2025年の年頭挨拶 AIがもたらす消費者意識とマーケティングの変化

Sprocket

深田 浩嗣

AIがもたらすほんもの性のイメージ

みなさま、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
2024年、テクノロジーは消費者の意識・行動をどう変えていったでしょうか。生成AIの急速な進化と普及には、目を見張るほどの”驚き”がありました。それに伴い、消費者の意識にも興味深い変化が見られます。
そこで、今回は「新しい『ほんもの』が定着し始める」と書いた”2024年の年始挨拶”と1年で起こった出来事を振り返りながら、今年「2025年の変化」を考えてみたいと思います。

AI松田優作が変えた「ほんもの」に対する消費者意識

2024年の年始時点では、生成AIの成果物が本当に使えるものになるのか、まだ一般に認知されている状態とは言えませんでした。しかし、それはたった1年で大きく変わったと言えます。個人的に象徴的だったのは、こちらの事例。

シャープがスマートフォン「AQUOS」のテレビCMに3DCGやAIを用いて復元した、松田優作を起用した、という話です。もちろん、それ以前にも故人をAIで蘇らせて、メディアに登場させる試み自体はありました。

有名なのは、NHK紅白歌合戦で話題を呼んだAI美空ひばりです。しかし、その当時の消費者の反応は「AIで蘇らせるなど、故人への冒涜ではないか」というものでした。まだ理解を得るには、早すぎたのかもしれません。

ところが、AI松田優作のCMは消費者に好印象を与え、前年比2倍の出荷台数を見込む成果を見せたのです。国内において、ある意味で消費者にとって身近なCMとしてAI俳優が採用されたこと、結果として(短い時間の出演だとしても)違和感のない人物として表現できていることなどから、AIが生み出したものは十分に「ほんもの」として通用することが示されています。

同時に、このほんもの性を表現するためには人間側の工夫(インプット)も様々に必要であることも記事から読み取れます。ただこうした人間の関与もいずれは過去の映像記録も参照することなどでだんだん少なく済むようになり、同時により再現の精度や再現可能な範囲(もっと長時間の出演だったり、様々な振る舞いをさせたり)も広がるでしょう。

「俳優」という職業はこれまでどちらかといえばAIに仕事を奪われにくい職業と目されていたと思いますが、こうなってくると話が変わります。特に日本は高齢化が進んでいく社会ですから、松田優作のように昔なじみのある「俳優」が出ている方を好むという人たちもそれなりの割合を占めそうです。

AIがもたらす激変はワクワクするチャンス

「俳優」という職業についている人々にとって、今までと同じような概念で「俳優」という職業を捉えていると、ついていけなくなる未来がもうすぐそこに来ています。

AIが再現した「俳優」も競争相手となる時代において、「俳優」としてどのような特徴や個性を出していくべきなのか。どのような層に受け入れられる道を探るべきなのか。生きている人間にしかできないことはなにか。AIが生み出した「俳優」だからこそできることはなにか。

この2・3年(もっと短いかもしません)で、AIがもたらす変化を見据えた仕事の仕方に切り替えていく必要があるでしょう。

これはもちろん「俳優」という職業に限ることではありません。マクロにはマーケティング業界含めたあらゆる業界で、またミクロにはSprocketのような、いち企業というレベルでも否応なく起きていきます。

1年前の年始挨拶文には「生成AIの登場により、人間としてするべきことがなにか、なにが本質なのかということが多くの分野で問われ始めた、そんな1年だったと思います」ということを書いていたのですが、一気にそんな悠長なことを言っている場合ではなくなってしまいました。

一方で、このような大きな変化が起きるタイミングは、非常にワクワクする瞬間でもあります。今までは正しかったアプローチが正しくなくなっていくということは、新しいアプローチが取って代わるチャンスです。うまく機会を掴むことができれば面白いポジションを取ることができるでしょう。

