【生活・雑貨・小売事業者必見】ECサイトの顧客体験改善事例3選
物販系業界は店舗休業などを受けオンラインシフトが進んでいます。顧客接点のデジタル化は今後も加速していくものと思われます。ECサイトにおける顧客体験の改善を実現した先行企業の事例から、実践的な成功のノウハウを解説します。
今年で創業302年目となる株式会社中川政七商店。麻織物の製造卸業を中心に事業を展開してきたが、2008年に13代目社長が就任してから「日本の工芸を元気にする」というビジョンのもと、従来の事業に加え、小売販売、工芸業のコンサルティング事業、工芸業の人材育成事業、工芸会社のイベント運営、メディア運営などに力を入れている。
緒方氏は、小売店としての「中川政七」に求められる役割は大きく分けると2つあると語る。1つは品質の高い自社商品を直接エンドユーザーに販売し、工芸品の流通量を増やすこと。そしてもう1つが中川政七を通して工芸品の認知を広げ、他の工芸品にも興味を持ってもらうようなエバンジェリストとしての役割だ。
「店舗での販売を始めたのは、商品の品質を知る店員がお客様に直接魅力を伝えたかったからです。私たちは『伝えること』は、ものづくりと同等に重要と考えています。お客様が商品を購入するのは、商品のストーリーに共感するからで、接客とは商品に織り込まれたストーリーを伝えることなんです」(緒方氏)
入社して1年8ヶ月になる緒方氏だが、すでに会社のカルチャーに係る大きな変化を2つ起こしている。
1つは、全社員が中川政七さしらを軸として持てるように、接客の心得を言語化しそれを浸透させたこと。「中川政七の接客を一言で定義すると『接心好感』。接客の目的は、売上ではなく、心に触れて好感を持たれることだということを表しています」(緒方氏)
社員としての心の在り方については「こころば」というカードに7か条にまとめ、カード形式で常に携帯できるようにした。さらにより具体的な働き方や心得の詳細をまとめた小冊子も作成し、社員全員に配布した。
2つ目が組織改革だ。以前は、ブランドごとにデザイナー、職人、販売、マーケティングなどがユニットとして動いていたが、重なる業務も多く、無駄も多かったという。そこで、機能別に組織を作り直した。
「最初は、作り手(デザイナーや職人)、売り手(店舗)、伝え手(マーケ・広報)、支え手(管理部門)という分け方を考えました。しかし、店員の仕事は売ることではなくまず伝えること。つまり、接心好感をすること。それなのに、売り手と伝え手を分けてしまうと、伝え手がお客様に向けて発したメッセージが売り手に伝わりにくいという問題がありました。そこで、作り手、伝え手、支え手の3つに業務を分けて組織を再編成したのです」(緒方氏)
伝え手には、店舗以外にも、システム、マーケティング、ECなどが含まれる。この組織構成にしたことで、事業全体から見た施策の優先順位付け、店舗とECの情報共有などが可能になり、様々な点でメリットがあるという。
「お客様の購買行動が日々変わっているのだから、組織もそれに合わせてデザインし、商品のよさやストーリーを伝えること、そこに共感・好感を持ってもらうことを最優先に仕事ができるようにしました」(緒方氏)
緒方氏がスプロケットを導入した理由も、上記の接客の言語化と組織改革につながっている。
「ECでも接客には貪欲に取り組んでいます。ECサイト本体ではできることに限界があるので、それを補足するためのツールを、レコメンドエンジンなども含めてあらゆる側面から検討しました。
チームメンバーがデジタルにとても強いわけではなかったため、ツールの選定にあたっては運用負担がないことを重視して探しました。正直、あらゆるデジタルツールは中小企業にやさしくないですよね。大企業のように専任がいれば使いこなせますが、リソースが少ない場合は活用しきれないツールも多いです」(緒方氏)
Web接客をうたうツールはすべて候補として検討した。その中で、なぜスプロケットを選択したのだろうか。
「機能だけでは他の選択肢もありえました。しかし、Sprocket社から、成果を出す運用をしたいならプロに任せてくれ、というメッセージを受け取り、クライアントと寄り添って運用する、改善するという姿勢に共感しました。一般的にコンサルティングが入ると価格が高くなりがちですが、投資しやすい価格でサービスを実現したこともSprocket社の良さです。成果が出る運用をお願いできるから、弊社とつながりのある工芸のパートナー企業にも勧めたいと思っています」(緒方氏)
特に成果が出たシナリオの1つが、商品カテゴリを案内しておすすめの一品を紹介するシナリオで、表示しない場合と比べて、購入完了率はPCで109%、スマートフォンで126%となった。
店舗では、お客様が商品をなんとなく見ていたら、店員がその人の雰囲気や目を留めたものなどにあわせて商品をご案内します。それを擬似的に落とし込んだのがこのシナリオです。具体的には、シナリオでカテゴリを選択すると、そのカテゴリのおすすめの一品が表示され、詳細ページに自然と案内できます。
サイトのカテゴリメニューをクリックした時は、単純に一覧で商品が表示されるので、お客様はそこから自分で探さないといけませんが、シナリオでは店員が話しかけるように、おすすめ商品を提案できます」(緒方氏)
同時に緒方氏は、シナリオに反応しなかった人の気持ちも意識している。
「接心好感という観点から、うっとおしいと思われてしまったらWeb接客の意味がありません。Web接客を受けたお客様の気持ちを何らかの手法で調査したいと考えています。1つ参考になったのが、『接客をした人のほうが再訪頻度が高い』というスプロケットの行動データ分析の結果です。まさに店舗での接客が目指していることですね。ウェブ接客でもその世界が実現できるというのは感動しました。ただ、数字の「裏側にある意味」も考察することが大事だと思っていますので、どこまで行っても出た数字の意味を考え、鵜呑みにはしないという心構えも必要。アンケートなどと組み合わせながら本当にお客様が求めているものなのかどうかは常に精査しなければならないと思います」(緒方氏)
今後やっていきたいシナリオについて緒方氏は次のように語る。
「欲しいものが決まっている人が購入するのは普通です。でも店舗であれば、導線や商品の配置によって、買う予定のものとは全然違うものを購入してもらうことができますし、その時の感動のほうが大きいですよね。例えばノートを買いに来たのに、お香を買って帰るとか。ECサイトの場合は、レコメンドがありますが、関連商品が中心になってしまいますし、探している商品とは関係のない商品のページを表示しても離脱率が上がりそうです。
しかし、Web接客ならシナリオでお客様の心を動かせるかもしれない。感動した会社にこそ、お客様は戻ってくるので、顕在化したニーズだけでなく、潜在ニーズを見据えたサービスを実現したいですね。また商品の紹介ページには、ストーリーを練り込んでいますが、まだまだコンテンツは増やしていけますし、紹介しきれていないエピソードもたくさんあります。全部自信のある商品ですから、自分の名刺入れを探しに来たのに、接客されているうちに、奥さんのプレゼントを買っていたという世界を作りたいです」(緒方氏)
【生活・雑貨・小売事業者必見】ECサイトの顧客体験改善事例3選
物販系業界は店舗休業などを受けオンラインシフトが進んでいます。顧客接点のデジタル化は今後も加速していくものと思われます。ECサイトにおける顧客体験の改善を実現した先行企業の事例から、実践的な成功のノウハウを解説します。
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