キッコーマングループは、「おいしい記憶をつくりたい。」というコーポレートスローガンのもと、しょうゆをはじめとする調味料や食品、飲料などを国内外で製造販売し、しょうゆのトップブランドとして、日本の食文化の発展を支えています。本資料では、同社が考える戦略や取り組みを解説します。
キッコーマンのレシピ提案を通じたファン育成
「おいしい記憶をつくりたい。」ブランドの目指す姿
消費者本位を基にしたブランドの目指す姿
――まずは会社の方針や経営理念、考え方を教えてください。
松野氏:当社グループの経営理念は「消費者本位」を基本としています。企業の存続と繁栄は、お客様にご満足いただくことで初めて実現すると考えております。この認識のもとに、お客様の声に耳を傾け、市場が求めるものが何かを洞察し、お客様にとって価値ある商品やサービスを提供しております。
キッコーマン株式会社 経営企画室 デジタルマーケティング担当部長 松野 裕介氏 |
松野氏:またブランドとは、お客様のこころの中に築き上げられていくものです。キッコーマングループの商品やサービス、社員とふれあうたびにお客様はどのように感じられたのか。私たちの日々の活動の積み重ねが、すべてお客様へとつながります。
理念に結びついたブランドの目指す姿を明確にし、共有できるように「キッコーマンの約束」を定めています。「こころをこめたおいしさで、地球を食のよろこびで満たします。」というキッコーマンの約束を一言で表現したものが、コーポレートスローガン「おいしい記憶をつくりたい。」です。ロゴも合わせてコーポレートブランド体系を構築し、導入したのが2008年です。
キッコーマンの約束とコーポレートスローガン |
コーポレートスローガン入りのブランドロゴ |
レシピ提案を通じた「おいしい記憶」の創造
――マーケティングの具体的な方針や取り組みについて教えてください。
松野氏:当社は、「消費者本位」の経営理念と「おいしい記憶をつくりたい。」というコーポレートスローガンに基づき、お客様起点のマーケティングに取り組んでいます。
この取り組みでは、リアルとデジタルを組み合わせ、お客様との双方向の交流を図り、信頼関係を構築することでファン化を促進し、体験価値である「おいしい記憶」の創造をアップデートしていきます。
お客様起点マーケティングの全体像 |
松野氏:私たちの部門では、具体的に、お客様接点でのデータ収集と活用、自社メディアとの連携からコミュニケーションに至るまで、一連の取り組みを行っています。
例えば、キャンペーンや体験イベントなどの接点をデータ化するために、会員基盤である「キッコーマン+」やLINE公式アカウントを活用しています。また、お客様の声を商品やサービスに反映するために、会員基盤内でモニターを募集したり、デジタル上でオフラインの料理講習会や工場見学の告知を行ったりしています。
ファン化に向けたオフライン/オンライン横断型コミュニケーション |
――自社メディアを通じたコミュニケーションにおいて、レシピ提案を重要視されていますね。レシピ提案の背景と歴史について教えてください。
松野氏:調味料であるしょうゆは、他の食材とレシピを組み合わせることで、その価値が発揮され、「おいしい記憶をつくる」ことにつながります。
当社は1973年から、電話でのレシピ紹介サービス「キッコーマンもしもしクッキング」を通じて、お客様向けの「レシピ提案」に本格的に取り組み始めました。
それ以来、冊子、Webサイト、アプリなど、時代やお客様のニーズに合わせて形を変えながら、お客様の毎日の献立づくりをサポートする「レシピ提案」を続けています。特にレシピサイト「ホームクッキング」は、レシピ提案の主軸となるメディアで、当社の強みでもあります。
レシピ提案の歴史 |
レシピサイトの体験向上における課題
――自社メディアにおけるマーケティングで直面した課題を教えてください。
松野氏:多様なお客様層に対する適切なレシピ提案の実現です。例えば、料理を頻繁にするかどうか、料理にかける時間、料理に対する心理的ハードルは人それぞれです。また、世帯構成やお子様の有無、嗜好なども多種多様です。これらの個別のニーズに応じたレシピを提案したいと考えています。
齋藤氏:数多くの競合が存在するレシピサイトの中で、当社の商品を使用したおいしいレシピを強化し、サイトの充実と活用を図りたいと考えていました。しかし、Web検索による流入は多いものの、一度きりの訪問が多く、訪問いただいた方がキッコーマンのサイトであることに気づかないケースもあり、非常にもったいない状況でした。
さらに、多くのお客様からは、「毎日献立に悩む」「限られた時間でレシピを手早く探したい」といった声が寄せられており、時間を意識してレシピ検索や料理をされる方が多いことがわかっています。そうした方々に対して、レシピの検索体験を向上させ、少しでも料理の負担やストレスを軽減したいと考えています。お客様の体験をより良いものにし、キッコーマンのレシピサイト自体を気に入っていただくことが課題でした。
しかし、Webサイト自体は迅速に改修することが難しい状況です。そのため、サイト改修をせずにお客様に合わせて最新の情報や最適なレシピを提案できるCX改善ツールが必要でした。
