Sprocket Connectは、Sprocketを核としてあらゆるデータやサービスを連携する機能です。Sprocket Connectには、会員情報やカート内情報などのデータを連携するデータコネクトと、MAやCDP、チャットや動画などさまざまな外部サービスと連携するサービスコネクトの2種類があります。
「お客様に必要な情報だけを提供したい」大分銀行がデジタルチャネルで実践する顧客データ活用の取り組みを紹介
銀行ならではのデータを高い精度で接客にも活用
――まずは大分銀行様についてと、伊藤様、田畑様の業務内容について教えてください。
伊藤氏:私たちは大分県を中心にサービスを提供しています。銀行は潤沢なお客様の情報を有しており、それをもとに最適な営業活動を行いたいと考えています。営業戦略部では、それらのデータを利用するためのツール導入や、それを使いこなすための人材育成を継続的に実施し、営業の各チャネルに連携しています。
――データとは、具体的にどのようなものがあるのでしょう?
田畑氏:口座をお持ちであれば、お客様の氏名はもちろん、年齢や性別といった属性データもわかります。また、銀行はシステム化している業務が多く、来店回数やコールセンターからのコール回数、資産状況など、システム上に残るものの多くはデータとして保持しています。
伊藤氏:小売業等と異なり、銀行はお客様を特定できる確率が高く、口座保有者であればほぼ100%というのが特徴です。一般的なECサイトなどのデータと比較しても、情報の精度は非常に高いと考えています。
――なるほど。そのデータはどのように活用されているのですか?
田畑氏:お客様ごとに膨大なデータがあり、そこからは多くのことが読み取れます。そこから、お客様のニーズを抽出・推測し、対象のお客様をコールセンターや営業店へ連携することで、有人チャネルからのご案内につなげています。
伊藤氏:口座の動きを見ると、お客様の状況や生活スタイルがある程度推測できます。ですから、そのお客様が本当に必要なタイミングで、必要な情報だけを届けられるようにと心がけています。
Webサイトの課題は「誰なのか?」がわからないこと
――Webサイトやアプリについては、どのような位置づけなのでしょうか?
伊藤氏:Webサイトは、何か目的があって訪れるお客様への「回答」をご用意する場であると考えています。それに対してアプリは店舗やATMのように、振込や残高照会といった「金融機能」を提供するものという位置づけです。
――新規獲得とか、そういう役割はありますか?
伊藤氏:新規獲得も重要ではありますが、大分県内の地域金融機関として当行の知名度やシェアはそれなりに高く、Webで存在を知ってもらうという「認知」の役割はあまりありません。われわれにとっての「認知」とは「必要なお客様に、必要なタイミングで、必要なサービスの情報を届けること」ではないかと考えています。しかし、そこに大きな課題もあります。
――と、おっしゃいますと?
田畑氏:Webをはじめとするデジタルチャネルは、インターネット広告経由のコミュニケーションがほとんどです。例えば「マイカーローン」の広告から訪れたお客様は、「マイカーローンに興味がある」ことしかわからず、皆同じになってしまいます。
コールセンターなどの有人チャネルは、お客様が誰なのかがわかってコミュニケーションを図っている一方で、認知手段にかけられるコストには限界があり、全員に接触できるわけではありません。
そこで、比較的低コストのデジタルチャネルで、有人チャネルとインターネット広告の中間となるような手段が必要でした。
伊藤氏:あとは「無駄な情報を出したくない」ということもあります。インターネット広告は、すでに持っているものも広告に出てくることがありますよね。当行で住宅ローンをご利用いただいているお客様にとって、新規の住宅ローンの情報はあまり必要ではありません。しかし、インターネット広告の仕組み上、その方にとって不要な情報もどうしても含まれてしまいます。
ランディングページに来ていただいた後も同様で、すべてのお客様への「回答」を用意しようとすると、どうしても無駄な情報が多くなってしまいます。本当はそのお客様に対して最も必要なことを「ひとこと」でお伝えしたいわけです。例えば、ローンなら「いつ?」とか「いくら?」といったように。
さらに、そのお客様が不要と思って閉じたポップアップなどが、リロードするたびに出続けてしまうようなものについても不満でした。
金融サービスという特性上、説明しなければならないことも多くありますが、その方にとって不要な情報をどれだけ削って、有人コミュニケーションに近づけられるかがデジタルチャネルでの課題です。
Sprocket導入の決め手
――なるほど。接客ツールはほかに検討されましたか?
