MBOとは? メリット・デメリットやOKRとの違い、MBOシートの書き方を解説!

Sprocket編集部

MBO(目標管理制度)とは、従業員に目標を自己管理させ、その進捗や達成度によって人事評価を決めるマネジメント手法です。この記事ではMBOのメリット・デメリット、OKRとの違い、MBOの運用方法やMBOシートの書き方を詳しく説明します。

MBO(目標管理制度)とは?

MBO(Management By Objectives)は、組織のマネジメント方法の1つで、日本語では「目標管理」と訳されます。MBOは著名な経営学者のピーター・ドラッカー氏が提唱した概念で、個人またはチームが自ら目標を設定し達成度を管理することで、人材育成・人事評価につながるというものです。

日本では、1990年代後半から成果主義の導入とともにMBOが人事評価手法として着目され、日本流にカスタマイズされながら広く普及してきました。現在では多くの企業がMBOを取り入れています。なお、MBOという用語には事業買収手法の「Management Buy Out」もありますが、この記事では目標管理制度のMBOについて解説します。

MBO(目標管理制度)とOKRとの違い

MBOと似た概念に、Googleが採用したことで話題になったOKR(Objectives and Key Results)があります。どちらも目標設定のフレームワークですが、その目的や方法に違いがあります。

最も大きな違いは、OKRが組織全体の生産性向上を目的としているのに対し、MBOは上司による部下の人事評価を主な目的としていることです。このため、評価の頻度や共有範囲、目指すべき目標達成度などの方法も両者で異なってきます。MBOとOKRのどちらが向いているかは、組織の性質によって以下のように整理できます。

MBOが向いている組織はピラミッド型

MBOは、組織の管理体制が階層的に分かれているピラミッド型の組織に適していると考えられます。なぜなら、MBOにおける目標は、個人ごとに自ら設定するものですが、組織の目標・チームの目標と連動して設定することが求められるからです。つまりMBOは基本的にトップダウンの構造を持つため、階層的なピラミッド型組織と親和性が高いのです。

OKRが向いている組織は臨機応変型

一方のOKRは、臨機応変型の組織に適しています。OKRは組織の目的に合わせて個々の目標やタスクを設定し、フィードバックを通じて比較的短いスパンで修正していきます。したがって、変化に柔軟に対応していく性質の組織には、目標管理としてOKRのほうが向いていると言えるでしょう。

どちらも使いづらい組織がある

上記に述べたように、MBOとOKRのどちらが効果的かは組織の特性によって異なります。しかし、組織によってはどちらの手法も向いていない場合もあります。それは数値目標で管理することが難しい組織、例えば特定の事務や経理などルーティンワーク主体の部門です。これらの部門では、営業やマーケティングのようなコストカットや費用対効果を設定しにくく、定量的な目標設定・測定が困難なためです。

MBO(目標管理制度)の基本的な運用プロセス

MBOはどのように運用していくのでしょうか。基本的なプロセスを4つのステップに分けて紹介します。

プロセス1:組織目標の設定・共有

MBOの運用プロセスでまず行うのは、経営層・部門長による全社目標や部門目標の設定です。なぜならMBOの目標設定は、個人の目標達成が組織の目標達成に貢献できるよう、上位組織の目標に連動して設定するためです。全社目標や部門目標が決定したら管理職に共有し、上司から部下へ目標の内容や意図を伝えます。

プロセス2:個人の目標・行動プラン設定

次に、全社目標や部門目標を基準として、各自の個人目標を設定します。個人目標では、自身の立ち位置や役割を明確にし、組織の目標達成に貢献できるような内容を考えることが大事です。あわせて目標を達成するための具体的な行動プランを策定していきます。最終目標だけでなく、中間目標など段階的な到達点を設定すると、期の途中でも達成感を得やすく、モチベーション維持や進捗管理にも役立つでしょう。

プロセス3:進捗管理・フォロー

個人目標と行動プランを設定したら、自身で仕事を管理しながら、業務に取り組んでいきます。この間、上司は各々に任せきりにするのではなく、部下の目標達成に向けて進捗管理・フォローをする必要があります。定期的に上司と部下の面談を行うなど、確認や相談の機会を設けるとよいでしょう。目標達成に向けて課題があれば相談にのり、場合によっては目標や行動プランの軌道修正などサポートが必要な場面もあるかもしれません。

