なぜ離脱するのか?ローデータの分析で見えてくるユーザ行動の真実:Sprocketの裏側
Sprocketの強みの一つが社内にデータ分析を専門としたチームである「データマーケティング&サイエンス事業部」があることだ。今回は、データマーケターの内野 明彦氏をゲストに迎え、Sprocketの深田とデータマーケティング&サイエンス事業部の寺本とともにディスカッションを行った。
この部署では、アドバイザーとして、データマーケターの内野 明彦氏を迎えており、内野氏のデータ分析の哲学を学びながら、Sprocketの付加サービスであるローデータ分析サービスを提供している。
今回は、内野氏をゲストに迎え、Sprocketの深田とデータマーケティング&サイエンス事業部の寺本とともにディスカッションを行った。
データを積み上げることで迫力ある提案ができる
深田:内野さんをSprocketのアドバイザーとして正式に迎えたのは2016年1月ですが、知り合ったのは3年ほど前になりますね。内野さんは、データ分析とマーケティングの両方を深く理解されている方です。世の中には、データサイエンティストもマーケターもたくさんいますが、両方ができる人という人材は少ないですよね。
マーケターの方はデータは苦手という方が多いですし、データサイエンティストの方は、マーケティングの観点が抜けていて、両者にギャップがあるのですが、内野さんは両方を兼ね備えていて、いただくアドバイスも的確で、非常に勉強になっています。何よりも、いつもご自身ででデータをさわって自分で分析されているので、アドバイスにしろ意見にしろ、”生きている”感がとても強いです。
内野:そうですね、私はデータを触るのが好きで、逆に実際のデータを触っていないと怖いという感覚があります。企画には着眼点や発想も大事ですが、やはり実体験みたいなものが重要だと思っており、まさにその素材となるものがデータです。「神は細部に宿る」といつも考えています。
私はいろいろなクライアントのプロジェクトで、データ分析のアドバイザーをしていますが、その中でも寺本さんはビジネスイシューをとらえた上でデータ分析をされているので、非常にいいですね。
寺本:ありがとうございます。自分で分析すると細かいところまでわかりますし、ロジックの積み上げによる提案ができます。内野さんの言葉で言うと提案に「迫力が増す」んです。
内野:データを触った人にはわかる感覚だと思います。マーケターの人も分析ツールを通してデータを見るのは好きという方は多いですが、ローデータを自分で解析するというとできない方が多いですよね。調査データなどの場合、最初から目的や結論ありきで調査項目を設定してしまうので、データからの探索が足りないことがあります。だからこそ、ローデータを触って自分の手で分析することで見えてくるものがあります。
そしてもう一つ重要なことが、データにしても分析の切り口にしても、最小粒度という限界を知っておくことですね。手間暇をかけて分析すると、データの限界も見られます。
能動的な分析アプローチは、ローデータと向き合って初めて可能になる
深田:Googleアナリティクスなどの分析ツールが充実しているから、ローデータを触れなくなっているということもありますね。
内野:分析ツールも進化していますからね。Sprocketの場合は、一番細かいところまでユーザの行動を見た上で、分析や施策の評価の視点を抽象化してレポーティング機能に落とし込んでいるところが強みだと思います。
ちなみに私はいつもSprocketが収集してきたローデータだけを見ているので、Sprocketの機能そのものにはそこまで詳しくありません。逆にそこがいいと思っていて、知りすぎているとSprocketありきでデータを見てしまいますが、そこに縛られずにデータと向きあえています。ユーザの行動データを元に、ユーザを分類して、さらにユーザにどうなって欲しいかという視点でデータを紐解いていくということをやっています。
寺本:ローデータを元にした分析では、例えばECサイトでユーザがカートに商品を入れた後に、どんな行動をしているのか。コンバージョンするユーザ、しないユーザの行動の順序といったパス分析をしています。
わかってきたのは、カートに商品を入れた後に、他のサイトを見に行ってしまうと戻ってこないことが多いですね。あとはカートに入れるときにログインに失敗して、そのまま離脱するパターンです。こうしたユーザに対して、Sprocketのシナリオでケアすることでコンバージョン率を改善できることがわかってきました。
内野:ユーザの行動パターン分析など、細かい分析は他の分析ツールも含めてズバッとできるものはありません。ローデータであれば見たいものが見られます。分析ツールだけからしかデータだけだと、見たいけど見られないデータがあり、この差は大きいですね。
それから分析ツールの管理画面とローデータ分析では、分析のアプローチが違うということも指摘しておきたいです。受動的か、能動的か、ということですね。
管理画面は、用意されているレポートを選ぶというところで受動的です。ローデータの場合は、データをどうみるか、どう分類するかと考えるので、能動的なアプローチになるので、分析の視点が大きく異なります。
ちなみに、世の中の有償ツールなどでローデータを確保して、分析をしようと思うとそれなりののコストが発生してしまいます。
データを収集・蓄積するというところだけでも、Sprocketは非常に価値のあるツールですよね。
データ分析で解約の予兆を見つけ、Sprocketのシナリオがピンポイントでフォローする
深田:ローデータはどういう視点から見て、どういう分析につなげていくのでしょうか。
内野:Sprocketという仕掛けを通してユーザの動きがデータになって出力されます。このデータからユーザの本来の行動をどう見つけるかにつきます。そのためには、ユーザの行動をミクロに見るだけではなく、大きな視点から見ることも重要です。例えば、1年という期間でデータを分析して、初めて買い物をしたユーザが、そのあと購入頻度がどう変わっていくか、ロイヤルカスタマーに成長していくか、ということをカスタマージャーニーの視点から見ることもあります。年レベルの行動を時系列で見ることもできますし、集約してみることもできます。とにかくデータの奥にいるユーザをデータを元に具現化するんです。
