イングレスにはマーケティングプラットフォームとしての将来はない
タイトルに「Ingress(イングレス)」とつけたのはある種意図的で、イングレスに限らず、位置情報を使った「コロプラ」でも「国盗り合戦」でも、あるいは僕らがトライした「MyTown(マイタウン)」でも、少し古くは「セカンドライフ」(これをゲームと言うべきかは別として)でも、結局はマーケティングプラットフォームとしては花開くことはなかったし、これからもないと思っている。
屍累々、ゲームのマーケティングプラットフォーム化
イングレスはとても良くできたゲームだと思うし、僕の周辺でもとてもハマり込んでいる人が何人もいる。でもやっぱりマーケティングプラットフォームとしてはうまくいかないだろう。
ゲームとしては正しく成立しているイングレス
ちなみに、誤解されるんだろうなと覚悟してる部分も正直あるんだけれど、イングレス自体をディスりたい意図は全くない。むしろ相当に気合を入れて作っていると思う。だけれど、いや、であるがゆえに、グーグルがあれだけ頑張って作っていてもやっぱりマーケティングプラットフォームとしては難しいなあ、という印象を僕は持っていて、だとすればこれは多分ゲームをマーケティングプラットフォームとするという取組自体に相当無理があるんだろうなと思わざるを得ない。グーグルで無理なら誰もできないだろうなと。
ただし、グーグル自体がイングレスをマーケティングプラットフォームにしたいとそもそも思ってないんじゃないかという気はするから、別にそれはそれでいいんだろう。ちなみにセカンドライフは、いまでも熱心なユーザは一定数いて、リンデンラボという会社も存続しているから、詳しくは分からないが一定の収益化ができているんだろうし、ゲーム(と呼ぶことを容赦してほしい)としては一定のコアなユーザが使い続けてくれれば成り立つので、イングレスもそうなるんじゃないかと思っている。
なぜ、難しいのか。1つはモチベーションのミスマッチ
僕自身はデジタルマーケティングの領域にいる人間なのでどうしてもマーケティングプラットフォームとしての可能性を見てしまうし、僕らの領域の中からも一部そういう声を聞くこともある。で、マイタウンという取組を自分たちでもやった。そういう経験からも、「あーやっぱり難しいんだな」というが現在の結論だ。
なぜか。
1つ目の理由は、モチベーションが合わないからだ。
ゲームのプレイヤーのモチベーションはどうしてもゲームをプレイすることにある。一方マーケティングをゲーム内で展開したい企業側のモチベーションは、プレイヤーに自分たちのブランドや製品に振り向いてもらうことにあるから、どうしてもそこが合致しない。ゲーム内において、企業や製品にはよほど工夫をしないとほぼ関心は持たれない。ここの設計がそもそも難しい。
いや、不可能じゃないとは思う。やりましたよ僕らも。今でこその手前味噌ですが、マイタウンはゲーム性とマーケティング性をかなりうまく融合させることができていたと思う。
自分の街にローソンが建てば、1プレイヤーの感覚として「なんとなく嬉しい」という気分を作ることができていたと思う。DL数も当時としてはそこそこいっていた。でも、やっぱりマーケティングプラットフォームとしては正直イマイチだった。
2つ目の理由、母数の限界
2つ目の理由は、母集団が結局は大きくならないからだ。
マイタウンをイングレスと比べるのは恐れ多いが、数十万人のユーザはいた。イングレスは世界で1000万人は超えているんだろうと思う。日本でもひょっとしたら100万人を超えているかもしれない。でも、マーケティングプラットフォームとして考えた時に、その母集団ははっきりいって少なすぎる。
LINEでスタンプ配布したほうがよほど多くのユーザにリーチできるし、ユニクロやマクドナルドを始めとして、すでに自社のアプリやサイトに数十万人や数百万人の会員を集めている企業はざらにいる。
たまたまゲームプレイヤーと自社の製品やブランドがマッチしていれば人数が少なくてもいいということはあるかもしれない。
でも、企業側からすれば、このゲームのユーザと自社がマッチしてるかなんてよくわからない。むしろ、いわゆるナショナルクライアント的な企業からすればなんだかマッチしていなさそうだ。
DMPを配備している企業なら、ひょっとするとオーディエンス拡張した時にバシっと合う、みたいなことが起こる可能性ももちろんある。でもおそらくゲーム側でDMPと連動できる接続インタフェースを持っていない。今後そっちに開発リソース割くとも思いにくい。グーグルならやれば実現できるとは思うけど、まあでも、現実的じゃない気がする。
Sprocketはゲームは作らない。楽しくなるしかけをゲーミフィケーションで作る
こんなことが頭をよぎるので、イングレスにマーケティングプラットフォームとしての可能性を見出す的な話を聞くたびに、それはないなあ~と思ってしまう。
あるとするなら、コロプラの物産展みたいな、ゲーム性にマッチするような、ニッチな領域のマーケティング活動の可能性を探るということくらいだろう。でもゲーム提供側のビジネスモデルからすれば、収益に大きなインパクトになるような数値にはなりにくいだろうし、である以上はそうした領域へのリソースも大して投下されないだろう。
やっぱりマーケティングプラットフォームとして考えるなら、企業としては自分のアプリやサイトにユーザに来てもらって、そっちを活性化させるというのが一番いいように思うし、僕自身がゲームよりもゲーミフィケーションに可能性があると思ったのもそういう思考があったからだ。
なので僕らはゲーム自体は作らないし、あくまで自社のアプリやサイトの活性化のためにゲーム的な要素を使うことはあっても(Sprocketには実際そうした機能があるけれど)、あくまでオウンドメディア活性化のための心理的刺激施策として使っている。
心理的な刺激というのはとても影響が大きくて、金銭的な刺激がなくても十分に機能させられるし、このアプローチは企業とユーザのモチベーションを合致させやすいので無理がない。
・・・ともかくそんなことで、ゲームはマーケティングプラットフォームにはならないなあと思ってるんですわ。
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