AIと対話する未来のイメージ

ドンキ「ジェネリック香水」に見る新たな消費動向

またAIの進化とは別に、消費の仕方にも面白い変化が出てきています。昨年はファッション分野における「クワイエットラグジュアリー」を変化の象徴として取り上げましたが、同じベクトルの変化が様々に登場してきています。例えば、次のような事例です。

シャープがスマートフォン「AQUOS」のテレビCMに3DCGやAIを用いて復元した、松田優作を起用した、という話です。もちろん、それ以前にも故人をAIで蘇らせて、メディアに登場させる試み自体はありました。

ディスカウントストアのドン・キホーテでは、高級ブランドにそっくりで高品質な「ジェネリック香水」が売られており、若者たちに人気となっています。

今までは当たり前のように付けられていた家電のブランドロゴを、あえて目立たなくする動きも広がっています。

こうした消費動向から、「ブランド」に消費者が求めるものが変わってきていることが感じられます。「装飾的要素」や「記号的差別性」に感じる価値が減少する一方で、「機能性」に重きを置くようになってきている。

日本だけではなく、世界中でこのような変化が見られます。日本語では「ジェネリック」ですが、中国語圏では「平替(ピンティ)」と呼ばれ、英語圏では「dupe」と表現されています。

こうした商品は、機能的にほぼ同じであれば、SNSを通じて簡単にその検証結果が広まります。成分的や材料的な意味での同一性、製造元や製造工程としての同一性、装飾にお金をかけていないことでの価格的な合理性。こういったことが一般に理解されるようになってきました。

結果として、どういうプロダクトにお金を支払うべきかという意識がどんどん変わってきています。また、こうしたプロダクトのほうがよりサステイナブルであるとみなしやすいことも後押しになっています。

以上は、これまでラグジュアリーブランドに顕著に見られた現象ですが、現在では様々なジャンルで見られるようになりました。2025年には、この動きはより広がっていくでしょう。

この変化が広がると機能的価値が生み出す情緒的価値、あるいは機能的価値を情緒的価値として知らしめることが重要になっていくでしょう。なお、そのことをテーマにした記事を「日経クロストレンド」に寄稿しましたので、参考にしてみてください。

「概念推し」と“推し活”の日常化

加えて、個人的に面白いなと思っているのがこちらの傾向です。

「概念推し」とは、特定のキャラクターやアイドルなどの「設定」や「好物」「イメージカラー」といった抽象的な要素をグッズやファッションなどに取り入れることで、周囲にアピールすることなく推し活を楽しむことです。

現状、大きな変化と呼べるほどではありませんが、消費者が価値を感じる要素の変化を象徴する現象として非常に興味深いものがあります。

その要素は、2つあります。1つは推し活の日常化という点で、流行っているものを消費するのではなく自分らしさや個性の発揮という点への消費傾向が強まるという変化。もう1つは消費者の日常性の軸足という点で、リアルとSNSなどデジタルのどちらに日常性を感じるかのバランスがよりデジタル寄りに移ってきているという変化です。

特に、後者のSNSでの日常をリアルでも実感したいという意図での消費傾向は、今年様々なバリエーションが出てきそうで、この観点にも注目していきたいです。

2025年のSprocketは生成AIによるCX変革に挑戦

最後に少しだけ、Sprocketの話もさせてください。

2024年は、Sprocketにも大きな変化がありました。次のようにプレスリリースしています。

Sprocket、顧客体験(CX)の全体最適を実現する3つの新プロダクトの提供を開始

2023年にCX改善プラットフォームとしてCIをリニューアルし、24年はプロダクトとしてもCX全体の改善をご支援できるラインアップを揃えることができました。

「テクノロジーで、人と企業が高め合う関係を作る」というミッションをより広範に実践できるようになったのはSprocketとして嬉しい限りです。

生成AIがほんものを生み出せるようになったという変化は、Sprocketとしても積極的に活用していますが、25年はより事業の根本的なところにAIを活かしていけるよう試行錯誤を繰り返していきます。

顧客体験を変革しようとされている皆さまのお役に立てるアウトプットを出していきますので、ご期待いただければ幸いです。

本年もどうぞよろしくお願い致します。

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