Sprocketでは、CX改善に「視点」と「ニーズ」の2軸でコミュニケーションを分類する独自のフレームワークを使用しています。
「視点」は、その情報(コミュニケーション)が企業視点か、顧客視点かという軸のことです。「ニーズ」は、顧客がニーズを自覚している(買いたいと思っている)か、自覚していないかという軸を表します。
この2つをかけ合わせることで、オンラインでのコミュニケーションを4つに分類しています。
「売り込み」
ニーズの自覚がない顧客に、企業視点の情報を発信するのは一方的な「売り込み」です。まず「売り込み」から入るのは避けるべきですが、オンラインでは最もやってしまいがちなコミュニケーションでもあります。
オンラインの施策でよく見かけるクーポン訴求のポップアップは、ほとんどが「売り込み」に該当します。顧客の「良い体験」を作ることを目的にするのであれば、考えるべきコミュニケーションはほかにもあるはずです。
もちろん「売り込み」が良い体験につながるケースもあるでしょう。しかし「売り込み」だけに偏った施策では、CX改善につなげることは困難です。
「気の利く提案」
ニーズの自覚がない顧客に、顧客視点の情報を提供するのが「気の利く提案」です。これは実店舗の「気の利く店員」をイメージしていただければわかりやすいでしょう。
例えば、まだはっきりとした購入意欲はないものの、なんとなく「どんなギフトがあるのかな」と探している顧客がサイトを訪れたとします。そのときに「メッセージカードも付けられますよ」「いつまでのご注文であれば、配送日時を指定できますよ」といった情報を提供できれば、「それは考えていなかったけれど、うれしいかも。このサイトは気が利くな」という印象につながります。
「つまずきケア」
顧客にニーズの自覚があるにもかかわらず、つまずいているところをサポートするのが「つまずきケア」です。「買いたい」と考えているのに、サイトの操作がわからなかったり、不安を解消できずに黙って離脱してしまうのは企業にとっても損失ですし、「不親切だな」「わかりにくい」という悪い印象を生んでしまう原因にもなります。
サイト内の行動データを注意深く観察することで「困っていそうな人」を見つけ出し、そっとサポートをするコミュニケーションは非常に有効です。これまでは観測できていなかった「悪い体験をして離脱した顧客」にコミュニケーションを図れる手段でもあります。
「後押し」
ニーズの自覚がある顧客に、あとひと押しの声かけをするのが「後押し」のコミュニケーションです。
例えば、カートに商品を入れた顧客に対して「○○円以上で送料無料」という情報を伝えたり、クレジットカードの利用明細画面を確認している顧客に「分割払いへの変更はこちらから行えます」と案内したりするケースが考えられます。
顧客がもともと「買いたい・やりたい」と思っていることを、聞かれるよりも前に先回りして提案することで、スムーズで気持ちがいい体験を生むことができます。
CX改善の事例・ケーススタディ
オンラインでも適切なコミュニケーションを図ると、購入促進に効果的なことはもちろん、顧客の中にある体験の向上につながります。ここでは体験向上に寄与した事例の一部をご紹介します。
サイトリニューアルの疑問を先回りして解消した事例
リニューアルした内容をチュートリアルで案内した施策 |
育児・マタニティ用品を中心としたECサイトを運営するピジョン株式会社様では、顧客の体験向上のためにWebサイトをシステムからリニューアルしました。しかし、これまでの使い勝手と変わることから、リニューアル直後はお問い合わせが増えることが予想されました。
Sprocketでリニューアルでどこが変わったのかをていねいにチュートリアルで案内するシナリオを実施したところ「肩すかしなくらい」お問い合わせが少なく、波風なくリニューアルを終えられました。
「前は買えたのに、変わってしまってわからない」「使いたい機能が見つからない」というのは顧客にとって大きなマイナス体験です。「わからない」が発生するよりも事前にていねいな案内を行うことで、体験を損ねずにより便利になったWebサイトを受け入れてもらうことに成功しました。
お歳暮の商品をカートに入れた方に向けたFAQ案内
カート内の商品に応じてよくある質問を案内した施策 |
もうひとつは、OMOを推進する株式会社東急百貨店様の事例です。ポップアップでFAQを案内するのは定番施策のひとつですが、東急百貨店様ではよりセグメントを工夫して「お歳暮の商品がカートに入っていて、かつこれまで購入したことがない」方に向けた接客を実施しました。
百貨店を利用する顧客には、ECサイトに慣れていない方も多く含まれます。ECサイトでも「百貨店らしい、真摯なご案内をしたい」という思いから実施したこの施策では、余計なページ遷移をせず、その場で疑問が解消できるように工夫されています。
ECサイトはどこも同じと思われがちですが、「誰に、どんなタイミングで声かけをするか」次第で顧客の体験を改善するよう自社ならではの工夫をする余地は十分にあるのです。
そのほかのCX改善事例については、以下のページで詳しくご紹介しています。Sprocketの導入事例集ともあわせて、ご参照ください。
400社以上の実績から厳選したCX改善事例集はこちら
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CX改善はこれからのビジネスに欠かせない要素で、一度きりではなく継続的に取り組み続けていく必要があります。「良い体験」の積み重ねが、顧客との信頼関係と、長期的な関係性につながります。
オンラインで「顧客がどう感じているか」を知るには、直接聞く以外には、行動を注意深く観察して心理を推測するしかありません。顧客の心理を考えて施策を打ち、その反応を見て心理がどう変化したのかを分析する。このサイクルをくり返すことで、顧客の理解がより深まっていきます。そのためには、仮説と検証をスピーディーにくり返すための仕組みが必要です。
Sprocketは、オンラインのCXを改善するプラットフォームです。専任のコンサルタントが、御社の顧客にとって何が良い体験なのか、悪い体験なのかを実際の行動データから根拠をもって明らかにし、長期的なCX改善の取り組みをご支援いたします。
Sprocketは、A/Bテストによりスピーディーに効果検証のサイクルを回せます。SprocketのA/Bテストは、単純に「どちらのパターンが勝った・負けた」を見るだけではありません。「なぜこのコミュニケーションが響かなかったのか」「そのとき、顧客はどう感じていたのか」を深掘りするための分析機能が豊富に存在し、顧客の心理を知るための手がかりを得られます。
CX改善に取り組むのであれば、早いに越したことはありません。社内に知見やリソースが不足している場合でも、お気軽にご相談ください。
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