私たちの部署は少人数の体制であるため、ツールを導入しても運用面での不安がありましたが、Sprocketは導入後のサポートおよびコンサルティング体制が充実している点が決め手となりました。また、Web上でお客様の声をアンケートできるほか、N1分析などさまざまな分析手法があり、お客様を理解する上でとても助かっています。
キッコーマン株式会社 経営企画室 デジタルマーケティング担当 齋藤 由佳氏 |
キッコーマンのファン育成に向けた取り組み
――レシピサイトで実施した取り組みを教えてください。
齋藤氏:レシピサイトでお客様との信頼関係を構築し、ファン化を進めるために、まずサイト内でのKGI(重要目標達成指標)を明確にすることが必要です。
そこで考えたのは、「レシピサイトのファンを育成することが、キッコーマンブランド自体のファンの育成にもつながるのか」「レシピサイトのファンはどのようなお客様なのか」「レシピサイトのファンを育成するには、何をしたらよいのか」という点です。これらを明確にし、それに基づいた施策を実施することが重要です。
そのために取り組んだことは「レシピサイトのファンとキッコーマンブランドのファンとの関係性の明確化」「レシピサイトのファンの行動傾向と特性の把握」「レシピサイトのファン育成に向けた施策」です。
キッコーマンのファン育成に向けた取り組み |
レシピサイトのファンとキッコーマンブランドのファンとの関係性の明確化
――「レシピサイトのファンとキッコーマンブランドのファンとの関係性の明確化」について、教えてください。
伊藤(Sprocketコンサルタント):キッコーマン様がレシピサイトを運営することで、「おいしい記憶をつくりたい。」というブランディングに貢献できると思いますが、レシピサイト自体は売上に直結するECサイトではありません。Sprocketとして、サイト内のどの指標を重視すべきかを定義することを提案させていただきました。
まず、キッコーマン様の「レシピサイトを使い続けたい意向度(レシピサイトのファン度)」と「ブランド商品を買い続けたい意向度(ブランドのファン度)」との関係性を調査しました。アンケートを実施し、データを分析して、これらに相関性があるかどうかを確認しました。
Sprocket コンサルタント 伊藤 麻耶 |
齋藤氏:調査の結果、相関性があることが確認でき、安心しました。レシピサイトのファン度を高めることが、ブランドのファン度の向上に貢献する可能性があることを示せたのは非常に良い成果です。
レシピサイトのファンとキッコーマンブランドのファンとの関係性の明確化 |
レシピサイトのファンの行動傾向と特性の把握
――「レシピサイトのファンの行動傾向と特性の把握」について教えてください。
伊藤:「レシピサイトを使い続けたい意向度(レシピサイトのファン度)」と「ブランドを買い続けたい意向度(ブランドのファン度)」の間に相関性があることが示されました。次に、「レシピサイトのファン度」を定量的に評価するための指標として、何が適しているかを分析しました。
まず、レシピサイトが提供する顧客体験価値を調査しました。アンケートを実施し、「レシピサイトのファン度」とレシピサイトを継続して利用したい理由の割合を算出しました。また、「レシピサイトのファン度」と「サイト内での行動」との相関性も調べました。
齋藤氏:結果として、「レシピサイトのファン度」が高いほど、「特定のサイト行動」が相関していることが明らかになりました(具体的な行動の名称は控えさせていただきます)。さらに、「レシピサイトのファン度」が高いほど、サイトの機能を活用したり、レシピ以外の要素にも注目する行動が多いこともわかりました。
レシピサイトのファン度、ブランドのファン度、行動データの相関性分析 |
レシピサイトを継続使用したい理由とファン度の割合/レシピサイトのファン度とサイト内行動の相関性 |
伊藤:まとめると、調査からわかったのは、5点です。
- 「レシピサイトのファン度」と「ブランドのファン度」および「特定のサイト行動」は相関関係にある
- 「レシピサイトのファン度」を高めることが「ブランドのファン度」の向上に貢献できる可能性がある
- ブランドのファンがレシピサイトのファンでもある傾向が強い
- 「レシピサイトのファン度」が高いほど、「特定のサイト行動」をしている
- レシピサイトのファンほど、レシピ以外の要素にも注目していたり、サイト機能の活用をしている
調査結果のまとめ |
齋藤氏:この調査結果から、KGIを「特定の行動」の改善率で評価することで、意識の統一が図れました。また、Sprocketとともに調査を行うことで、当社もお客様の理解をより深めることができました。
レシピサイトのファン育成に向けた施策
――「レシピサイトのファン育成に向けた施策」について教えてください。
伊藤:「特定のサイト行動」が「レシピサイトのファン度」に貢献していることが判明したため、「特定のサイト行動」の改善率をKGI設定し、どのように促進できるかを分析しました。
