シェア回復のための顧客体験向上。東京電力エナジーパートナーが目指すOne to Oneマーケティングとは?

申込み型サイトインフラ

東京電力エナジーパートナー株式会社 様

東京電力エナジーパートナー株式会社(以下、東京電力EP)は、東京電力グループの電力の小売事業会社として、家庭や企業向けの電力販売やエネルギー関連のサービスを提供しています。
同社が考える戦略や取り組みについて、お客さま営業部 販売促進グループ 課長代理 平松 翔氏に詳しく伺いました。

イメージ:シェア回復のための顧客体験向上。東京電力エナジーパートナーが目指すOne to Oneマーケティングとは?

電力自由化後の競争激化

――まずは貴社の事業の状況について教えてください。

平松氏:当社は、2016年の電力小売全面自由化までは、東京電力エリアすべてのご家庭に電力をお届けしていました。しかし、法改正により電力の小売が全面自由化され、多くの小売り事業者が参入し、ご家庭のお客さまも自由に電力会社を選べるようになりました。

お客さまへのアプローチは、従来、テレビなどのマスメディアを通じて行っていましたが、お客さまのニーズを把握しづらいため、お客さま一人ひとりに合わせた効果的なコミュニケーションをとることが難しい状況でした。

当社が多くの参入事業者との競争の中で失ったシェアを取り戻し、維持するためには、やはりお客さま一人ひとりに合わせた効果的なコミュニケーションを行い、顧客体験(CX)の向上が必要不可欠だと感じていました。

そこで、お客さまとの接点を通じて各ご家庭の電気の使用状況や電気設備等を把握し、そこから得られたデータを活用して、お客さまに寄り添った電気以外の商材やサービスも提供したいと考えました。つまり、電気代の値下げによる価格競争ではなく、東京電力EPの付加価値を実感していただくことで、シェアの維持を目指すということです。

東京電力エナジーパートナー株式会社 お客さま営業部 販売促進グループ 課長代理 平松 翔氏

東京電力エナジーパートナー株式会社 お客さま営業部 販売促進グループ 課長代理 平松 翔氏

顧客接点を強化し、One to Oneのコミュニケーションを実現したい

――お客さま営業部での具体的な方針や取り組みについて教えてください。

平松氏:お客さま一人ひとりに最適な商材やサービスを提供するためには、さまざま方法で、より多くのお客さまに当社について知っていただくことが重要です。

そのために、当社とお客さまのOne to Oneのコミュニケーションで両者の結びつき(顧客接点)の強化を実現することをテーマとして、「デジタルマーケティングの強化」に取り組んでいます。

具体的には、マーケティングの自動化(MA)を活用して、メールやLINE、当社Webサイト内での接客、web広告といったデジタルを通じた顧客接点の強化を図ったり、Webサイトの機能やコンテンツを拡充したりしています。

例えば、「くらしTEPCO web」は、お客さまがより便利で楽しく利用できるように、省エネ行動をテーマにした「省エネBINGO」を提供しています。

このゲームでは、ビンゴを達成すると抽選で「くらしTEPCOポイント」がもらえる仕組みを取り入れており、ゲームを通じて省エネの知識を深めることができるだけでなく、溜まったポイントはAmazonギフトカードやVポイントに交換できます。これにより、お客さまに当社を利用するメリットを感じていただけると考えています。

「くらしTEPCO web」の省エネBINGO

「くらしTEPCO web」の省エネBINGO

平松氏:また、暮らしに役立つアイデアとして、毎月異なるテーマの記事をアップしています。季節に応じた省エネのコツや、家事の豆知識や簡単にできる裏技の紹介といった、日常生活にすぐに取り入れられる実用的な情報を会員にメール配信しています。

さらに、デジタルを通じた取り組みの他にも、ダイレクトメールの送付や、各エリアの営業担当による訪問など、オフラインでもお客さまとの接点を維持しています。

話をデジタルに戻すと、当社からのプッシュ型配信では掲載できる情報量に限界があり、お客さまにプランやサービスをご理解いただくことが難しい場合もあります。そのため、昨年度からはプッシュ型配信の反応状況を分析し、オフラインでのコミュ二ケーションが適しているお客さまには、あらかじめご了承いただいた上で、直接ご説明する機会を設けるなどの取り組みを始めています。このように、お客さま一人ひとりに最適なチャネルでコミュニケーションができるように取り組んでいます。

――お客さま営業部での取り組みに関する成果指標について教えてください。

平松氏:お客さまに継続的に当社のサービスを利用いただくことを重要な目的としています。目的の達成に向けて、いくつかの指標(KPI)を設定しており、ご契約者さま向けの会員サイト「くらしTEPCO web」のログイン数、月間アクティブユーザー数もKPIの一つです。当社の分析では、月に1回以上ログインいただくことが契約の継続に効果的であることがわかっています。