伊藤氏:以前は当行ドメイン内の行動をトレースできるようなツールも導入していたのですが、社内で十分に使いこなすことができず、1年で解約しました。どうしようかと困っていたところにSprocketの営業と出会いました。われわれがやりたいのは「Webサイトを見ているのが誰(≒どんな人)なのか」を知り、最適な情報を表示することです。話をするうちに、Sprocketでそれに近いことが実現できるのではないかと感じました。
――導入を決めたポイントはどこだったのでしょう。
伊藤氏:ポップアップを出し分けられる柔軟なシナリオと、設定作業をコンサルタントが引き受けてくれることが魅力でした。あとは、導入スピードが速かったこともあります。導入を決めてから2か月で完了して、こちらが自前でやらなければならないこともほとんどありませんでした。
Sprocketであれば、データ連携を行っておけば、アプリ経由でWebサイトに訪れた場合に「Webサイトを見ているのが誰(≒どんな人)なのか」を知り、行内の豊富な情報を活用できそうだと感じた点も大きいです。
施策事例のご紹介
施策1:マイカーローン・カードローン案内
――実際に取り組んだ施策についてお聞きしていければと思います。まずはマイカーローンのシナリオです。
伊藤氏:これは最初に実施したシナリオですね。Sprocketでどんなことができるのかを知ることも兼ねて、マイカーローンの疑問を解決するポップアップを実装しました。
岡田(Sprocketコンサルタント):まずはSprocketタグを導入した状態で大分銀行様のWebサイトのQ&Aの数値を計測し、よく見られているものをベースにして項目を作成しましたね。
伊藤氏:はい。以前はQ&Aが1ページに並んでいて、どのQ&Aが見られているのかを計測するのが難しかったのですが、このために項目ごとにページを分けることでそのデータを取れるようにしました。
岡田:最初は「購入する車を決める前でも仮申し込みできます」のようにメリットを訴求してお声がけしていたのですが良い成果につながらず、「マイカーローンについて詳しく知りたい方は、ぜひこちらをご覧ください」と店舗の接客に近いご案内にしたところ、勝ちに転じました。マイカーローン仮申し込みボタンのクリックは、非表示のパターンと比べて110%に改善しています。
――カードローンでも、同様のシナリオを実施されていますね。
岡田:カードローンのランディングページも情報量が多く、離脱するユーザーが多くいました。ポップアップによって、そのユーザーを興味があるポイントへ素早くご案内することで、商品理解や不安払拭につながることを目的にしたものです。
田畑氏:ページ内には多くの情報がありますが、「本当に見てほしいのはどこなのか」を視覚的に出せるというのがポイントですね。
岡田:これらのシナリオは、ユーザーの回答に応じてページをまたいで移動しながらご案内するよう設計しています。こちらは、非表示と比較して、仮申込ボタンのクリックが114%に向上しています。
伊藤氏:よくできていますよね。複数のパターンで出し分けもできますし、「必要な人だけに、必要な情報だけを出す」という点である程度の目的は達成できていると思います。
――内容のチューニングはどれくらいされましたか?
伊藤氏:何回か入れ替えましたね。ポップアップに対するユーザーのアクション数を見て「どうしてこのボタンが押されないのか」と理由を考えました。今まではその理由を推測するしかありませんでしたが、今回計測できたデータは事実です。事実に則って考えられた対策は当然に正しいと思っています。
施策2:アプリのインストール訴求
――ほかにはいかがですか?
