研究調査でも明らかに!クーポン配布のネガティブインパクト

行動経済学

イメージ:クーポンのイラストとその禁止マーク

クーポン施策の是非について、Sprocketとしては基本的に否定的な立場です。クーポンをばらまくと後々苦しくなる、割り引かなくても購入してくれるお客さんにも割り引いてしまう、クーポンで集まったお客さんは継続的な買い物をしない、などがその理由です。

この考え自体はWebマーケーターの方々にも賛同もらうことが多いのですが、正直なところ自分で言いながら常々理論的な根拠が弱いなと思っていました。ただ、故あって改めて消費者行動論に関する書籍を色々と読んでいたところ、この辺を説明してくれる学術的な研究結果はすでに一定あることがわかりましたので、自分の整理の意味でもまとめておこうと思います。

買うときに考える内的参照価格

クーポンを配布することが、消費者の購買意思決定の何に影響を与えているか、という話になるのですが、「内的参照価格」という概念がこの手の話をうまく説明できるようです。

内的参照価格というのは、何かの購買を検討する際に「その価格を比べる自分の心の中での価格」を指したものです。例えば僕はよくスタバでコーヒーを飲むのですが、他のコーヒーチェーンに行った時には確かにスタバのコーヒーショートサイズ(280円)と比べています。上島珈琲は確かSSサイズが310円と、スタバより量が少ないのに高いのでなんか損した気分になるわけですが、これは僕のコーヒー一杯分の内的参照価格が280円になっているからだということですね。

内的参照価格と、今目の前で購買を検討している商品の価格の差が大きいと割安感・割高感を感じるということになるのですが、クーポンの配布がこの内的参照価格にどのような影響をあたえるのか、という観点での研究はすでに一定程度実施されているそうです。

そうした研究結果によれば、基本的にはクーポン配布は内的参照価格と比べた時の割安感を生むので効果があるが、クーポン配布を続けるとその商品に紐づく自分の心の中の内的参照価格自体が下がっていってしまい、結果として割安感が薄まっていくという現象が心のなかで起きるとのこと。ワーストケースとしては、クーポンによる値引き後の金額と内的参照価格が一致してしまうことで、こうなると通常価格では買う気が起きなくなってしまいます。

クーポン配布によるネガティブインパクトについては基本的にこの話で説明ができてしまうのですが、こうなるとクーポン配布と内的参照価格の減少がどのように関係しているのかを知りたくなってきます。

クーポンと内的参照価格の減少についても色々と研究されているようで、クーポン配布の頻度が多ければその額の多寡に関わらず内的参照価格減少の影響が強いこと、値引き額が大きくても頻度が小さければその影響は弱いこと、といったことがわかっているとのこと。確かに、セールのように値引きが特別のイベントとして認識されれば通常価格への影響はそれほど受けない気がします。

なお、本件について参考としたのは『消費者行動論―購買心理からニューロマーケティングまで』です。クーポン配布が内的参照価格に影響を与える論文については一次資料をあたったわけではありませんが、本書中に参照先の記載があります("Effects of Dealing Patterns on Consumers' Internal Reference Price, Deal Expectations, and Price Perceptions")。

どうもこの辺を調べていると、どのようなクーポン配布が内的参照価格やあるいはブランド選好性にネガティブインパクトを与えないかということも結構研究されていそうですね。消費者行動論の方面は勉強不足だったので、折を見てまた調べてみようと思います。

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