プロセス4:評価・フィードバック

評価時期が来たら、設定した目標に沿って上司が評価し、面談などでフィードバックを行います。評価は客観的に行い、本人が納得できるよう評価の観点・理由などをていねいに伝えることが必要です。以上のようなMBOの運用プロセスを、多くの企業では、次に紹介するようなテンプレートに沿ったMBOシートを作成して実施しています。

MBOシートとは

MBOシートは目標管理シートや評価シートとも呼ばれ、テンプレートに沿って目標設定・進捗状況・達成度などを入力しMBOマネジメントを行うためのツールです。上司や人事との面談の叩き台として使うほか、シートを随時確認することで進捗確認や軌道修正にも有用です。MBOシートは設定した目標とその達成までのプロセスを記録に残せるため、具体的な改善策や人材育成に役立ちます。上司が部下を評価する客観的な根拠となるため、部下も自身の評価に納得しやすくなるでしょう。

MBOシートの設定項目

MBOシートは一般的に以下のような項目で構成されます。

基本情報

被評価者の基本情報を記入します。項目は氏名・所属部署・役職・勤続年数などです。

業務目標

今期に達成を目指す業務上の目標を設定します。会社やチームの目標・課題と方向を合わせ、目標達成することで貢献できる内容が望ましいでしょう。業務段階などに合わせ、複数個の目標を設定することが一般的です。「〇月までに商品〇〇の受注件数〇〇件」のように、数値や達成時期を明示するなど、具体的・定量的に設定することが重要です。

アクション

各目標を達成するための具体的なアクションを記入します。業務の段階や目標の達成時期に合わせ、いつまでにどういったアクションをとっていくかを決定します。「1日〇件以上営業先を訪問する」「月〇回報告会を開く」のように、こちらも数値を使ってできるだけ詳細に設定するとよいでしょう。

振り返り

目標の達成状況、自己評価などを記入します。単に達成/未達成というだけでなく、未達の場合でも達成度合いをパーセンテージで表すなど、結果を定量的に記録します。また期末の最終結果だけでなく、日々の振り返りや中間報告にもMBOシートを活用し、進捗状況の確認や軌道修正を行っていきましょう。

フィードバック

上司からのフィードバック欄です。次の目標設定の基盤にもなるため、成果と課題をしっかり共有することが重要です。フィードバックは一方的な評価だけではなく、上司と部下がコミュニケーションを取り、次の目標設定に向けてモチベーションを高める機会でもあります。困難な目標に挑戦した姿勢や、設定したアクションを着実に実行していたかなど、結果だけでなくプロセスにも目配りすることが望ましいでしょう。

MBO(目標管理制度)の5つのメリット

MBOのメリットとデメリットについても知っておきましょう。まずMBOを導入するメリットは大きく分けて5つあります。

メリット1:部下のモチベーションが向上する

部下にとって、上司から言われるがままの目標や他人に課されたノルマでは、やる気を保ちにくい場面があるかもしれません。その点、MBOを取り入れることで、目標を自ら設定し実行する権限が生まれます。そのため、責任感とやる気をもって主体的に業務に取り組めるようになるでしょう。つまり、MBOによって、部下の仕事への動機付けが促進され、モチベーションが向上する効果が期待できるのです。

メリット2:部下が仕事を自己管理できる

MBOは目標を設定するだけでなく、目標達成に向けた仕事の管理も自ら行います。誰かの指示で動くのではなく、仕事を主体的にコントロールできることは大きなメリットとなるでしょう。仕事の管理には、スケジュールを見据えて着実に進行する、進捗を正しく把握し状況に応じて調整する、周囲と適切にコミュニケーションをはかるなど、さまざまな力が必要です。1人ひとりがこうしたセルフマネジメントの力を付けていくことで、人材育成にも大いに役立つでしょう。