また、クロスセルによりお客さまに最適なサービスを提供することも目的の一つです。当社がお客さまに提供するサービスは電気・ガスだけでなく、料金プラン、太陽光発電設備、蓄電池、エコキュート、ガス機器警報器等のご提案や取り次ぎなど多岐にわたります。これらを組み合わせることで、効率的なエネルギー利用と経済的なメリットを提供し、お客さまに満足いただけるように努めています。

太陽光発電設備や蓄電池、エコキュートと電気を組み合せたサービスは、当社の大きな強みであり、「太陽と暮らそう」というコンセプトのもと、自家発電・自己消費型の地産地消ライフスタイルを推進しています。環境に優しく、経済的にもお得なサービスを通じて、より良い暮らしをサポートしています。

太陽光発電設備や蓄電池、エコキュートと電気を組み合わせたサービス

太陽光発電設備や蓄電池、エコキュートと電気を組み合わせたサービス

顧客体験向上による継続的利用を促進

――One to Oneコミュニケーションにおいて直面した課題を教えてください。

平松氏:顧客接点の強化において、MAによるメールやLINEを活用していますが、プッシュ型配信では、配信を希望(オプトイン)したお客さまにしか配信できず、さらに反応いただけないお客さまとのコミュニケーションが不足している状態でした。

また、「くらしTEPCO web」にログインしていただいているお客さまには、Webサイト内での接客を通じて、より良い体験を提供し、複数のサービスをご利用いただき、継続していただきたいと考えていました。

しかし、サイト内で良い体験を提供するためには、来訪されたお客さまに対して一様な情報のみの提供で、それぞれに最適な情報を提示できず、One to Oneのコミュニケーションが不足していることが課題でした。Webサイトの改修だけでは対応が困難なため、ランディングページ(LP)を最適化するためのツール(LPO)を活用し、画面や情報をお客さまに合わせて出し分けることで、Webサイト訪問をより良い体験として提供したいと考えていました。

これまで当社には、このようなCX改善系のツールの導入実績が少なく、導入や運用のノウハウもありません。私自身、前職で他社のLPOツールに触れたことはありますが、ノウハウというほど知見もありませんでした。そういった中でSprocketを選んだ理由はいくつかあります。まず、他社と比較して、SprocketのA/Bテスト機能や、お客さまの行動や反応を深掘りする分析機能が非常に優れている点が魅力的でした。また、当社が活用しているGoogle Colud Platform(GCP)とのデータ連携において、当社が望む要件を満たしていたことも大きなポイントです。

さらに、サービスのご提案の際にSprocketの営業担当者が製品の概要だけではなく、組織的(体系的)・技術的な質問にも迅速に対応してくださり、疑問を解決するための時間が圧倒的に早かった印象です。LPOツールの高度な利用に向けて、パートナーとして並走して動いていただけると感じたのがSprocketを選ぶ決め手になりました。

東京電力エナジーパートナー株式会社 お客さま営業部 販売促進グループ 課長代理 平松 翔氏

Sprocketの活用で失注率が約2%減少

――課題を解決した施策を教えてください。

平松氏:Sprocketを活用して、「行動履歴によるメッセージ出し分け」、「会員サイトログイン後のページ情報による出し分け」、「会員サイト登録時や登録内容変更時のオプトイン誘導」、「ゼロパーティデータ収集と他チャネル配信への活用」の4つの施策を進めています。

行動履歴によるメッセージ出し分け

――行動履歴による出し分けについて、特に引越しに関するアプローチを教えてください。

平松氏:引越しは、お客さまが当社と契約をされるか否かを検討されるタイミングです。この機会を逃さないために、お客さまに合わせてメッセージを出し分けています。

例えば、供給地点番号を確認しようとしている方や、引越し手続きに関するノウハウを提供するページや引越し手続きの申込みフォームを閲覧している方は、引越しを検討している可能性が高いと考えられます。このような引越しに関心があるお客さまに対して、効果的にアプローチするために、最適なタイミングで適切なご案内を行っています。

また、ご契約を継続いただくことを目的とした施策も実施し、実際に解約されるお客さまが約2%減少しました。当社のお客さま数を考慮すると、2%の減少でも相当な影響があります。

行動履歴によるメッセージ出し分け

行動履歴によるメッセージ出し分け

会員サイトログイン後のページ情報による出し分け

――GCPバッチ連携によるID単位の契約データの取得や、既存顧客への接客について教えてください。

平松氏:会員サイト「くらしTEPCO web」にログインしているお客さまには、お客さまの情報をもとに最適なサービスや商品を提案しています。

具体的には、電気のみご契約いただいているお客さまに対しては、ガスプランをご案内するなど、それぞれのお客さまの現在のご契約状況に合わせたお得な情報や関連するサービスをご案内しています。これにより、ログインしたお客さまにパーソナライズされた良い体験を提供し、積極的に関心を持っていただくことで、当社の別のサービスや商品の契約を検討いただく機会にもつなげています。

