一人歩きしてしまった「UX」を、今一度確認する(社内勉強会)
今回は、2019/11/22に開催した社内勉強会の内容から一部を抜粋して紹介します。テーマは「UXとユーザー」です。「UX」という一人歩きした”流行り言葉”は終わりを迎えようとしていますが、改めて「結局「UX」って、なんだったっけ?」を確認をしました。
IAの上野裕樹です。
ちなみに、今回の参加者は会議室に6人、オンライン(リモート)で3人参加しました。Sprocketは働き方がフレキシブルなため、日常的にオンラインで会議や勉強会に参加しています。
UXと聞いてどんなことをイメージしますか?
- UI/UX?
- UXデザイン?
- UXデザイナー?
- UXライティング?
- UXエンジニア?
- UXのためのボタン?
- UXデザインにアニメーション?
あるいは、「“UXをやれば”何かすごいことが起こる」とか、「なんとなくユーザーのための全部」とか、そんなイメージもあるかと思います。Sprocketの社内でも、まだまだ画面を見て「そこのUXを変えたほうがいい」といった使われ方をします。
このあとは、「そもそもUXって、なんだっけ?」を中心に、考えていきます。
UXについて
UX白書
「UXってなに?」という質問には、世界中のUX研究者30人が集まって作られた『UX白書』を勧めています。この『UX白書』は12ページと短いのものの、一度読んだだけでは理解できない難しさもあります(笑)。
冒頭で「UXは一つに定義できない」という告白から始まっている通り、定義自体が掲載されたものではなく、基本コンセプト・概念が整理されて書かれています。
ここでは、その『UX白書』から、さらに要点を抜き出します。
UXとは、次のようなものである。
- UXは一般的な概念としての経験の一部です。UXはシステムを通じた経験であるため、より限定的です
- UXはシステムとの出会いを含みます。積極的利用、個人的利用だけでなく、例えば他者がシステムを利用するのを観察するなど、より受動的にシステムと関わることも含みます
- UXはある個人に固有のものです
- UXは過去の経験とそれに基づく期待に影響されます
- UXは社会的、文化的な文脈に根ざしています
UX白書日本語訳より引用
JIS Z 8530:2019 (ISO9241-210:2010)
ISO(JIS)には明確な言葉の定義が書かれているので、UXという言葉でコミュニケーションロスが発生する時は、私はこちらで説明することが多いです。
(そして、大体の場合、それ以上により具体的に説明をすることになりますが。。。)
ユーザーエクスペリエンス
製品、システムまたはサービスの使用及び/又は使用を想定したことにより生じる個人の知覚及び反応
- 注記1:
ユーザーエクスペリエンスは、使用前、使用中及び使用後に生じるユーザーの感情、信念、し好、知覚、身体的及び心理的反応、行動など、その結果の全てを含む。- 注記2:
ユーザーエクスペリエンスは、ブランドイメージ、提示、機能、システムの性能、インタラクティブシステムにおけるインタラクション及び支援機能、事前の経験・態度・性能及び人格から生じるユーザーの内的身体的な状態、並びに利用状況、これらの要因によって影響を受ける。- 注記3:
ユーザビリティは、ユーザーの個人的な目標の観点から解釈されたとき、通常はユーザーエクスペリエンスと結びついた知覚及び感情的側面の類を含めることができる。ユーザビリティの基準は、ユーザーエクスぺエンスの幾つかの側面を評価するために使用できる。
- * システムとは、
既成ソフトウェア製品、特注の業務システム、プロセス制御システム、バンキングシステム、ウェブサイト、ウェブアプリケーション及び自動販売機、携帯電話、テレビといった消費者向けの製品など、一般にシステム又はサービスのこと。
JIS Z 8530:2019 (ISO9241-210:2010)より引用
『人間中心設計の基礎』(近代科学社)
こちらには下記のような記述があります。
真のUXは、単に顧客が欲しいモノを与えたり、チェックリストで検証できるような特徴を提供したりすることではなく、それ以上のことである。
企業が高品質のUXを達成するためには、エンジニアリングやマーケティング、グラフィックデザイン、工業デザイン、インターフェースデザインなどの多様な取り組みを連続的に結合しておくことが必要である。
ユーザーについて
UXのUとは「ユーザー」です。「ユーザー」という言葉はよく耳にしますが、「ユーザー」はどのような意味が含まれているか、改めて確認をしていきます。
ユーザーとは
JIS Z 8530:2019 (ISO9241-210:2010)では、『製品とやり取りする人間』。
ISO/IEC 25010では、『利用者』として、下記の整理がされています。
システムを使用する間、システムからの恩恵を受ける個人又はグループ。