メリット3:目標達成に向けた具体策を作りやすい

個人目標を設定しても、組織目標をなぞっただけのあいまいな目標や主観に頼った抽象的な内容では、達成のためのプロセスや評価基準を明確にできません。MBOでは組織と方向性を合わせながら、現状にもとづき個々に応じて細分化した目標を設定するため、達成に向けた施策を具体的に立てやすいというメリットがあります。

メリット4:チーム全体で目標を共有できる

メンバーが個別に独自の目標を立ててしまうと、組織の方向性と合致しない内容になったり、チームとしての共通目標のすり合わせに手間がかかったりします。その点、MBOは会社やチームといった組織の目標と連動して個人の目標を立てる仕組みです。言い換えると、チームの目標を全員が共有し、個人の目標とチームの目標の方向性が合っている状態をMBOのプロセスの中で実現できるのです。

メリット5:目標達成度の振り返りがしやすい

MBOによって1人ひとりの目標を設定し管理することで、自身の仕事ぶりや成果を客観的に振り返ることができます。改善すべきポイントも絞れますし、上司からのフィードバックや人事評価もしやすくなるでしょう。目標と成果を明確に照らし合わせて達成度を評価するためにも、目標は定量的・客観的に測れるように設定しておくことが重要です。

MBO(目標管理制度)の3つのデメリット

次にMBOのデメリットについて考えてみます。場合によってはMBOがうまく機能せず、以下のような問題が発生する恐れがあります。

デメリット1:部下のモチベーションが下がる場合がある

MBOでは上位組織で決まった目標と連動して個人の目標を設定していくため、求められる目標が部下個人の希望や意思と合致しないケースも発生します。部下が目標に対する納得感ややる気を持てるよう、上司から十分な説明とフォローが欠かせません。

また、目標の達成/未達によって人事評価するだけのノルマ管理のようになってしまうと、部下のモチベーションは下がってしまいます。結果的に、本人が達成しやすい表面的な目標ばかりを設定するようになってしまうかもしれません。

デメリット2:目標管理が組織全体で揃わない可能性がある

MBOでは1人ひとりが自らの目標設定・管理を行います。このため、メンバーの間で、また個人と組織全体の間で目標管理が揃わない恐れがあります。例えば、目標の方向性が個人によってバラバラだったり、チームや組織全体の目標達成と結びつかなかったりといったことです。

また、ある人は達成しやすい簡単な目標、別の人はチャレンジングな目標といったように、質や難易度がばらつくと不公平感にもつながるでしょう。個人の目標設定であっても当人だけで決定するのではなく、上司が指導しながら組織の目標を踏まえて一緒に設定するなど、組織として一体感のある運用が必要です。

デメリット3:上司にフィードバックや説明責任の負担が増える

デメリット1・2でも挙げたように、MBOを有効に機能させるには、上司による説明やフォロー、フィードバックなどのマネジメントが非常に大事です。目標の達成度や達成に向けた努力のプロセスについて、きちんと人事評価に反映されることも、目標管理のモチベーション維持に必要だからです。したがって、上司にとってはその分の負担が増えることは避けられません。

失敗しないMBOの運用方法とは

MBOの運用では、上司などの評価担当者によって評価がばらつくという課題が発生しがちです。主な原因は、評価の判断基準が評価担当者にゆだねられることにあります。数値ベースで目標管理できる営業やマーケティングなどの部門では、客観的な評価が比較的容易かもしれません。

しかし、総務や経理などの事務部門では、評価を上司の経験や裁量で判断せざるを得ず、MBOがうまく機能しないケースが見られます。 こうした失敗を避け、MBOを効果的に運用するにはどうすればよいでしょうか。対策としては、MBOに関する情報をデータベース化して一元管理・共有したり、評価においてデータ分析の比重を高くしたりといった、データ活用が考えられます。

MBOに関する情報をデータ化して蓄積することで、運用担当者や評価者が変わってもノウハウとして参照できます。評価においてもこれらのデータを分析してベースとすることで、評価担当者によるばらつきを抑えられます。MBOでは、客観的かつ公平に、継続性をもって評価を行えるような運用方法を目指しましょう。

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