オムニチャネル、パーソナライズの情報提供を目指す:医療・製薬業界のデジタルマーケティング
株式会社エム・シー・アイ(MCI)とSprocketは、医療・製薬業界に向けたデジタルマーケティング推進で協業することになりました。今回は、株式会社エム・シー・アイ取締役ヘルスケアバリューチェーン事業部事業部長の河南吉孝氏に、協業の意図や目指すことについてお話をうかがいました。
独特なルールのある医療・製薬業界のマーケティング
−−まず、MCIさんの事業概要について教えて下さい。
河南氏:製薬企業のマーケティング支援を行っています。大きく分けると2つの事業があり、一つは医師を対象にしたマーケティングリサーチ事業、もう一つが製薬業界専門のデジタルマーケティング事業です。後者は、医師・患者向けにインターネットを通じて医薬品情報のプロモーションを行っています。
−−今回、Sprocketと協業することになった経緯は?
河南氏:我々は主に、製薬会社各社が運営する医師向けサイトの支援をしています。多くが会員制サイトであり、薬事法の関係上、医療用医薬品の詳細な情報は、医療関係者に限定された環境が必要なのがその理由です。
製薬業界では、MRが医師を訪問し、医薬品に関する様々な情報を提供します。また医師のインターネット利用度が年々高まる中、ウェブサイトでも、効率的に欲しい医薬品情報が探せるような、おもてなし感が必要だという課題を感じていました。そんな時に、Sprocketさんを紹介され、我々の課題解決にマッチすると考えました。
Sprocketさんには、業界特有のカスタマイズ要求などにも積極的に応じていただいており、心強いです。ベンダーによっては、業界特有の機能開発に対してリターンを気にしたりして消極的なことがありますが、Sprocketさんの場合、リターンよりも医療の現場に貢献するという社会的に意義のあるテーマに共感いただいてプロジェクトを進めていただいており、信頼できると感じています。
−−Sprocketの立場として、今回の協業はいかがですか?
深田:医療、製薬業界は、正直我々のアプローチする先として目に入っていない業界でした。個別企業としての接点もほとんどありませんでしたし、医療、製薬系の企業がデジタルマーケティングにどの程度取り組んでいるのか、という実態もよくわかっていませんでした。
実際、MCIさんとお話する中で、かなり独特な業界であることがわかり、業界に明るくないと何もできないということを実感しました。我々単独で入ることはできなかった業界である一方、MCIさんは各社さんと丁寧なリレーションを築いてお仕事をされており、安心感がありました。プロジェクトでもMCIさんがリードしていただく部分、我々に任せていただく部分がはっきりしてわかりやすいです。Sprocketは独自性の高いツールだと思いますが、踏み込んで進めていただけるのはありがたいです。
以前ブログにも書きましたが、医療・製薬の情報公開は、河南さんがおっしゃるように、社会的に意義があると同時に、命に関わることなので重たいテーマでもあるので、我々もしっかり取り組まないといけないと思っています。
まずは業界共通課題の解決にSprocketを活かす
−−どんな風に取り組みを進められていますか?
河南氏:一社の個別課題に対応する前に、見えている業界全体の課題を解消していくことを目指しています。方向性は2つあり、一つは医師に向けて、もう一つは患者、潜在患者を含む生活者全般に向けての活用です。
医師向けに対しては、Sprocketのガイドやツアー機能を導入することで、情報を探しやすくして効率的に医薬品の理解を深めていただくことができると考えています。
一方患者向けについては、まだまだこれからの状態で、業界全体として、まだ静的なナビゲーションでしか発信できていないサイトも多くあります。病気に悩まれている方が情報を求めてサイトに来たのに、情報を見つけられずに離脱するのは非常に不幸な状況です。
例えば病気の診断のセルフチェック、疾患の専門医がいる病院検索などのコンテンツがありますが、どういった情報を経由してコンテンツを閲覧いただくと、疾患への理解度が増して来院に繋がるのかということを今後調査していきたいですね。一社毎では予算も機会も限られてくるので、業界横断でサービスを提供している我々がそっせんして高度化を推進していきたいです。Sprocketを使って、疾患の理解、早期受診に貢献できればと思います。
信頼できる情報があれば医師は患者を救え、患者は不安を減らす
−−具体的に動いている案件は?
河南氏:医師向けではすでに4つのプロジェクトが進んでいます。そのうち2つはすでにリリースされています。メディカルトリビューンさんは、2015年の9月から稼働しており、成果が出ています。医師にSprocket Advanceのゲーミフィケーション機能が受け入れられるという事例が出てから、各社さんの反応がよくプロジェクトが進むようになりました。
今、準備している案件として希少疾患の情報サイトがあります。希少疾患というのは、日本で治療中の患者が100人くらいしかいないような病気です。そういう疾患の治療ができる医師は限られています。
希少疾患の分野では、患者を発見しないと救うことができません。一般小児科、眼科など、希少疾患の症状を見つけやすい一般診療科の医師に向けて、こういう症状を持っている患者がこの疾患だということを啓蒙しています。専門外の医師への理解を促すことで、自分の患者の該当症状に気づけば、患者の早期発見に繋がります。手遅れになる前に正しい治療を受けられるんです。実際、昨年ではこうしたウェブサイトでの情報発信を通じて、5人の患者が見つかっています。こうした発見機会を増やすことができればいいと思います。
今後、開拓していきたい分野としては、一般生活者に向けて直接疾患についての啓蒙することです。今、1社さんでSprocketを導入した取り組みをやっています。
−−Sprocketの導入を進める中で、予想外のことはありましたか?
