創業の想い
代表取締役社長の深田 浩嗣が、株式会社Sprocketの創業に込めた想いや将来の展望を語ります。
おかげさまで、デジタルマーケティング領域で仕事をして15年以上となりました。私自身はずっと事業会社さまを支援する立場ですが、エンドユーザーの行動に影響を与えられるこの仕事に、ずっと楽しんで取り組んでいます。
企業とユーザーの関係のあり方を模索
代表取締役
深田 浩嗣
私は、企業とユーザーとのコミュニケーションのあり方、関係の作り方にずっと関心を持ってきました。1社目に創業したゆめみという会社では、大規模なモバイルメール配信システムを使ってクーポンメールを一斉配信する施策を行い、多くのユーザーが店頭に足を運び買い物をしてくれました。
ただ、企業とユーザーのコミュニケーションは、本来多種多様です。私自身は、もともと学生時代の専攻がコンピューターサイエンスで、テクノロジーサイドからこの業界に入ってきた人間です。Webではデジタルでしか行えないこともありますが、もともとリアルで行われていたことをデジタルに持ってくるという発想からは多くのことを得られます。
お店とはなにか、店員とユーザーはどのようなコミュニケーションを取っているのか、どのような体験がエンドユーザーの「買おう」という気分を盛り上げるのか。
こうした観点で眺めると、クーポンのように金銭的なインセンティブでユーザーの行動を変容させるやり方は、多様なコミュニケーションのほんの一部でしかないことがわかります。デジタルマーケティングの幅はどんどん広がっており、「デジタルの施策でもそうした多様性を生み出す余地がまだまだあるはずだ」ということを10年以上考え続けています。
日本古来の「おもてなし」を学び、Sprocketを創業
当時考えていたのは「人間の行動や心理に影響を与えるには、どうすればいいのか」「そうした取り組みには、どのようなものがあるのだろうか」ということです。
2010年ごろには「ゲームのメカニズムから学べることが多い」と考え、「ゲーミフィケーション」という領域を掘り下げました。ゲーミフィケーションは、ビジネスとしてはカスタマイズ性が高すぎたため断念せざるを得ませんでしたが、その過程で学んだことは今の事業でも生きています。それに関連して、モチベーションの心理学や行動経済学なども関心を持って調べました。
そんな中、日本古来の「おもてなし」についての気付きは、現在の事業の根幹となっています。「オンラインでのユーザー行動をリアルタイムにトラッキング・解析し、その結果をユーザーにリアルタイムにフィードバックする」という仕組みには大きな可能性がある」と考え、Sprocketを創業しました。
創業からこれまでの取り組み
創業後も試行錯誤をくり返し、ポップアップUIを活用してユーザーとコミュニケーションを取ることで、これまでにはなかった体験を生み出すことができるはずだと判断し、2016年以降はその領域にフォーカスして事業を展開しています。
特にオンラインの体験設計は、これまでずっとユーザーによるセルフサービスが前提となってきました。しかしユーザー層の広がりや、オンラインコミュニケーションの変化などを踏まえると、この前提を今後も持ち続けることはかえってユーザーの離脱を生む要因になり得るという課題が見えてきています。
そこで、オンライン上でもリアルタイムにユーザーの行動を観察し、その結果をもってコミュニケーションを取れる仕組みがあれば、セルフサービスに頼らない、新しい体験設計が可能ではないかと考えました。
Sprocketではこの役割をポップアップUIに担わせ、22年度までに自社のチームだけでも累計10万回を超える仮説検証をくり返してきました。その結果、セルフサービス問題の解消につなげられるコミュニケーションのさまざまな打ち手を見いだしています。
われわれの根本的な関心は、創業以来「人間の行動や心理に影響を与えるには?」ということにあります。そのため、SaaS企業でありながらツールの提供だけにとどまらず、自分たち自身でもツールの利用を通じてこのテーマを追求しようという考えでビジネスモデルを構築しています。詳しくはぜひSprocketの「ビジョン・ミッション・バリュー」をご覧ください。
「長期的な関係性」とは何なのか?
日本古来の「おもてなし」に着目した経緯を、もう少し詳しくお話しましょう。
Sprocketは、ユーザーと企業の長期的な関係性の構築を支援していきたいと考えている会社です。それでは、よく言われる「長期的な関係性」とは、一体どのような関係性でしょうか?
