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CSRとは? 企業がCSR活動を行うメリットやCSRの7原則、7つの中核主題とは? CSR活動事例も紹介
日本企業がCSR活動を行うことが一般的になってきました。なぜ、企業はCSR活動を行うのでしょうか? 企業やCSR活動をするにあたっての国際規格で定められた原則や具体的な企業のCSR活動事例を紹介するので参考にしてください。
CSR(企業の社会的責任)とは?
CSR(Corporate Social Responsibility)は、企業が果たすべき社会的責任のことです。企業の競争力にも大きな影響を与えることがあり、近年では社会からの関心も高まりつつあります。この記事では、CSRの概要や企業がCSR活動を行うメリット、活動の具体例などを解説します。
企業の社会的責任を意味するCSRとは、取引関係先・消費者・投資家・従業員などからの要求に対し、適切な意思決定を行うことです。また、環境活動や寄付活動といった社会貢献に対しても、責任を持って活動していく考え方を指します。担うべき役割や責任、影響力は各企業によって変わるため、それぞれの企業が課題を見つけてCSRをつくっていきます。
CSRの考え方は2000年代以降から議論され始め、徐々に社会全体へ広がっていきました。中には、CSRレポートを年単位で公開する企業もいるほどです。
企業が永続的に存在していくには、社会とのつながりが非常に重要となります。企業の動きに敏感な消費者が増えている昨今、利益のみで企業価値を判断するのが難しくなっています。そのため、自社の活動が社会へ与える影響に対して責任を持ち、事業存続の意識を高めていくことが必要です。
CSRが世界や日本の企業に広まった理由
CSRが世界や日本企業に広まった理由は、主に以下4つが挙げられます。
- 自然災害
- 環境汚染
- 人権問題
- 企業による不祥事
上記のような環境問題・社会問題の深刻化は、多くの人の生活に深く関係する要素です。さまざまな問題が顕在化する中で企業が存続していくには「企業自らが社会に貢献する存在であるべきだ」と考えられています。
そこで、2010年11月1日に国際標準化機構(ISO)から「ISO26000」と呼ばれる手引きが発行されました。ISO26000とは、組織向けに開発された社会的責任に関するガイダンス文書です。持続可能な発展への貢献や、多様性・人権の尊重を目的として作られているのが特徴です。
あらゆる企業に適用可能であり、CSRに取り組む際の参考書として活用されています。ISO26000の発行により、国内のみならず世界各国で抱える問題に対してもCSRを掲げる企業が増えています。
企業がなぜCSR活動を行うのか?どんなメリットがある?
企業がCSR活動を行うことには、多くのメリットがあります。CSRへの取り組みによって、どのような企業価値の向上が期待できるのかを、以下で解説します。
1.企業評価が向上する
企業がCSR活動を行うことで、社会からの評価が上がるというメリットが期待できます。企業評価の向上によって得られる効果はさまざまあり、主に以下3つが挙げられます。
- 取引先・顧客・株主などからの信頼度が上がる
- 同業他社の差別化に役立つ
- 安定的かつ円滑に資金・資材の調達ができる
CSRの取り組みで社会的評価や企業イメージが向上すると、販路の拡大にもつなげられるでしょう。
2.企業の認知度が向上し、セールスや採用活動に貢献してくれる
CSR活動は、企業の認知度アップとともに、自社製品の理解促進にも役立ちます。ブランドイメージを上げつつ企業の名を市場に広めることによって、売上・利益アップも期待できるでしょう。
CSR活動によるメリットは、認知度の向上や売上アップだけではありません。積極的なCSRの取り組みは、新卒・中途採用の際にも効果を発揮します。CSRの活動によって親しみやすさや共感を得られるため、求職者にとってプラスなイメージを与えられます。新卒・中途採用の際にCSR活動をアピールすることで、採用活動がしやすくなるのは大きなポイントです。
3.社員のコンプライアンス意識が向上する
CSR活動を行うことで、社員のコンプライアンス意識の向上が期待できるのもメリットです。ルールに従い、公平に業務を進めることを指すコンプライアンスは、現代社会において重要な視点です。
企業の社会的責任を指すCSRは、企業コンプライアンスの基礎となります。万が一コンプライアンス違反が社会に知れ渡ると、大きな責任を負うことになりかねません。CSRへの取り組みで、社員の法的意識が向上して違法行為を防止できれば、企業へのバッシングなどのリスク軽減にもつながります。
社内に横断的なコミュニケーションが生まれる
CSR活動は社内全体で取り組むことが多いため、横断的なコミュニケーションが生まれやすくなります。これまで交流がなかった従業員同士のコミュニケーションが増えることで、以下のメリットが期待できます。
- 新しいアイデアやイノベーションが生まれやすくなる
- 社内全体の共通意識や仲間意識が強くなる
- 従業員のモチベーションが上がって生産性の向上につながる
社内でのコミュニケーションの活性化は、従業員の幸福度や企業への信頼度アップにも影響するでしょう。
CSRとSDGsの違いは何?
企業の社会的責任であるCSRに似た言葉として「SDGs」がありますが、意味合いは異なります。CSRは「顧客や株主などから信頼を得るために、企業が行う社会貢献活動」を指します。社会からの期待を察知し、信頼獲得のための活動を自由に選択できるのが特徴です。
SDGsは「持続可能な社会を実現するために行う企業活動」となります。解決に向けて行うべき問題が「17の目標」と「169のターゲット」によって明示されています。活動を通じて利益を上げるものではないCSRに対し、ビジネスとして社会問題などを解決するために動くのがSDGsです。
とはいえ、企業の持続的な成長は、結果的に社会全体の持続性を上げることにつながります。CSR・SDGsともに、持続可能な社会づくりを目的としている点は、同じであるといえるでしょう。
国際規格(ISO26000)で規定されたCSRの7原則、7つの中核主題とは?