寺本:データマーケティング&サイエンスチームでは、クライアントへの個別対応サービスとして、顧客育成の視点からのデータ分析にも取り組んでいます。例えば、サービスを解約する人を引き止めたいというクライアントのニーズに対して、解約するユーザの予兆を分析するといったことですね。長期間に渡るデータを分析することで、その予兆もつかめてきました。
Sprocketでは、データを分析することがゴールではなく、その先のシナリオに活かして改善していくことがゴールです。解約の予兆に対してどうフォローするかをデータをもとに提案していきたいですね。
内野:他社のWeb接客ツールでは、クイックアクションというのでしょうか、その瞬間のコンバージョンの最適化を目指す部分最適で終わっているものが多いと思いますが、Sprocketの場合育成の最適化、LTVの最適化に取り組んでいるところが大きく異なると思いますよ。
深田:ローデータ分析は、クライアント固有のアドホックな分析なので、ここで得られた知見を共通化して管理画面に落とし込み、いずれは育成のシナリオの自動化まで目指したいですね。
寺本:クライアントにアドホックで分析した結果得られた最適なパターンを他のお客様にも提供していきたいですし、ゴールデンパス分析も管理画面からできるようにエンジニアチームとも検討を進めています。
データを何でも貯めこんでいくデータレイクソリューション
内野:アドホック分析では、クライアントの課題、環境、背景によって分析のアプローチや判断も変わってきます。そこは勉強しながらやっていくのですが、クライアントしか知らないことについては、聞きながら、相談しながら進めていきます。ですから、この仕事には、データ分析力、マーケティングの知識に加えて、コミュニケーション能力だったり、プロジェクトマネジメントのスキルも問われますね。
実際、そこまでそろったスキルセットを持っている人は稀なんですが、クライアントの信頼感を得られると、引き出せる情報も増えるので、より適切な分析ができます。
寺本:内野さんと一緒にやっていてありがたいのは、そうしたコミュニケーションについても教えてくれることです。
内野:データ分析のステップは、データを設計して蓄積し、データ分析ができるような形に加工するまでのステップ、そのデータを分析し意味付けを行うステップに分かれます。そこからさらに分析結果を施策にしてその効果を検証し仕組み化するというような流れになりますが、それぞれの段階で求められるスキルが異なります。最初のステップはデータの設計・蓄積をするシステム系のスキル、次にデータを分析したり統計的に処理するスキル、そして分析結果を施策にするプランナー、コンサルのスキルです。中でもデータを分析する人は、コミュニケーションだけでなく、企画や社内調整も求められますし、さらにどこから始めればビジネス的にインパクトがあるのか、という視点から逆算してデータ分析を設計するような感覚も求められます。
ちなみにSprocketの場合でいうと、ツール一つでこの流れを全部網羅できているんですよね。
深田:管理画面には、マーケターの方でもわかりやすいような見せ方をできるようにしていますし、次の施策に落とし込みやすいように作りこんでいます。
内野:今、データ分析の世界では、「データレイク(DataLake)」というのがキーワードになってきています。データレイクというのは、データを取得した状態のまますべて貯めておくという考え方です。貯めておけば、ローデータから、ETLなどの前処理ツールを使って必要なデータを抽出・加工し、後から好きなように分析できます。Sprocketの行動データも、データレイク的な志向にあり、全部のデータを取得できるのがいいですよね。
それからSprocket Advanceだと、ゲーミフィケーションの仕組みが入っているので、普通の行動データよりも、ユーザのモチベーションが感じられるデータが取得できるところが分析をしていておもしろいところです。ユーザの意図、意識が入っている温かいデータがSprocketからは取れるんです。
データ分析の入り口は、「Why、なぜ」を考えることです。なぜ、この人は買わずに離脱にするのか、この人はなぜ何度も購入するのか。行動だけの冷たいデータでは、なぜを導きにくいことがありますが、ユーザの鼓動が感じられるデータは分析しやすいです。
深田:マーケティング・オートメーションのツールだと、メールでのコミュニケーションを中心にしているものが多いですが、メールだと送信できる人もコミュニケーションも限られてしまいますよね。またABテストでその人に向けたバナーを発見して、提示してもユーザ本人は自分のバナーだと認識していなかったり。自分のために、というのが感じられない施策だと、ユーザの感情、刺さっているのかどうかというのは検証しにくいというのはあると思います。
寺本:データを細かく分析できるからこそ発見できる離脱ポイントもあります。その離脱ポイントを踏まえて、シナリオ設定で特定のセグメントにだけナビゲーションを表示するツアーを考えていますが、やるほどセグメント要件が細分化していきます。例えば、カートまでいって、トップに戻った人で、1時間以内の人。そういう人に刺さるメッセージは何かを考えて設計しています。もっと長い視点で、半年の購買傾向を見て、リピートの可能性が高い人にメッセージを表示するというようなシナリオも考えています。
条件が難しいですが、Sprocketであればそうした個別の状況を設定して、出し分けができるのはSprocketの大きなアドバンテージです。
内野:これからもデータ分析の視点からしっかりサポートさせていただきます。
深田:よろしくお願いします!
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