伊藤氏:大分銀行アプリのダウンロードを訴求するシナリオも実施しています。Webサイトでは全員にアプリ訴求のバナーが表示されているのですが、すでにアプリをインストールしているお客様にとっては不要な情報ですよね。
田畑氏:特にスマートフォンでは、情報を表示する面積も貴重です。トップページにはさまざまな目的を持ったお客様がいらっしゃいますので、全員にアプリ訴求のバナーを表示する必要性は薄くて、お声がけのような形のほうがお客様の体験を損ねないのではないかと思います。それで、Sprocketのシナリオで「アプリから流入したユーザーには表示しない」などのセグメントを設定し、お声がけの内容やタイミングも検証を始めていただきました。
岡田:シナリオとしては、アプリのページへの誘導が非表示と比べて157%と良い成果が出ていますが、ヘッダーのバナーもまだクリックされているんですよね。
伊藤氏:Sprocketのシナリオのほうでお声がけの内容をよりブラッシュアップしてしっかりと数値的な根拠ができたら、Webサイト側のバナーと置き換えたいと考えています。
施策3:アプリからWebサイトへ遷移したユーザーのデータ連携
――先ほどお話にあった、アプリとWebサイトのデータ連携についてもお話を伺えますか?
田畑氏:アプリは口座をお持ちのお客様が振込などの機能を使うときに利用します。アプリ内のバナーをクリックしてWebサイトへ遷移するお客様のキー情報を、Sprocketを利用して連携しています。
伊藤氏:あくまで当行のサイト内に限った話ですが、アプリからWebサイトに来られた場合は「誰なのか」という情報が引き継がれます。お客様の情報がわかれば、Webサイト側でもその方に絶対に必要がないとわかるサービスの案内は出さないとか、さまざまな手を打てます。
岡田:仕組みとしては、アプリからWebサイトに遷移する際に専用の暗号化したキー情報をパラメータとして付与して、Webサイトにデータを連携しています。それをセグメントとして利用することで、お客様へのコミュニケーションを出し分けられます。
伊藤氏:これこそ、やりたかったけれどなかなか実現できなかったことですね。大規模な開発を行うことなく、Sprocket側の設定レベルでこの仕組みを実現できたことには大きな価値があると思います。
設定作業を代わりに行ってくれることが大きい
――Sprocketのツールと、コンサルタントについてはいかがですか。
伊藤氏:不満はありません。設定作業も代わりに行ってくれることがとても助かります。他社と比べても、この価格帯で実際に手を動かしてくれることが圧倒的に有利ですね。高機能なツールはたくさんありますが、飛ばせない飛行機よりも、普段からしっかり使えるタクシーのほうが便利という感覚です。
銀行は専門的な知識が必要になることもありますが、それはこちらからなるべく明確に伝えられるように努力しています。それを受けて、コンサルタントの方にツールを適切に設定してもらうというのは、役割分担としても正しいと思います。
岡田:ありがとうございます。
――施策の提案内容についてはいかがですか?
伊藤氏:他行を担当した方からのアドバイスを含め、良い提案をもらっています。直接収益につながるものから着手しましたが、Sprocketのシナリオあたりのコストが安いので、直接的な収益につながらない施策もやってみたいと考えています。
岡田:直接収益が出ない領域でも、ユーザーにとって必要な情報や、より便利になる情報をご案内する施策に取りかかり始めています。例えば、九州ATMネットワークの提携金融機関では、平日は手数料無料でご利用いただけることの案内などですね。
今後の展望
――デジタルチャネルで今後取り組みたいとお考えのことはありますか?
伊藤氏:お客様のニーズに合わせた施策であることを前提として、Sprocketでお知らせできるサービスを拡大していきたいと考えています。
岡田:まずはローンのサービスから始まりましたが、それ以外に口座開設にもつながるシナリオも動きだしています。今後も、さらに広い領域でご提案をしていければと思います。
伊藤氏:あとはデータ活用の強化です。デジタルでも顧客データを活用するには、そのお客様が誰なのかをひもづける必要があります。Sprocketでアプリ経由のお客様のキー情報を連携できるようになったので、適切なポップアップによる情報のご提供をさらに進めていきたいと思います。
――本日はありがとうございました!
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