社会的責任の国際規格とされる「ISO26000」には、基本となる「CSRの7原則」「7つの中核主題」があります。CSR活動を行う上で尊重すべき「CSRの7原則」と「7つの中核主題」の内容を、詳しく見ていきましょう。
CSRの7原則
CSRの7原則は、CSR活動における基本的な概念です。7原則の考え方を、以下の表にまとめてみました。
CSRの7原則 | 概要 |
---|---|
説明責任 | 企業自らが社会・環境などの外部に与える影響を説明し、責任を負うこと |
透明性 | 企業自らが社会や環境に影響を与える意思決定と、事業活動の透明性を保つこと |
倫理的な行動 | 誠実・公平であるべきなど、論理的に行動すること |
ステークホルダーの利害の尊重 | 顧客・株主・従業員などに配慮して対応すること |
法の支配の尊重 | 各国の法を尊重し、守ること |
国際行動規範の尊重 | 法律のみならず、国際行動規範も尊重すること |
人権の尊重 | 事業活動において人権を尊重し、重要かつ普遍性の両方を認識すること |
CSRの7原則は、以下で解説する7つの中枢主題を行うために、踏まえておくべきものとなります。
CSRの7つの中核主題
7つの原則に基づいて企業自らが課題を見つけ、優先順位を決めるために明示しているのが7つの中核主題です。具体的な中核主題の内容は、以下のとおりです。
CSRの7つの中核主題 | 概要 |
---|---|
組織統治(ガバナンス) | 組織目的を追求する上で、有効な意思決定の仕組みを持つ |
人権 | 直接的な人権侵害だけではなく、間接的な影響も考慮して改善に努める |
労働慣行 | 雇用創出・賃金などは、重要な経済的・社会的貢献である |
環境 | 環境の持続可能性は、人類を存続させるための前提条件である |
公正な事業慣行 | ほかの企業と取り引きを行う際には、社会に対して責任ある倫理的な行動が求められる |
消費者課題 | 消費者に対して、安全衛生の保護・持続可能な消費プライバシー保護などの責任を持つ |
コミュニティへの参画及びコミュニティの発展 | 活動拠点がある地域への発展・貢献を目的として、幅広くコミュニティへの参画を図る |
CSR活動では「組織としての意思」がポイントのため、上記7つの中核主題を軸にして行うことが重要となります。
企業のCSR活動の具体例
CSR活動には多くのメリットがあることから、さまざまな有名企業が力を入れています。ここでは、数ある大手企業の中から「住友林業」「ヤクルト」「リコー」の3社によるCSR活動の事例を紹介します。
住友林業の「プロジェクト EARTH」
林業や住宅事業などの事業を行う住友林業は、植林活動によってCO2を相殺する「プロジェクト EARTH」という取り組みを実施しました。「プロジェクト EARTH」の具体的な計画は、主に以下2つです。
・2009~2016年度までに販売するすべての注文・分譲住宅を対象として、2,400haの土地に約480万本を植林し、植栽後10年間にわたり育林管理を行う
・荒れ果てた土地の生態系回復を目的にした「環境植林」と、地域貢献や持続的な森づくりを行う「産業植林」を組み合わせる
さらに、木を伐って使用後に再度植えるなどの持続可能なサイクルを行うことで、地球温暖化防止にも貢献しています。住友林業は木の利用拡大を目標とし、大規模な木造建築物建設技術の開発も進めています。
ヤクルトの「愛の訪問活動」
株式会社ヤクルト本社は、1972年より「愛の訪問活動」を実施しています。愛の訪問活動とは、ヤクルト製品を宅配する女性スタッフが、ヤクルトを届けながら一人で暮らす高齢者の安否確認や話し相手になることを目的とした活動です。この社会貢献活動はボランティア関係者をはじめ、行政の福祉担当者からも高い評価を受け、以下のような賞を獲得しました。
・1991年に一般財団法人経済広報センターから「優秀企業広報特別賞」を受賞
・1994年にボランティア功労者として「厚生大臣表彰」を受賞
加えて、敬老の日になると愛の訪問活動で訪問している高齢者に対し、お花やメッセージカードを渡す活動も行われています。
リコーの「地球環境保全:えなの森プロジェクト」
精密機器などを製造するリコー三愛グループの企業である「株式会社リコー」は、2010年に森林保全活動を開始しました。岐阜県南東部の恵那市にあるリコーエレメックス恵那事業所には「リコーえなの森」があります。リコーえなの森は40ha以上ある社有林のことで、1963年に工場建設のために取得しました。
えなの森プロジェクトは、約50年の生産活動によって社有林から恩恵を受けてきた感謝と、今後も共存していく思いを込めて開始されたものです。2014年には、地域団体「えなの森中山道里山協議会」を結成し、地域企業と力を合わせて地球環境保全やコミュニティ発展に関わる活動を行っています。
CSR活動で社会貢献や企業ブランディングにつなげよう
環境問題・社会問題などは、日本のみならず世界各国で関心が高まっています。企業への注目は、利益以外に社会的な活動・コンプライアンスなどにも集まっていくでしょう。
CSR活動はボランティアとしてだけではなく、企業が社会の一員となって存続するための必須事項といえます。自社の中で「どのような活動が必要なのか」をしっかりと考えた上でCSRを掲げることが、社会貢献や企業ブランディングにつながる第一歩です。
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