Sprocket 公式ブログ

マーケティングで人工知能が活きる領域、人間のクリエイティビティが活きる領域

2016/01/28 8:00:29

人工知能とディープラーニングを扱ったわかりやすい書籍

社内の機械学習系に強いエンジニアの奨めで「人工知能は人間を超えるか」を読みました。

東京大学の准教授で人工知能のトップ研究者である松尾豊先生が書いた本で、かなりわかりやすく人工知能、特にディープラーニングの可能性について説明してくれています。こうした分野に関心のある文系の人にもおすすめです。平明に書かれているので読みやすいです。

松尾豊先生が概要を説明した講義動画もあります
https://www.youtube.com/watch?v=GbmKWY7SLng

「ディープラーニング」という言葉を目にする機会はかなり増えてきたものの、ディープラーニングがそもそもどんなブレイクスルーであって、どんなことができるようになってくるのかということは僕自身もちゃんと理解できていなかったので、非常に参考になりました。僕らの事業とどのように関わってくるのかも、より理解が深まってきたので、読書メモがてら考えたことをまとめておこうと思います。

天気データを使ったディープラーニングの例

ディープラーニングの説明で最も参考になったのは天気を例に取った部分でした。間違いを恐れずざっくり書くと、

      1 全国都道府県の天気データ(47個)が元データ
      2 そのデータを使って特徴的と思われる10個のデータを作る
      3 その10個を使って、元の47個のデータの復元を試みる
      4 最も「いい感じ」で復元できた10個は、全国都道府県の天気をいい感じで表す特徴を備えていると言っていいだろう

という感じです。

4に書いている「特徴」とは例えば四国、九州、近畿、などといった隣接する地域で表現されるものだったりします。あるいは日本海側、太平洋側、といった海岸線に基づく分類かもしれません。

1の元データをいろいろな形で与えたり、時にはデータを欠損させたりなども含めて、繰り返すことで、より頑健な(どういう場合でも一定の精度で復元できる)10個の特徴に近づいていくわけですが、この10個に対してさらに同様の1-4の処理を繰り返していくことでさらに特徴が高次元になっていく・・・ということをやっているのがディープラーニングという代物だという説明でした(少なくとも僕はそのように理解しました)。

人間の認知の仕方と似ているとよく言われますが、確かになるほどという感じがします。Googleがネコの画像をネコと認識できるようになった、ということも様々なネコの画像を見ても同程度の精度でネコと判定できる頑健な特徴をうまく見つけることができた、というようなことなんだろうとわかりました。

猫を認識できるGoogleの巨大頭脳

マーケティングにディープラーニングは活かせるか?

いずれにせよ、マーケティング領域にディープラーニングの技術が入ってくるのは間違いなさそうですね。「人工知能が人類を上回ったら?シンギュラリティの後の世界を考える」という記事では、で人工知能に対しては割と否定的な見解を記述しましたが、若干アップデートしたほうが良さそうな気がしてきました。

ただ、ネコの画像の話と決定的に違うのは、ネコの場合は共通する特徴をうまく見つけ出せればそれでネコであることが説明できるのでよし、となるわけですがマーケティングの場合は共通する特徴を見つけてもおそらくマーケティング的には意味のない特徴になってしまうだろうという点です。

これはSprocketの戦略的アドバイザーでありデータマーケターの内野明彦さんと議論していても出てきた話題ですが、LTVの高い人に共通する行動、という観点でログを分析するとまず出てくるのは「商品を見て、カートに入れて、決済して」みたいな当たり前の行動になるよということがあります。

ですから当たり前の行動はノイズとして取り除いた上で、マーケティング的に意味がありそうな行動をうまく見つけないといけない、そこはどうしても人間が目で見て判断しないといけない、ということになります。

データの抽出、精査はどうするのか

これはディープラーニングでも同じことが最初の壁としてあるはずです。高次元の特徴として抽出されたものは、特定の行動になっている可能性が高い。だからそれは無視して、もっと低次元の特徴として抽出されたものの中にいい知恵があるかも、というのをどう見つけるのかを考えないといけない。

同じ「LTVが高い」というユーザグループを見ても、あるグループのユーザにはすごくよく当てはまる特徴だが、他には全く当てはまらない、という特徴もあるだろうと思います。

画像の場合は、途中の段階で抽出された特徴量を視覚的に見ればなんとなくそれっぽいかそれっぽくないかがぱっとわかりますが、行動データの場合は画像のようにいかない気がします。層の数や特徴量の数もそこそこのボリュームになるかと思いますのでしばらくは抽出された特徴の妥当性を人間がチェックしながらチューニングかけて・・・みたいなことを地道にやるような作業が想像されます。

ただこの辺を具体的にどうやったらいいのかはもう僕にはよくわからないので、データサイエンティストな人に是非解いて欲しいですね><

Sprocketでも持っているデータを活用して特徴を導き出せるようにはしていきたいと考えていますので、近いうちにこうした取組をやっていくつもりです。

ただいずれにしても、こうした技術がマーケターの仕事を奪うというよりは、むしろマーケターのアウトプットをより高品質にしていくための支援技術だということには変わりはないかと思います。かなりの程度人間が介在しないといいアウトプットにはならない(少なくともしばらくの間は)でしょう。

特徴がわかった次は?そこに人間のクリエイティビティと機械にまかせればいいことの差がある

また、もっと言えば「こういう属性の人がこういう行動を取っているとこの商品を買いそうだ」「LTVが高そうだ」「離脱しそうだ」みたいなことが仮にわかったとして、じゃあそういう人たちにどういうコミュニケーションを取ればうまく行動が変わるのかという点についてはなかなか機械が取って代わりにくい部分だろうと思います。

コミュニケーションの手法や内容にはかなりのバリエーションがあるでしょうし、それこそ人間のクリエティビティが発揮・要求される部分だと思いますので、過去の効果のあった手法を繰り返しても意味が無い部分な気がします。

単純なテキスト文面の生成や、バナー画像の生成あたりは自動化されていくだろうと思いますが、個別のコミュニケーションやアイデア出しについてはやはりしばらくは人間がやるんじゃないかと思います。Sprocketとしては色々なアイデアを仕組み化してデータとして蓄積できるようにしていくことはやっていく路線ですので、機械化を進める立場ではあります

例えばですが、先日公開させて頂いたNTTレゾナントさんの事例で考えると、「ベストアンサー」率が高くなるような文面の候補をある程度自動生成することや、候補文面をいくつかのパターンに分類し、過去の行動から効果がありそうな文面とユーザセグメントを自動的にマッチするといったことは機械がやれるようになるのではないかと思います。

ただ文面自動生成の方向性として「ベストアンサー」を選ぶのは、1)質問者のマナーである 2)回答者が喜ぶ 3)いい回答がつきやすくなる、などを与えるのは人間がやり、その路線で文面候補を機械が作ってくる、その中での選択は人間がやる、という感じではないかと思います。ユーザセグメントの選び方についてはひょっとすると機械がメインで考えたほうがいいかもしれませんね。人間ではわからない(理解できない)ような選び方をしてくるかもしれません。

この辺のチューニングは相当難易度が高いかと思いますが、逆に言えばこれをしっかり出来たところがデジタルマーケティング領域での人工知能活用において勝っていくんだと思います。

個人的にはこの1ヶ月位でディープラーニング周りについての基本的な理解は以前よりだいぶ進んだのでより取り組みの具体的なイメージは湧きやすくなってきました。

Sprocketとしても今後の重要な取組事項になることは間違いないと思います。

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Topics: デジタルマーケティング, ディープラーニング, 人工知能, ウェブ接客