具体的には、直帰が多い中でも、初めて来訪し、いくつかページを見ていただけるお客様はページを重ねるにつれて、どのような行動を取るのか、またどのタイミングで、どのページを閲覧するのかを分析しました。これにより、サイト内でのカスタマージャーニーを可視化し、施策を実施すべきタイミングを把握しました。
お客様の行動は、情報を読みたい、探したい、残したい、受け取りたいという4つのニーズに分類されました。これらの行動は、お客様がサイトに流入した時点から、ページビュー数を重ねる、つまりサイト内での体験を重ねるにつれて、ニーズが変化していく傾向が見られました。
サイト内でのカスタマージャーニー |
――実施した施策を教えてください。
伊藤:4つのニーズに応じた施策を実施しています。主に「サイトの機能の利用促進」や「コンテンツ利用促進」、「会員登録の促進&キャンペーンの訴求」の施策です。
実際にサイトを訪れるお客様の気持ちを考えてみると、次のような変化が想定されます。サイトに来た直後は、「今日つくるレシピ」を探している状態です。しかし、検索の便利さに触れることで、「いいサイトだな」と感じるようになります。
その後、検索結果でいくつも気になるレシピを発見し、レシピの豊富さを目の当たりにして、楽しさを感じます。そして、「今日つくるわけではないけど、この情報をストックしておきたいな」と考えるようになります。
このように、お客様の考え(=ニーズ)はその瞬間瞬間で変わっていくことが想定されます。
そのため、各瞬間に適切な機能の案内やお知らせを行うことで、最終的に「どんなサイトでもいいから今日つくるレシピないかな」と考えていたお客様の気持ちを、「キッコーマンのレシピサイトに行って、今日つくるものを探そう」という能動的な気持ちに変化させ、サイトの利用を促進しています。
齋藤氏:実際にそのような取り組みを実践した結果、「特定のサイト行動」も改善率が徐々に向上し、最大で7%の改善が見られました。非常に効果的な結果が得られています。また、数値の成果だけではなく、お客様からのフィードバックを通じて、レシピサイトの体験が向上していることを実感しています。
情報を「探したい」と「読みたい」お客様向け施策の一例 |
有益情報を「残したい」と「受け取りたい」お客様向け施策の一例 |
社会課題に向けたコミュニケーションの高度化へ
――今後の展望を教えてください。
松野氏:伊藤さんをはじめとするSprocketのコンサルタントの運用は、非常に助かっています。企画提案の頻度も高く、真摯に対応していただいており、何より当社の目指す方向性を理解したうえで提案をいただいています。例えば、「お客様の体験を損ねるからやめませんか?」という提案をいただくこともあり、常にお客様視点を重視したアプローチを取っていただいています。
齋藤氏:Sprocketはサポートおよびコンサルティングが手厚く、分析やお客様の体験改善など、私たちだけでは手が回らなかった部分も解決できました。特に、導入した施策も定期的に効果を検証し、改善案をご提案いただけるところが大変心強いです。
さらに、新しい気づきを得られることが多々あります。例えば、お客様がサイトに訪れて、1ページだけレシピを見てすぐに離脱した場合、それは直帰とされますが、果たして直帰が悪いことなのか?この点について議論がありました。同様に、お客様が迷ってページを何度も回遊することが、必ずしも良いとは言えません。
つまり、ページビュー数を増やすことが、必ずしも良い体験とは限らないということです。お客様が時間を節約したいと考えている場合、すぐに目的のレシピを見つけられることが良い体験となることもあります。このように、さまざまなデータの見方、考え方を教えていただき、予想以上にお客様の理解につながっていると感じています。
松野氏:おかげさまで、ホームクッキングというレシピサイトを運営しているチームはKPIのあらゆる面で目標達成に向かっており、Sprocketの取り組みや顧客体験の向上を含めたさまざまな施策が功を奏しています。
今後は、料理をつくる方々に寄り添ったコミュニケーションを通じて、社会課題である「こころとからだの健康」の支援を加速していきたいと考えています。そのために、最新のAIやデジタル技術を活用したコミュニケーションの高度化を図り、キッコーマンファンの拡大に向けた、さらなるお客様理解の促進とニーズに応じたパーソナライズされたレシピの提案に挑戦していきます。
――最後に、Sprocketの導入を検討している方へ向けてひとことお願いできますか。
松野氏:このようなツールを使い始めたものの、なかなか使いこなせないとお悩みの方もいらっしゃるかと思います。しかし、Sprocketでは専任のコンサルタントが、現状分析から施策の提案・実施、そして効果検証まで、手厚くサポートしてくれるので安心です。
Webサイトの担当をされていて、お客様の体験価値を高めたいとお考えの方は、ぜひSprocketの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
――本日はありがとうございました。
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