Sprocketの活用により、ガスで0.1%、太陽光で8.3%、エコキュートで0.1%の改善が見られました。

会員サイトログイン後のページ情報による出し分け

会員サイトログイン後のページ情報による出し分け

会員サイト登録時や登録内容変更時のオプトイン誘導

――オプトイン誘導の施策についても教えてください。

平松氏:Sprocketのサイトにある事例を拝見し、当社でも実施しました。

当社のようなインフラ企業では同様の傾向があると考えていますが、主に初回会員登録時にメール配信を希望しないお客さまの割合が高く、それによりお客さまとの接点を失うのは非常にもったいないと考えています。そのために、初回の会員サイト登録時と登録内容変更時にオプトインを誘導する仕組みを取り入れました。テキストなど細かく調整を重ねた結果、施策の実施有無を比較すると、9.2%の改善に至っています。今後もさらにブラッシュアップしていく予定です。

会員サイト登録時や登録内容変更時のオプトイン誘導

会員サイト登録時や登録内容変更時のオプトイン誘導

高坂(Sprocketコンサルタント):東京電力EP様のWebサイトを利用するお客さまは、さまざまなライフスタイルを持つ幅広い層の方々です。このサイトの特徴で、ECサイトとは異なる点としては、平日や週末、昼夜を問わず、さまざまな時間帯にアクセスがあり、多様な生活リズムの方々がサイトに訪れていることが挙げられます。

また、生活に対する感度が高いお客さまが多く、電力の使用や省エネの方法に関心を持ち、キャンペーンや特別オファーも、予想以上に多くのクリックを集めています。

お客さまの行動データは、CX改善において非常に重要なデータで、例えば、どのキャンペーンが最もクリックされているか、どの時間帯にアクセスが集中しているかなどのデータを分析することで、より効果的なマーケティング施策を立案することができます。当社から発信するフリークエンシー(頻度)が多すぎると顧客体験を損ねる可能性があるため、それを考慮しつつ、お客さまの興味を引き続けるための施策に活かしています。

Sprocket コンサルタント 高坂 菜津美

Sprocket コンサルタント 高坂 菜津美

ゼロパーティデータ収集と他チャネル配信への活用

――今後予定している施策を教えてください。

平松氏: Sprocketのアンケート機能を利用してゼロパーティデータを収集し、そのデータを基に他のチャネルでの配信に役立てることを直近の目標としています。

Sprocketで料金プラン付帯サービスの認知向上施策を行っていますが、顧客単位で訴求しているサービスを「認知している」というデータが取れていないのが現状です。そのため、認知施策におけるOne to Oneマーケティングの観点から、既に認知している方へのアプローチは不適切になることがあります。

そこで、Sprocketのアンケート機能を利用し、「くらしTEPCO web」で対象のお客さまに「このサービスが無料で付帯されていますがご存じですか?」というアンケートを行い、知らないユーザーには詳細のランディングページ(LP)に誘導するとします。この「知っている/知らない」データを蓄積し、後日オプトインのお客さまにはメールでご案内するなど、他チャネルと連携した高度な活用を行いたいと考えています。

ゼロパーティデータ収集と他チャネル配信への活用

ゼロパーティデータ収集と他チャネル配信への活用

さらなるOne to Oneマーケティングの精緻化へ

――今後の展望を教えてください。

平松氏:Sprocketコンサルタントの高坂さんやシステム担当の皆さまのご対応は質とスピードの両面で優れており、類似事例を取り入れたご提案や検証結果に基づくSprocketならではの視点からのフィードバックをいただいています。

また、GCPとのデータ連携において、当社の要件を満たすための柔軟な改修を短期間で行っていただき、パートナーとしての伴走力を非常に心強く感じています。当初はノウハウや知見がない中でのスタートでしたが、現在ではLPOツールを活用した複数の施策で、正解パターンが素早く出ており、成果を上げています。

今後はCXを向上させ、お客さまに長期的にご利用いただけるよう、さらなるOne to Oneマーケティングを精緻化し、一人ひとりのお客さまに最適なチャネルでコミュニケーションを実践していきたいと考えています。

――最後に、Sprocketの導入を検討している方へ向けてひとことお願いできますか。

平松氏:デジタルマーケティングにおける取り組みにおいては、必ずしも「一律共通の勝ちパターン」というものが存在しないと考えています。各企業が日々PDCAを回し続けて「独自の正解」というものを模索していると思います。

Sprocketは、特にA/Bテストの柔軟性や、コンサルタントの素早いコミュニケーションなどに優れ、各企業のデジタルマーケティングにおける「勝ちパターン」を導き出すための近道になると思っています。施策で、なかなか勝ちパターンが見つからない、成果がでないとお悩みの企業は、ぜひSprocketの導入を検討されてみてはいかがしょうか。

――本日はありがとうございました。

テプコン

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