長期的な関係性とは、リピート購買し続けてくれることでしょうか。それとも、LTVが大きくなることでしょうか。あるいは、ユーザーが企業やサービスのファンになってくれることでしょうか。
私自身、以前からある「エンゲージメント」という言葉には魅力を感じつつも、それが実現できた先にあるユーザーと企業の関係性とはどのようなものなのか、イメージができずにモヤモヤとしていた時期がありました。先ほど「日本古来のおもてなしに気付きがあった」とお話しましたが、モヤモヤが晴れたのは、この気付きのおかげだったのです。
長期的な関係性という意味では「おもてなし」もそうした取り組みの一種だろうと考え、航空会社、旅館やホテル、アパレルなど「おもてなし」を実践している人たちの書いた書籍をひたすら読みあさりました。最初は「おもてなしとは、お客さまの期待を超えて喜んでもらえるように奉仕すること」くらいに考えていたのです。
調べていくうちに、おもてなしとはもともと茶道が発端だということがわかり、400年以上の歴史があるということを学びました。私は出身が京都なのですが、だからといって特に小さいころから茶道のたしなみがあったわけではありません。それで、400年もの歴史のある「おもてなし」が本来どういうものなのかを知りたいと思い立ちました。
本来の「おもてなし」とは、世界観を共有すること
「おもてなし」を学ぶために、地元の縁をたどって茶道の稽古場におじゃまさせていただいたり、老舗旅館の女将さんのインタビューをさせていただいたり。華道の家元のお話を伺わせていただいたり、祇園のお茶屋さんを紹介していただいたりもしました。また、祇園の世界の本を何冊も書かれている方のお話を伺ったり、関連する書籍を数十冊読んだりしました。
こうしたリサーチを通じて、自分なりに「日本古来のおもてなし」についてのイメージがより精緻になってきました。興味深かったのは、調べれば調べるほど、もともとの理解だった「お客さまの期待を超えて喜んでいただけるように奉仕する」という発想は「どうやら本来のおもてなしとは違うようだ」という確信が強まっていったことです。
本来の「おもてなし」を実践している人たちは、お客さまの期待を超えることよりも明らかに優先していることがあるのです。それは、自分たちが作り上げてきている、大事にしている「世界観」をより良いものにしていくことです。世界観に合わないお客さまの要望や期待には、基本的に応えません。「おもてなし」の世界を調べれば調べるほど、皆が共通して同じ姿勢を持っていることを実感しました。
客商売をしているはずなのに、自分たちの世界観を作り込む職人気質的な性質やこだわりが非常に強く感じられます。ことさらそのこだわりを喧伝することもなく、「わかる人にわかってもらえればいい、自分たちのこだわりは妥協しない」というプロフェッショナリズムとも呼べる姿勢があったのです。
逆に言えば、だからこそ非常に長期にわたって関係性を構築することができているのだと思います。こうしたおもてなしを実践しているところは、ライフタイムバリューどころか、世代をまたいでお客さまになっている人たちもたくさんいます。世界観に共感できるお客さまであれば、ほかでは得られない体験を提供してくれるわけですから、そうなるのも当然ですし、ある程度値が張ってもそれだけの価値を認めることができるのです。
世界観を共有すると、企業とユーザーは対等の関係になる
この学びをもとに世界の企業を見ると、「世界観重視」の姿勢を持っている会社は、熱量の高いお客さまと長期的な関係性を築けていることがわかります。
代表的な会社としては、アップルが挙げられます。スティーブ・ジョブズがプロダクトを設計する上で、ユーザーからは見えない配線にまでこだわったという話は有名ですが、「自分たちの作るべきプロダクトはこういうものでなければならない」という強い哲学を感じます。だからこそ、根強いファンが生まれるのでしょう。
この関係性の良いところは、企業とユーザーが「世界観の実現」という共通目標を持てるところにあります。この視点から見れば、企業とユーザーはお互い対等の立場になり、一緒に世界観を実現する仲間という関係性が生まれるのです。
おもてなしを「お客さまの期待を超えて喜んでもらえるように奉仕すること」と理解していると、企業とユーザーはいつまでたっても対等の立場に立つことができません。あくまで「サービスに対して対価を払う」ユーザーと「対価としてサービスを提供する」企業という関係性ですから、対価とサービスが等価交換されるギブアンドテイクの関係性でしかありません。
企業とユーザーは、一般的にはギブアンドテイクの関係性です。企業も利益を出さなければ存続できませんし、サービスをより良くするための投資もできません。そうなると、必然的に「いかに原価をかけずに期待を超えたと感じてもらうか」という考えになり、ユーザーも「同じ対価でいかに企業から多くのサービスを引き出すか」という考えになっていきます。ギブアンドテイクの関係というのは、このように対立構造にならざるを得ないのです。
この状態のままでは、長期的な関係性を構築しようとしても、危ういバランスの上でしか成立しません。そこで、日本古来の「おもてなし」に学び、世界観共鳴型の関係性を作ることができれば、構造的に安定した形で長期的な関係性を築くことができるのではないでしょうか。
目指すのは「主客一体」の関係性
今後の企業活動においては、社会的にサステイナブルであることが求められます。その点でも、京都という狭い経済圏ではあるものの、実際に400年以上サステイナブルであるこの関係性は、ひとつの有力な解になるのではないでしょうか。
茶道においては「主客一体」という言葉があります。これは「お互い共通する世界観を実現するために一体となって取り組んでいく」という意味です。Sprocketでは、主客一体を長期的な関係性としてイメージしています。
そこにたどり着くまでには、まだまだ遠い道のりですが、Sprocket自身としてもそのような関係性をお客さまと構築していけるよう、実践を通じて取り組んでいきたいと考えています。
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