注記:利用者又は運用者の役割は、同一の個人又は組織の中で、同時に又は順番に担う。
製品やサービスの品質からUXを把握する
UX自体の定義と内容を、製品やサービスをデザインする立場から理解しようとするときには、UXに関するモデル図が参考になります。ただ、『UX白書』に書かれているとおり、これらのモデル図は、UXそれ自体を表現しているものではない点には留意する必要があります。
The Elements of User Experience
「Webにおける」という状況下でUIに主眼に置かれたデザインのプロセスが、ユーザニーズからビジュアルデザインに至る5つの階層(表層(Surface)、骨格(Skelton)、構造(Structure)、要件(Scope)、戦略(Strategy))があり、表層の目に見える部分だけが対象ではないことがわかる図です。
http://www.jjg.net/elements/pdf/elements.pdfより引用
User experience honeycomb
このシンプルなのに奥深いUXハニカムは、設計前・中・後のいつでも立ち戻って考えられる思考のフレームワークとして使っています。UXハニカムは「有用な」「使いやすい」「好ましい」「見つけやすい」「アクセシブルな」「信頼できる」「価値のある」と、UXに様々な側面があることを示しています。例えば、製品の能力として捉えているので、評価指標としても利用できます。
http://semanticstudios.com/user_experience_design/より引用
UX maturity model
UXの成熟度モデルとしてかかれている『UX maturity model』は、Lv1~Lv4の成熟度レベルの段階を示しています。注目したいのは、この図が含まれる文書の中で、UXに関する属性の基礎としての項目を記載している点です。個人的にはこれらの項目はUXハニカムと同様に、視点の抜けがないかの参考になります。
UXに関する属性の基礎としての項目
- 使いやすさ
ユーザーインターフェースは、ユーザーマニュアルや人間の介入などの外部支援なしで使用できるほど直感的ですか?- 使用の速度
ユーザーインターフェイスは、ユーザーが最小限の時間枠で目標を達成できるようにするスムーズでシームレスな対話を促進しますか?- 学習可能性
ユーザーインターフェイスは、予測可能な視覚パターンと相互作用パターンを順守して、学習曲線を減らしますか?- 一貫性
共通の要素は一貫した方法で機能し、動作しますか?- コンテンツ
ユーザーインターフェイスは情報を伝達し、ユーザーに適切に対処しますか?- アクセシビリティ
インターフェイスは、基本的なアクセシビリティガイドラインとベストプラクティスに従っていますか?- 柔軟性
インターフェースは、そこに組み込まれた情報から、初心者から熟練ユーザーまでの操作エラーを削減しますか?- 美学
ユーザーインターフェイスは、読みやすさと読みやすさ、適切なルックアンドフィールのために設計されていますか?- エラーからの回復
ユーザーがエラーから迅速に回復するのにシステムは役立ちますか?- ヘルプ
システムはタイムリーなヘルプを提供しますか?ヘルプは簡単にアクセスできますか?- ブランドリコール
サイトでの全体的なエクスペリエンスは、製品の予想ブランドと一致していますか?- 説得力
製品は、当初のユーザーの目標でなくても、エンゲージメントファクターが増加する特定の操作を行うユーザーに対して、支援や働きかけをしていますか?- 差別化
製品は、競合他社と比べて明確な利点を伝えていますか?例として、ユニークなセールスポイント、付加価値機能、または複数のデバイスにわたる統合が含まれます。- より良い
製品は、製品を使用する過程で「より良いもの」に貢献し、エンドユーザーとの感情的なつながりを生み出しますか?
Prachi Sakhardande, Rajiv Thanawala (2014)より引用
そのほかのモデル
ここで紹介したモデルの他にも、『UX Wheel』 や、『UX Treasure Map』など、色々あります。どのモデルでも図が象徴として記憶に残りますが、その図が出てくる背景や理論で全く違う受け取り方になるので、それぞれのモデル図が出現するコンテンツを一読するとよいかと思います。
最後に
今回の勉強会では、直接的に業務のタスクに落ちるものではありませんが、製品開発やサービスを考える前提となるものになります。勉強会直後の参加者は「なるほど」から「まだよくわからない」まで理解度にばらつきがありました。ただ、その後のディスカッションで「あー!なるほど!」と変化していき、よい学びの時間になったように思えました。
今後も、このような社内勉強会を通じて、お客様への提供価値を高める活動をしていきたいと思います。
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