河南氏:やはりメディカルトリビューンさんで、予想以上の効果が出たことですね。ルーレットや経験値が記事の閲覧のモチベーションに繋がることは発見でした。
製薬会社の会員サイトでは、まずはおもてなしにフォーカスしていきたいですね。医師または患者に見ていただきたいゴールページを設定して、そこにたどり着くまでのシナリオをいくつか実施しながら、最適なシナリオを探っていきたいと思っていますが、ユーザの属性に応じてシナリオを変えられるなど、予想以上に柔軟性があるので可能性が広がっています。
先日も、社内でSprocketの勉強会を開催しました。社内にSprocketマスターとして育てている社員が2名いて、そのメンバーを中心にSprocketでできることを実装したサイトをベースに紹介し、シナリオのパターンやABテストの効果などについて、まだSprocketを知らない社員に共有しました。
案件については、我々の方で方向性を提案しながら進めており、まずは共通ナレッジを溜めていくことを目指しています。お互いに信頼しながら進められています。
−−Sprocketとしてはいかがですか?
深田:体制を整えて取り組んでいただいているので、非常にありがたいです。Sprocketとしては、これまでパートナー企業さんと動くことは少なくクライアントさんと直接やり取りすることが多かったのでパートナー企業さんにどのようなご支援をするべきかが見えていないことが多くありました。実際にこのような協業が具体化しだすと、我々のほうからもっとできることがあるなと感じています。勉強会などについては、我々の方から支援していきたいです。
協業が決まってから、ハイペースで案件をやっていますので、しっかりフォローアップしていきたいです。
河南氏:深田さんのセミナーで、最近のユーザの傾向として、ライトユーザが多く流し読みする人、すぐ離脱する人が多いというお話がありましたが、疾患啓発サイトに限れば当てはまらず、自分の体調の悪さを真剣に調べているヘビーユーザが多いかもしれないと思っています。そういう人に向けて、Sprocketがどうナビゲーションできるかは、考えていきたいですね。
深田:個人的な話ですが、私の子どもが生まれつきの血管の病気なんですが、それがかなり珍しいタイプの病気だそうです。通常の生活に支障はないのですが、見た目に明らかに異常がわかるので親としてはなんとか治療したいと思い、かなりいろいろな病院を探し、最終的に見つけたのが北海道のお医者さんでした。そこにたどりつくのに1年くらいかかりました。その病気についてまとまった情報がなく、医師が個人的にがんばって書いている記事などもあるのですが、その情報がどういう水準のもので信頼できるのかも判断できないのです。常に不安がつきまとっていて、自分たちが正しい方向に向かっているかもわかりませんでした。
こうした経験から患者の不安の気持ちは実感できるので、その不安を少しでも解消することに貢献できればと思っています。こうした自分の体験が仕事につながるとは思っていませんでしたが、Sprocketが不安の解消につながるというのは、非常にやりがいを感じます。
会員制サイトだからできるパーソナライズした情報提供
河南氏:製薬会社のサイトであれば、社内審査を通った信頼できる情報ですし、医師が患者に勧めることを想定して作っています。せっかくサイトに辿り着いたのであれば、しっかり見て疾患の理解を深めていただけるような仕組みにしたいです。
例えば、検索エンジンの検索結果からダイレクトに特定のページに辿り着いた場合、そこだけ見て離脱されてしまうことがありますが、Sprocketがあればガイドが表示され、適切なルートに戻すということができますから、そうした活用もしていきたいです。
さらにその先には、服薬の課題もあります。医師の指示通りしっかり薬を継続的に飲まないと、治らなかったり治療予定が狂うことがありますから、服薬のモチベーション維持向上施策としてSprocket Advanceに期待しています。
例えば、子どもに毎日注射を打たなければいけない治療薬。子どもも嫌がるし、親もつらい。そんな状態を少しでも軽減するためにSprocketのルーレットやレベル上げなどのゲーミフィケーションが活かせそうです。
−−今後の方向性としては?
深田:いろんなシーンでの活用シーンを持っていただいているのが嬉しいですね。Sprocketも進化の途中ですから、期待に答えられるようにブラッシュアップしていきたいですし、培ったノウハウをシェアしていきたいです。
河南氏:まずは顕在化している業界課題にフォーカスしたいので、おつきあいいただきたいです。そこからさらに先に進めていきたいですね。
製薬会社のサイトは、会員制サイトですから、個人が特定できる環境でデジタルマーケティングができることも大きいです。A先生というように個人に細分化して体験を提供することもできると思います。製薬会社の営業担当者が医師に直接情報を提供する場合でも、A先生はすでにサイトでこの情報を見ているから、この話をしようというように、オムニチャネルで、パーソナライズしたコミュニケーションができます。
深田:個人が特定できるという恵まれた環境なので、新しいこともやりやすいですね。いろいろなシナリオにチャレンジし、先例を作っていきたいです。
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